人道にもとる日本入管の収容制度3

 NHK国会中継を観ながら、怒りと悲しみがこみ上げる。こんな人たちが私たちの命運を握っているのか・・・と。

 第3次補正予算案は、GoToトラベルの第1次補正予算分もまだ使い切っていないのに、さらに追加で1兆円の巨額を投入するなど、菅首相の「国民の命を守りぬく」とのお題目が聞いてあきれる内容になっている。ほんとうに困っている人々への支援が少なすぎる。

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ドイツでは売り上げの75%を支援、この他に「つなぎ支援金」もあるという。「事業規模に応じた補償を」という当然すぎる声を政府は無視している(28日参院予算委、共産党小池晃議員が出した資料より

 27日は、首相が、「持続化給付金」と「家賃支援給付金」の継続、再支給を拒否。そして「いろんな見方がある。対応策もある。政府には最終的には生活保護という仕組みも。しっかりセーフティネットを作っていくことが大事だ」と答弁した。
 要は、コロナ関連でこれ以上の生活支援はしないよ、困った人は生活保護でしのいでね、ということ。GoToトラベルの予算(国土強靭化も補正予算に入れなくていい)を生活支援に回せば多くの困った人たちを生活保護の前で助けられるのに。

 この日、大西連さん参考人として出席した。生活困窮者を支援するNPO法人「自立生活サポートセンター・もやい」の理事長で、「ジン・ネット」では何度も番組取材でお世話になった方だ。

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 大西さんによると、コロナ禍で生活に困って支援を求めてくる人が急増し、年明けには3倍以上になったという。とくに非正規、派遣、フリー、業務委託の人たちが直撃を受けていて、以前から困っている人だけでなく、今回のコロナ禍のなかで、はじめて生活が苦しくなった人が多くいるとのこと。次の仕事が見つからないという。こういう人たちに政府の施策が届いていないケースが多いという。

 生活保護について、必要な人が利用するのをためらうケースが多いと大西さんは指摘した。最大の障害は、扶養照会だ。親族、親戚に問い合わせがいくことを恐れて、生活保護を利用しない人がたくさんいるのだ
 また、地方では公共交通が不便で、自動車が足になっているのに、自動車を持っていると生活保護が認められないケースが多いのも問題だ。

 28日の参院予算委で、共産党小池晃議員生活保護について、補足率が低い、生活保護を利用すべき人で利用している人は2割にすぎないと指摘。また、3人に1人が「家族に知られなくないから利用しない」現状を変えるために扶養照会をやめるよう要求した。

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扶養義務を曽祖父母(ひいおじいちゃん、ひいおばあちゃん)まで、場合によっては、おじさん、おばさんまで広くかけているのは日本だけ

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生活保護の申請は国民の権利です。生活保護を必要とする可能性はどなたにもあるものですので、ためらわずにご相談ください。(厚労省HP)

 コロナ禍のなか厚労省も「ためらわずにご相談ください」とアピールし、菅首相が「最終的には生活保護がある」というからには決断してくださいよ、と小池議員が迫るも、菅首相はいつものようにまともに答えず。

 この内閣はひどすぎる。

 コロナ禍の最中だから野党も自重しているのだろうが、もう「菅内閣打倒」を打ち出してもいいのではないか。
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 アラブの春」からもう10年だ。

 2010年12月18日に始まったチュニジアジャスミン革命。それがアラブ世界に波及し、民主化運動の嵐が吹き荒れた。

 10年前の1月25日は、エジプトで大規模なデモが始まり、30年にわたって独裁的な支配体制を敷いてきた当時のムバラク政権が崩壊に追い込まれた。

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2021年2月カイロ

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 その後、初めての民主的な選挙で大統領が選ばれたが、2013年に軍による事実上のクーデターで追放され、今は、軍のトップだったシシ氏が大統領を務めている。シシ政権は批判的な活動家を次々に逮捕するなど、強権的な手法で締めつけている。
 治安の安定を最優先に掲げるシシ政権は、国の立て直しを進める一方、インターネットの規制を強化して、言論統制を強めているほか、長期政権を可能にする憲法の改正を強行するなど、再び強権的な体制に逆戻りする事態となっている。(NHKニュースより)

 あれだけの大きな運動の末、もとの強権体制に戻ってしまったという事態を当時デモに酸化した人々はどう受け止めているのか、聞いてみたい。
 多くの人々が命を失い、心身に傷を負った。シリアなど国が崩壊したところもある。
 運動に挫折は避けられないとはいえ、渦中の人々はどう納得して生きていくのだろうか。
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 きのうのつづき。
 日本の入管の収容環境は酷いものだ。

 1日6時間の自由時間と40分の運動時間以外は、6畳の部屋に4~5人での居住が強いられる。国籍や宗教の異なる者たちが1日17時間半、何もやることがないまま、一室に閉じ込められるのだ。就寝時には体がくっつくほどの狭さ。窓には黒いシールが貼られ、外の景色は一切見えない。
 家族との面会もアクリル板越しにわずか30分だけ。病気になって受診のための申請書を書いても、受診できるのは10日以上もたってから。そしてもっともつらいのが、基準も理由もいっさい示されないまま、仮放免申請が不許可になって収容がエンドレスに続くことだという。
 私は牛久入管に収容されている外国人およそ20人に面会して話を聞いたことがある。
 1年、2年の収容期間はざらで、3年を超す人が何人もいて驚いた。多くは日本に来て10年以上たち、妻子もいて日本に生活基盤を持っている。
 彼らは異口同音に、「ここは刑務所よりひどい」と訴えてきた。刑務所なら刑期が決っているが、ここではいつ出られるか分からないというのだ。これでは精神バランスを崩すのも当然だ。私が面会した多くの人が不眠に悩まされ、睡眠薬を飲んでいた。
 牛久入管では、18年4月にインド人男性が首つり自殺をし、19年6月には長崎県大村の入管センターで3年7か月も収容されていた通称サニーさん(40代のナイジェリア人男性)が、仮放免を求めたハンストの末に餓死している。07年からのデータでは、全国の入管収容施設で亡くなった外国人は15人。うち自殺者は5人に上る。
 「私は難民申請をしているだけ。悪いことしてない。日本人の奥さんもいる。だのになぜこんなに長く収容されるの?」とデニズさんは訴えている。
 そう、彼らは犯罪者ではない。それなのに、終わりの見えないまま、刑務所以下の環境に置かれ続けている。日本人として認めたくない、恥ずかしいわが国の現実である。
 難民問題というと、中東やアフリカあたりの自分とは関係ない話かと思いがちだが、あなたのすぐ近くにいるかもしれない「難民認定申請者」やその家族の運命にも思いを寄せていただきたいと思う。

 なお、「牛久入管収容所問題を考える会」(牛久の会)によると、コロナ禍での「3密の解消」で、牛久入管では4月以降多くの仮放免が許可され、去年10月7日現在は以前の3分の1の100名以下の収容になったという。
 「ただし、収容の実態、長期収容の実情はひとつも改善されていません。6年以上の長期収容者もいます。8名内外が仮放免の許可を求めてハンガーストライキをしています。」(牛久の会)
http://www011.upp.so-net.ne.jp/ushikunokai/ 
(以上は、先日公開した「高世仁のニュース・パンフォーカス」から引用した)