飯舘村長の日本改革論

takase222011-11-06

きのう、とてもいい講演を聞いた。
飯舘村菅野典雄村長が、明治大学で行なわれたシンポジウム「いま、フクシマは」で、基調講演をした。題名は「お金の世界から いのちの世界へ」。

菅野さんは、日本は、明治維新終戦に次ぐ第三の大転換を20年前に迫られていたという。しかし、前の二つと違って、地を流すことがなかったため、気づかないでいた。そこで起きたのが今回の原発事故だった。
転換すべきだったのは、「お金の世界」。つまり、大量生産・大量消費・大量廃棄、効率と欲望に振り回され、人としての思いやりを置き去りにした世界だという。
原発に頼らず、平成の大合併にも抗して、自力で、心豊かな「までい」、スローライフの村を作ろうとしていたのが飯舘村だった。「転換」を先取りしようといたわけである。放射能はその村に降り注いだのだった。
http://d.hatena.ne.jp/takase22/20111016
http://d.hatena.ne.jp/takase22/20111019
放射能でずたずたにされた村では、「ゼロから」ではなく「マイナスからゼロにもどす」空しい闘い、全く生産的ではない努力をこれから何十年もやらなければならない。
後の世に、「あの事故があって日本は素晴らしい国になった」と言われ、尊敬される日本にならなければいけない。
「そうでなければ、自分たちの空しい闘いが無駄になる」と菅野さんは締めくくった。
感動した。
最初から最後まで、「村はこんなに苦労している、支援してほしい」で終わっても不思議ではない状況にある菅野さんが、問題を一つの村のことではなく、日本全体の文明のあり方として捉えているのである。
飯舘村の「空しい」(と菅野さんは表現した)闘いが、いわば捨石になって、日本がいい国になってくれとメッセージを発している。
ここまで大きなスケールで事態を把握している人がいたとは!
余談だが、スケールの大きさに驚いた首長には、徳島県上勝町笠松和市町長がいる。http://d.hatena.ne.jp/takase22/20080520
平成の大合併を拒否して独自路線を歩む点も同じ。また、ともに「日本で最も美しい村」連合加盟の自治体だ。http://www.utsukushii-mura.jp/
飯舘村を応援してほしい。
『までいの力』という本が震災後の4月に出版された。
これは飯舘村が目指す村の暮らしのコンセプトを全面展開した写真集だ。村長の前書きには「『お互い様』のまでいの心が、必ずや新しい日本を再生する基礎になると思う」とある。震災の後の出版で支援金を集めるというのもすごい。村は全村避難したが、村として機能しているのだ。
これを買うと収益はすべて村の復興に当てられるので、支援のお気持ちのある方はぜひ購入してください。http://www.saga-d.co.jp/(つづく)