お米から外国人に気が移り(茨城県岩井廣安)
17日の朝日川柳より
参院選終盤。どの調査を見ても、参政党の支持が急拡大している。この傾向はSNSによって増幅され異様なレベルになっている。この党は「外国人への生活保護支給を停止」と政策に掲げている。
「外国人」問題をいくつもの党がアピールし一気に争点化、自民党も「国民の安心と安全のため」、「違法外国人ゼロ」に向けた取り組みを打ち出した。世の中の雰囲気全体が危うい感じになっている。
アムネスティはじめ多くの人権関連団体が緊急声明を出した。
「日本社会に外国人、外国ルーツの人々を敵視する排外主義が急速に拡大しています。NHK等が先月に実施した調査では、「日本社会では外国人が必要以上に優遇されている」という質問に「強くそう思う」か「どちらかといえばそう思う」と答えた人は64.0%にものぼります」
6割以上の人が、外国人は優遇されていると思っているというのである。先日、40歳台の友人に「外国人が優遇されてるなんてウソだよ」と数字を挙げて説明したら「衝撃です!」と驚いていたから、この誤解(ウソ)はそうとう広まって一部では常識化しているようだ。私はそれを知って「衝撃」だった。
「朝日新聞」が遅まきながらファクトチェックをやっている。神戸県知事選で、SNSの虚偽情報を野放しにして、オールドメディアの選挙戦における不作為が批判されたことを反省してのことだろう。

17日(木)のFACT CHECKのテーマは「外国人の生活保護 日本人より優遇されている?」。答えは「謝り」で、厚生労働省保護課によると「優遇されることはない」。
「日本に住む外国籍の人が受給するには、日本人と同様に、その資産や困窮度が調査される。在留資格によって需給資格がない外国人もいる。」以下、記事によれば―
生活保護法は、生活に困窮するすべての国民(日本人)に受給資格があると定める。日本国籍者が対象となっている。一方、1954年の旧厚生省の局長通知で、日本に住む「生活に困窮する外国人」に対して、保護を準用できるとしている。
台湾や朝鮮半島出身の日本在留者は52年のサンフランシスコ講和条約発効まで日本国籍を持っていた。局長通知は歴史的経緯を踏まえつつ、こうした人々については特に、「生活困窮者の人口に対する割合も著しく高い」などと、保護の必要性に言及していた。
外国籍の場合、支給対象は、日本人との公平性を考慮し、日本で自由に働くことが永住者や日本人の配偶者、日系三世ら定住者、在日コリアンなどの特別永住者、難民の認定を受けた人らに限られる。留学や技能実習、特定技能といった就労に制限のあるビザで滞在する人は対象外だ。
生活保護は世帯単位で受ける。受給対象になるか否かの審査は、世帯主の国籍を問わず、同じ基準で実施される。働けるかや、資産があるかなどについて調査を受ける。資産があれば現金化して生活費に充てなければならない。
外国籍の場合はさらに、受給目的での入国を防ぐという観点から、困窮に至った経緯だけでなく、ビザ取得時に示した身元保証人の情報なども調査の対象になる。
つまり、観光ビザや留学ビザで入国した外国人はそもそも保護の対象になっていないし、対象になる外国籍の人はむしろ日本人より厳しい審査を受けるということである。
実際の需給状況を見てみると(2020年の国勢調査にもとづく)―
日本籍は2.89%(5435万世帯中157万世帯)
外国籍は3.36%(138万世帯中4万6千世帯)が受給している。
国籍別では
韓国・朝鮮2万9千世帯(14.43%)
中国6700世帯(1.62%)
フィリピン5100世帯(5.41%)
高齢世帯の占める割合は全体で56%だが、韓国・朝鮮は68%。これは過去長く外国籍に国民年金加入が認められず低年金者が多くなっているため。
母子世帯が占める割合は全体が4.43%なのに対し、フィリピンは48.41%だった。日本人配偶者と離婚し子どもを抱えて困窮した女性が多いことが影響している。
「いずれも歴史的な理由があり、生活保護の利用継続を認めることは理にかなっている」という。(吉永純・花園大学教授)
外国人、外国ルーツの人への敵視感情が煽られる背景には、外国人がいる風景が当たり前になるなかで、自分の暮しが厳しさを増していく焦燥感もあるのだろう。しかし、メディアは、ヘイトで世の中はけっしてよくならないことを特に若い人に繰り返し伝えていってほしい。