なぜ?ウクライナで反政府デモ

こんなにもグルメ番組多いとはガザの人らにとても言へない(東京都 上田国博)

 たしかに・・。先週の朝日歌壇の佳作より。いまガザでは飢餓が本格化しているという。なぶり殺しと言っていい残酷なジェノサイドを止められないのが情けなく、申し訳ない気持ちが募る。

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 ウクライナでは連日、大規模な反政府デモが続いている。発端はゼレンスキー大統領が22日、汚職事件の捜査や起訴を専門に行う2機関の権限を弱める法案に署名し、法律が成立したことだった。

朝日新聞より

 汚職は長年、ウクライナ内政の最大の克服課題で、ゼレンスキー氏も汚職との闘いを公約に大統領に当選している。ここ数年、実際に成果が出ており、「腐敗認識指数世界ランキング」では2021年の122位から24年の105位へと戦時下にもかかわらず改善を見せてはいる。この問題は、ウクライナ欧州連合(EU)加盟にも関わり、国の行方を左右する。国民の関心は非常に高い。今回、汚職撲滅に後ろ向きの姿勢を示した政府と大統領に市民が声を上げたのだ。

 《ウクライナ国営通信などによると、法律は、政府高官の汚職に特化して捜査・訴追する「国家汚職対策局」(NABU)と「特別汚職対策検察」(SAPO)の2機関の権限を制限し、検察当局が捜査に介入できるようにするという内容だ。今回の法成立によって、2機関は大統領が任命する検事総長の監督下に事実上置かれることになり、独立性が大きく損なわれるとの見方が出ている。2機関は23日、「ハイレベルの汚職と闘うという職務を効果的に遂行することを可能にしていた保護措置を 剥奪(はくだつ) された」とする共同声明を出した。

 NABUとSAPOは6月、ゼレンスキー氏に近いとされるオレクシー・チェルニショウ副首相(当時)が、汚職事件の捜査対象となっていると公表。一方、政権側はNABUの捜査官がロシアに機密情報を提供しているなどとして批判し、今月21日には情報機関の保安局(SBU)が関係先を捜索して捜査官を拘束した。SBUによる捜査や今回の法成立については、「チェルニショウ氏を含むゼレンスキー氏の側近を標的にした事件に対する政権の対抗措置だ」(ウクライナの英字ニュースサイト「キーウ・インディペンデント」)とも指摘される。》(読売新聞より)

 この市民の抗議行動について、ノンフィクションライターの加藤直樹さんが、NPO法人日本ウクライナ友好協会(KRAIANY)で活動する在日ウクライナ人の片岡ソフィヤさんと筑波大教授の東野篤子さんのツイートを紹介しつつ、論評していた。

 

■片岡ソフィヤさんのツイート
ウクライナ憲法第5条『ウクライナにおける主権の唯一の権力の源泉は国民である』。以前からお伝えしているように、ウクライナでは政府が国民の意思を反映しない行動を取った瞬間に戦時下であろうと、夜間外出禁止令が出されていようと、人々は声を上げます」(以下に動画あり)

https://t.co/9iHUP5vVkT

■東野篤子さんのツイート
「この動画を見て気づいていただきたいのですが、警察も人々を制圧していないし、血も流れていません。そしてゼレンスキー大統領は、国内の反発が爆発したのを受け、汚職対策組織の独立を回復するための作業を行うと言明しています

 そもそもそんな改革(改悪)をしなければよかったのに…と言うのはその通りですが、政府がおかしなことをすれば、人々がきちんと意思表示するのがウクライナです。

「この戦争は、独裁者ゼレンスキーが嫌がる人々を押さえつけて、無理やり戦わせているのだ」と熱弁していた皆さんは今回の動きを見て、ウクライナ国民はゼレンスキーの奴隷でもなんでもなく、自らの意思でロシアから自国を守っていることに、ようやく気づいたでしょうか。

■加藤コメント
 上記のお二人が言うとおりだろう。ぼくはウクライナの知識人や活動家のツイートをずっと見ているが、今回のデモには、これまで積極的にウクライナの抵抗の正しさを国外に向けて発信していた愛国的なリベラルの多くが参加していたし、軍に入りながら軍の不正を告発していた活動家も、ゼレンスキーの新自由主義を批判する左翼の活動家も参加していた。

 彼らはゼレンスキーやその政策を支持しないことが、ウクライナの抵抗への支持と矛盾しているとは全く思っていないウクライナの代表的詩人セルヒー・ジャダンが、2014年にこう言っている。「ウクライナが滅びないでいるのは、政府があるからこそ、ではなく、政府があるにもかかわらず、なんだ」と。

 翻って日本で、戦時下に、しかも毎夜爆撃がある都市で、1万人の人が集まって政府に抗議するなんてことが想像できるだろうか。「ウクライナ全体主義国家だ」などと主張する人が一時期、けっこういたが、それなら日本はウルトラ全体主義国家に違いない。

 ちなみに今回のデモの中心は20代、30代だそうだ。

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 私も今回の市民の立ち上がりは、ウクライナの人々が、政府や大統領に命令されてロシアと戦っているのではないことをはっきりと示すとともに、この国の民主主義と市民社会の強靭さを見せつけていると思う。尊敬に値する。

 ウクライナの人々は、ロシアとはまったく別の国づくりを目指しているのだ。この戦争、倫理的にも民度の上でもウクライナがロシアに圧勝している。

 すごいぞ!ウクライナ