しづやしづ しづのおだまき

takase222008-05-18

写真は苧環(おだまき)。もう花の季節は終わろうとしている。
苧環ファンのサイトを見たら、名前の由来がこう書いてあった。
《「苧(お)」という繊維を、中を空洞にして丸く巻き付けたもの(苧玉(おだま))に花の形が似ているところから。“苧(お)、玉(たま)、巻き(まき)”が「苧環」という漢字で「おだまき」と呼ばれるようになった》
「苧」は麻のことだから、苧環とは、麻糸をクルクル巻いたものだ。
この花、別名は「糸繰草」(いとくりそう)というそうだ。花言葉は「断固として勝つ」だから、試合の前のスポーツ選手にでも贈るといいかも。
苧環といえば、「義経記」。
奥州へ落ちて行く義経吉野山で別れた白拍子静御前(しずかごぜん)は、囚われて鎌倉に送られる。頼朝の求めで静御前は、鶴岡八幡宮で舞を披露させられる。屈辱のなか詠んだ歌に「しずやしず しずのおだまき くりかえし」と苧環が出てくる。
《静や静 賤(しづ)の苧環 繰り返し 昔を今に なすよしもがな》
ここで出てくる「苧環」は糸を巻いたもので、花ではない。古文教室風に解説すると、「よし」は方法とか手段の意味、「もがな」は「〜があればいいのに」という意味。「昔を今になすよしもがな」は、過去を現在にする方法があればよいのに、ということだ。
静よ、静よ、と義経様が可愛がってくれたあの昔に、苧環がくるくる回るように戻っていくことができるといいのに、そんなことを繰り返し思う私です(私訳)。
この歌から、強引に義経ジンギスカン説にもっていったのが、昔読んだ高木彬光の『成吉思汗(ジンギスカン)の秘密』という本だった。だって、この歌の最後を漢字で書けば「成吉思汗(なすよしもがな)」じゃないか!というオチ。
おかげで、この花を見るたび「ジンギスカン」を連想して困っている。