環境活動家グレタ・トゥーンベリを作ったアスペルガー

 緊急事態宣言が出された。
 多くの人が指摘しているように、自粛には必ず応分の補償をセットにすべきなのに、安倍総理は「個別の損失を直接補償するのは現実的ではない」と言い続ける。

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自粛には補償という原則を認めない安倍首相

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共産党が厳しく迫っている

 世帯30万円などの支給は対象世帯が2割を切りそうで、社会の実態をまったく無視している。
 共産党小池晃書記局長の「緊急要望」の会見が、今回の政府の対策がいかにひどいかを的確に指摘している。動画の3分40秒以下を観ていただきたい。
https://www.youtube.com/watch?v=8TN_uAH8XUk&feature=youtu.be

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 きのうブログで批判した「風俗業の関係者を支給対象外とする」措置を、厚労省は今日付で撤回した。https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_10231.html
 このように市民からの批判によって、政府の対応を変えることができるのだから、どんどん声を上げていこうではないか。
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 久しぶりに雑誌『ビッグイシュー』の売り子を見かけたので最新号4月1日号を購入したら、値段が100円上がって450円になっていた。

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 発行するのは「ホームレスの人々の救済ではなく、仕事を提供する」ことを目的にしたNPOビッグイシュー日本。

 『ビッグイシュー』は、ホームレスの人々の自立・自活のために、販売を路上に限り、売り上げ額の半分以上が売り子の取り分になる。
 今年9月で創刊17年。これまで、13億2000万円の収入を、売り子になったホームレスの人々に提供してきた。現在、販売者は102人で、これまで203人が自活できて「卒業」していったという。
 こうした市民活動などの成果もあって、路上生活者の数は、25,296人(03年)から4,555人(19年)へと82%も減ったという。それが販売者と販売数の減少をまねき、ビッグイシューが赤字になるというジレンマを抱えることになった。
 
 そこで、ビッグイシューでは、価格を上げて、「販売者にとって生活保護水準の収入がある“仕事”にもできるようにし、路上生活者だけでなく、生活困窮の方の一時的であっても今すぐ働ける仕事として、販売者をふやす」方向に転換した。赤字を解決しながら、今後さらに貧困問題に取り組んでいくという。
 1号あたり販売者1人の平均売上数は175冊。販売価格450円のうち230円が販売者の取り分で、175冊売ったとして4万250円。月2回刊なので、月に8万500円の収入となる計算で、これは生活保護費の生活費の水準になる。生活困窮の人が、事情に合わせて今すぐ働ける安心な“仕事”にできる。

 活動の意義もすばらしいのだが、雑誌の内容がまたとてもいい。
 《「生きていくのに本当に必要なこと」が取り上げられ、路上(販売者)の目線を持ち、読後「希望をもって」社会に関われる「参加型の雑誌」》というモットーで、普通の雑誌や新聞とは全く違ったユニークな記事のラインナップだ。
 この雑誌の記事をもとに企画書を書いてテレビ局に提案し、実現した番組もある。

 きょう買った最新号の特集は「気候危機」。
 連載コラムの執筆者は、浜矩子(経済)、雨宮処凛枝元なほみ(料理)など。

 特集のなかにグレタ・トゥーンベリさん(17)のスペシャルインタビューがあった。
 去年9月の国連気候行動サミットで、涙を浮かべ、恐ろしい形相で、若い世代はあなた方大人を許さない!とスピーチしたあのスウェーデンの少女である。彼女自身、徹底して温暖化ガスを出さない生活スタイルで、ニューヨークにも飛行機に乗らず、ヨットでやってきたと話題になった。
 
 グレタさんは15歳だった2018年に、温暖化対策を取らない大人へ抗議するために、学校を休んでスウェーデン議会の前に座り込む「学校ストライキ」をたった一人で始めた。
 これが賛同者を増やし、サミット直前の9月20日に世界各地で開かれた「グローバル気候マーチ」には何百万人もの人たちが参加して、温暖化の取り組みの遅れに抗議した。
 たった一人で、一年で世界を変えたのである。ノーベル平和賞候補にもなっている。

 中村哲さんについてもそうだが、私は「すごい人」を見ると、その「人間」(人格+思想)がどうやって形成されたのかに関心がわく。その興味から、インタビュー記事をおもしろく読んだ。
 

