荒れるイランそして金正雲

takase222009-06-14

イランの大統領選挙の結果が出たが、これをめぐって現地は荒れている。
《[テヘラン 14日 ロイター] イラン大統領選でアフマディネジャド大統領の圧勝を当局が発表したことを受け、テヘランでは13日、選挙で不正が行われたとするムサビ元首相の支持者数千人が抗議活動を展開。一部が暴徒化し、警官隊と衝突した。内務省の発表によると、アフマディネジャド大統領が62.6%の得票を獲得。ムサビ元首相の33.7%に倍近い大差をつけた。この発表を受け、ムサビ元首相の支持者らがテヘラン市内各所で抗議活動を展開。バスが火を放たれて燃える様子や警官隊に石を投げる抗議者も見られた。イランで当局に抗議するデモが行われるのは極めて珍しい。》
この結果は私にとっても意外だった。選挙前の雰囲気からは、首都テヘランではムサビが勝つか少なくとも接戦だろうと思ったからだ。東京のイラン大使館にも在日イラン人ら40名が抗議に行ったというが、たしかにおかしいところはいくつもある。
まず、アフマディネジャドとムサビ以外の2候補は、それぞれ相当な影響力を持った人物なのに合わせて4%弱しか入っていない。改革派キャルビ候補は前回の大統領選挙で500万票を取っていたのに対して、今回はわずか33万票。しかも、ムサビ、キャルビ、レザイの各候補がみな自分の村や町で負けているのだが、これは地元意識の強いイランでは考えられないという。そもそも、投票率が85%と前回の63%を大幅に上回ったのに、改革派が惨敗するというのが不自然ともいえる。過去、投票率が高ければ確実に改革派が優勢になっていたからだ。
気になるのは政府が反対派の弾圧に乗り出していること。ハタミ元大統領の弟や、私もインタビューした元外務次官のアミンザデ(ハタミ時代、アメリカとの交渉を担った人物)も逮捕されたとの報がある。これほど緊張した状況はここ数年なかった。イランから目が離せなくなっている。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
一方、「毎日新聞」朝刊が大スクープ。スイス時代の金正雲の素顔に迫り、16歳のころの写真も入手して出している。
《【ベルン澤田克己】北朝鮮金正日(キムジョンイル)総書記(67)の最有力後継候補とみられる三男正雲(ジョンウン)氏(26)が90年代後半から、「パク・ウン」という偽名で、スイスの首都ベルンの公立中学校に留学していたことが分かった。毎日新聞は、正雲氏が級友たちと写った集合写真を入手した。北朝鮮は金総書記の家族に関する情報を国家機密扱いとしており、写真も一切公表していない。
 正雲氏については、「パク・チョル」という偽名でベルン国際学校に留学したという情報が各国で報じられているが、北朝鮮情報に詳しい外交筋は「パク・チョル」について次男正哲(ジョンチョル)氏(28)と断定している。正雲氏の留学中の素顔が明らかになるのは、今回が初めて。正雲氏の写真はこれまで、11歳のころとみられる1枚だけが知られていた。毎日新聞が入手した写真は16歳だった99年6月に撮影された。》
毎日の取材内容と私たちの持っている情報からみて、これはまず間違いなく金正雲の写真だ。テレ朝の時と違って、写真の入手先もはっきりしている。
記事を読む限り、組織戦の取材ではなく、現地の特派員個人による「きれいな」文句なしのスクープである。
「後継者」「後継問題」でメディアは盛り上がっているが、今の体制が存続するのを前提にしていて、私個人としては好ましい用語ではない。しかし、ニュースの需要があるかぎり取材していくのが我々の仕事である。それに、ロイヤルファミリーを追っていくことは、あの体制の病理をうきぼりにする作業でもある。我々もがんばらなくては。