「ガザの今に慣れないでください」とマンスールさんは言った

 ガザでイスラエルに殺された、現地のジャーナリスト、ムハンマド(モハマッド)・マンスールさんを一昨日の「サンデーモーニング」で特集していた。紛争地におけるジャーナリズムを体現した彼を悼み、記録としてここに記したい。

 マンスールさんは「朝日新聞」の通信員でもあったが、テレ朝にもニュースを提供していた。24日、イスラエルはハンユニスの自宅をミサイルで攻撃しマンスールさんを妻と息子とともに殺害した

桑山紀彦さんとマンスールさん

少年時代のマンスールさん。激しい怒りと憎しみをたぎらせていたという。

ジャーナリズムによって平和への願いを叶えようとしたマンスールさん

 マンスールさんは、日本のNPO法人「地球のステージ」の一員でもあり、ガザで人道支援活動に取り組んでいた。代表理事で、彼と15年にわたる親交のあった精神科医桑山紀彦さん(62)が彼の人となりを語った。少年時代からイスラエルに激しい怒りをもっていたが、それをジャーナリズム活動に向け、戦争のない世の中にしたいと願い続けたという。

「ガザにいる全てのジャーナリストはイスラエルに把握されています。とても怖い」とマンスールさん(サンデーモーニングより)


 マンスールさんは昨年5月、以下のメッセージを送ってきていたという。

世界の皆さんはガザの今に慣れないでください。
沈黙してはいけないのです。
この戦争犯罪の責任を一緒に考えてください。
これが日本の皆さんに伝えたい私のメッセージです。

 このメッセージを正面から受け止めたい。

マンスールさん

 同日、アルジャジーラのホッサム・シャバットさん(23)も殺された。イスラエルは彼を「過激派」とし、彼の車を狙って空爆したことを明らかにしている。

シャバットさん

 シャバットさんはあらかじめ載せておいたエックス(X·旧ツイッター)掲示物で「皆さんがこの文を読んでいるなら、私がイスラエル占領軍に殺害されたという意味だ」と、また、ガザ地区戦争が勃発した以後、18ヶ月間戦場取材に邁進しガザ地区北部の恐怖を刻々と記録し、彼らが隠そうとした真実を世の中に示そうとした」と記していた。自分が近く殺されることを前提に、「遺書」を書いていたわけである。

 国際NPOジャーナリスト保護委員会」(CPJ)は「ジャーナリストへの攻撃は戦争犯罪だ」としてイスラエルを非難した。


 サンデーモーニングでの浜田敬子さんのコメント。

「このニュースに接したときは本当にショックを受けました。マンスールさんの記事を本当にいつも私は読んでたんですが、一人ひとりに寄り添った、戦禍の中で皆さんがどういう気持ちでいるのか、どういう暮らしをしてるか、本当いつも丁寧に報じてくれていたと思います。

 今回これまでも戦場とか紛争地で犠牲になったジャーナリスト、たくさんいるんですけども、意図的にジャーナリストを狙うっていうのはちょっと私は聞いたことがなくて。なぜかというと、民間人がどれだけ犠牲になってるかということがイスラエルにとっては、どれだけ逆に言えば不都合な事実かということだと思うんですね。それがやっぱり明らかになればなるほど、イスラエルに対する批判が強まり、戦争をやめろという国際世論が高まっている。だからこそジャーナリストが狙い撃ちされたんだというふうに思っています。

 今ジャーナリストの活動って非常に厳しくなっていると思っていてやっぱりメディア企業の経営も厳しくなっている中で紛争地帯ってコストがすごくかかるので、企業ジャーナリストがやっぱり行きにくい中、こういったフリーランスの方たちが非常に現場で活躍して、それで私達は何が起きてるのかってことを知ることができているんですね。

 特に日本のメディアはイラク戦争後、フリーランスの方が戦場に多く行っていてその犠牲もイラク戦争に集中しています。犠牲になった8人中6人がフリーランスの方。それはやっぱりいろいろ機材が軽微になったとか、通信が発達したってのもあるんですけども一つは自己責任論みたいなことも出てきたんですよね。ジャーナリストが現地で犠牲になると行ったやつが悪いんだと、国民に迷惑かけるなみたいな、そういった中でそれでも現地に行ってくれる人たちがいるからこそ私はその何が起きてるかを知ることができる。これを忘れてはいけないと思っています」

 一つだけ付け加えると、ここには日本の大手メディア特有の問題があって、自社社員を危険地に行かせないのでフリーランスが替わりに取材するようになったことと、最近ではフリーランスの危険地取材を載せたり放送したりすることも控えるようになっていることである。

 ジャーナリストが紛争地に行くことを罪悪視する日本の「空気」を変えなくてはならない。

takase.hatenablog.jp

 ジャーナリストだけでなく、医療スタッフをイスラエルが狙い撃ちしているのも深刻な戦争犯罪である。パレスチナ赤新月社によれば、23日南部ラファで救助活動中に攻撃を受け安否不明の救急隊員8人の遺体が見つかったという。また、救助活動にあたっていた人や国連職員の計7人も遺体で見つかったという。IFRC(国際赤十字・赤新月社連盟)は医療従事者が死亡したことに怒りを表明、「すべての当事者が殺戮をやめなければならない」と声明を出した。

 イスラエルはクリニックや学校など暮らしに必須なインフラを破壊するだけでなく、エッセンシャルワーカーといえる人材を次々に殺害している。日本政府も強い抗議を!