 グレタさんはかつて、うつ症状とともに摂食障害があり、「朝食は53分かけてバナナを3分の1個」という状態だった。その原因は、学校でいじめにあっていたことだけでなく、気候危機について授業で知ったことが始まりだったという。

 「私は人とはちょっと違ったものの見方をするんです。授業で餓死寸前のシロクマの恐ろしい写真を見せられても他の生徒たちはすぐに忘れられた。でも私は、この事態を

放っておいたら、何も行動しない自分を到底容認できないと感じたのです」とグレタさんは言う。

 彼女には、アスペルガー症候群高機能自閉症強迫性障害などの病名がついた。しかし、グレタさん自身はそれを病気とは認識していない。
 「自閉症じゃなかったら、こんな運動は起こせなかったと思います。私は世界を白と黒ではっきりと見ますし、妥協が嫌い。アスペルガーは一種の授かりものだと思っています

 言葉を発しない時期や発作が起きることもあったが、家族が二酸化炭素を減らすべく生活習慣を変えていった頃から変化が現れた。肉を食べるのをやめ、太陽光パネルを取り付け、野菜を育て始めた。
 父親は、実は最初は気候変動を食い止めるためではなく、「グレタにハッピーになってのらいたくて、元気なグレタに戻ってほしかったからなのです」という。
 それからグレタさんは、環境問題についてよく話すようになり、新聞4紙をチェックし、環境問題の作文コンテストに応募し、受賞した作文が新聞に掲載されると、北欧の環境活動家が連絡をとってきて、電話会議もした。
 そして「学校ストライキ」のアイディアが出てきたが、最初は他の活動家は誰一人として乗ってこなかったという。

 「両親もあまり賛成してくれませんでした。だから一人でやろうと覚悟を決めたんです。私を止めようとする人の声には耳を貸さず、実行に移しました」。

 動物の絶滅率などを書いたチラシとプラカードをもって、国会の前に1人で2週間毎日座り込んだ。通行人は彼女を見て見ぬふり。
 ようやく数人のジャーナリストが話しかけてきて、そこから24時間もしないうちにスウェーデン中に彼女の行動が広まり、参加する学生も現れて、もう一人の行動ではなくなった。
 「最初にうつの引き金となったのは、気候変動を知ったことでした。でも、うつから抜け出させてくれたのも気候変動だったのです。なぜなら、状況を改善するため自分にもできることがあったから。今はもはや落ち込んでいる時間などなくなりました」。


 グレタさんの超人的な行動力を不思議に思っていたが、やはり常人とは違うところがあったわけだ。気になったことに徹底的にこだわって妥協しない性行は、「病気」があずかっていた。
 それをグレタさんが「アスペルガーは一種の授かりものだ」と言うのがすごい。逆にいうとアスペルガーでなければ、グレタさんがここまでの行動をとることはなかっただろう。

 精神疾患発達障害などと診断される人が増えているように思うが、これはひょっとしたら、地球が人類に文明の転換を迫っているのではないか。
 生存環境が危機になると、生物はより多様な個体を用意してさまざまな環境に適応して生き延びようとするが、それが人類にも起きているのではないか。
 そんなことを考えさせられた。

 さて、ビッグイシューの話に戻ると、
 実は、野宿者は減っているが、路上で見えない若者ホームレスの人が増えているという。社会的格差は広がる一方だ。
 ビッグイシューには、ぜひ雑誌を続けて、これからも、生きるのに困難を抱える人々のための活動をしてもらいたい。

 創刊前、ビッグイシュー日本は100%失敗するといわれたという。日本では、
1.若者の活字離れ、
2.雑誌の路上販売文化がない、
3.優れたフリーペーパーが多く有料では買ってもらえない、
4.ホームレスの人からは買わない、という四重苦が理由だったそうだ。
https://www.bigissue.jp/about/

 実は、私が番組制作会社「ジン・ネット」を立ち上げたときも、「100%失敗する」と言われた。
 私がこの雑誌を応援したくなる理由には、そんな親近感もあるかもしれない。


 とてもお勧めの雑誌なのだが、都市部の大きな駅の前など、限られた場所でしか買えなかった。
 赤字解消のためもあって、路上売りだけではなく、4月1日から、全国で定期購読が可能になったので、読みたい方はぜひどうぞ。https://www.bigissue.jp/buy/subscription/

 

 また、今日私が買った売り子は、外出自粛の影響か、こないだの日曜など日に1冊しか売れなかったと嘆いていた。

    売り子からの購入もよろしく。