4日土曜の自民党総裁選。
麻生太郎氏が、派閥の議員に、1回目は小林氏と茂木氏に投票させて恥ずかしくない票数にして恩を売り、決選には派閥の票を全部高市氏にのっける戦術をとって、これが功を奏したという。結局、派閥を解散しなかった麻生氏が影響力を強めて得をし、裏金議員と統一協会支援議員が枕を高くして寝られるという、古~い自民党の姿がもろに出た総裁選だった。
それにしても高市氏、演説中に変な作り笑いするのはやめてほしいが、首相になっても治らないだろうな。(個人的感想です)
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日本政府が11年間もの長きにわたって、田中実さん、金田龍光(たつみつ)さんという二人の拉致被害者を見捨てている深刻な問題については、ここで繰り返し指摘してきた。
2014年、「ストックホルム合意」の年、北朝鮮が非公式に二人が平壌で家庭をもって暮らしていることを、日本政府の代表団に複数回伝えた。
北朝鮮はそれまで、田中さんについては「未入境」、つまり北朝鮮に入ってきていないとして拉致を否定してきたのだった。北朝鮮が「いない」と言ってきた人を、一転して実は「生存」していたと認めたのは、2002年9月の日朝首脳会談以来である。それを日本政府は無視し、二人に面会して本人確認することもなく、今もって放置しているのである。これ自体、重大な人権侵害である。
きのう5日(日)、田中さんが卒業した神戸工業高校が合併した前と後の4校総合同窓会が開かれ、約260名の同級生が参集した。そこで、田中さんの同級生だった坂田さんら3名が参加して、田中実さんの拉致問題について語った。知らなかった人も多く、驚かれ、反響があったという。名乗り出る家族がおらず、拉致問題対策本部はじめ政府機関が一切支援を行わないなか、同級生たちはこうした地道な活動を続けている。
この前に、8月30日には、神戸市で「特定失踪者問題調査会」の主催で「田中実さん、金田龍光さんを放っておいて良いのか」という集会(於・神戸市中央区文化センター)が開かれた。しかし、この集会にも政府機関からの参加はなかったという。政府は一貫して田中実さんに対する扱いが冷たい。
二人とも家庭の事情で、幼くして児童養護施設に預けられて育ち、名乗り出る家族はいない。そのこともあって、二人とも知名度は低い。
田中実さんは、政府認定の拉致被害者17人(うち5人は帰国)の一人であり、しかも北朝鮮での結婚相手も拉致被害者だというのに、政府は動こうとしない。日本政府は、他の人たち(「死亡」したと北朝鮮が言う8人など)についての北朝鮮の調査結果が「死亡」のまま変わらないので、二人の生存情報を正式に受け取るのを拒否したというが、もし北朝鮮が、横田めぐみさんや田口八重子さんが「生存」していると伝えてきたら、政府は同じように無視しただろうか。
ここには明らかに差別があると思う。「家族会」は、日本政府による二人の放置策を容認しているが、田中さん、金田さんを、ご自分の被害者家族の身に置き換えて考えていただきたい。無視されていいのか、と。
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拉致問題にながく進展が見られないことで、国民の間には諦めのムードが漂い、問題への関心が低下している。若い人たちは、横田めぐみさんの名前も知らない人が多い。絶望感さえ漂うが、ここであらためて、拉致問題を通して、日本から北朝鮮における人権の問題を世界に発信してきたことを想起したい。
国際人権NGO「ヒューマンライツ・ウォッチ」の日本代表、土井香苗さんは以下のように語っている。
「日本では北朝鮮の人権問題は悲惨なものと認識されていると思いますが、世界ではそれほどでもありませんでした。そのため、国連でも大きくは取り上げられていませんでした。
国連の人権分野の本部があるスイス・ジュネーブのヒューマン・ライツ・ウォッチのディレクターと私とで協力して、当時の日本政府を説得して、日本政府が国連の中でのリーダーになり、国連人権理事会で決議を提案して通し、北朝鮮の人権問題に対する調査委員会を設置しました。
この調査委員会が北朝鮮における人権問題を一年にわたり調査した結果、「人道に対する罪」という国際犯罪に当たる可能性があると認定したため、それによって国連の中での北朝鮮の人権問題の扱いは大きく変わりました。
その結果、国連の安全保障理事会でも、北朝鮮の人権問題が議論されるようになりました。北朝鮮政府に対する国連からの、世界からの人権のプレッシャーというのはすごく高まったと思います。
現在、北朝鮮の人々が置かれている悲惨な状況を考えれば絶対必須の扱いです。そうした重要なことをスイスのディレクターと協力して実現できたということは、この仕事をしている冥利に尽きると思っています」。
https://www.itojuku.co.jp/shiken/shihou/jitsumu/003.html
土井香苗さんはまた、ICCの独立を守ることを強く訴えている。
「土井さんが特に危惧するのは、NGOがリードして設立したICCが存続の危機にあること。米トランプ政権は今年に入り、ICCがイスラエルのネタニヤフ首相に逮捕状を出したことなどを理由に、裁判官らに相次いで米国内の資産凍結や渡航制限などの制裁を科し、その存立を脅かしています。
土井さんはこう訴えます。「ICCは人類がやっと手に入れた奇跡的な財産です。一度失われれば、少なくとも100年単位で再建は難しいでしょう。日本を含む主要メンバー国には、ICCの独立を守るために立ち上がってほしい」」
https://www.asahi.com/withplanet/article/16056329?msockid=03068983f9a7665f084c9c55f8dd6769
拉致問題がきっかけとなって、日本から国際人権法の順守に貢献する動きが出てきたのである。逆にICCと国際法を守る努力は、日本の国益にもかなっている。
(つづく)