モンゴル人写真家、インジナーシ・ボルさんの写真展「MEETING HIGH」(新宿OM SYSTEMギャラリー)はすばらしかった。
日本在住のモンゴル人は「モンゴルには高いビルが建っていますか?」「馬に乗って学校に通うのですか?」などとよく聞かれるという。この写真展では、多くの人がもつモンゴルのイメージがひっくり返されるだろう。モンゴルの今を深く,鋭く写し取っているのだが、同時に日本はじめ世界に共通する時代の先端をもなまなましく示しているように感じられた。つまり、一方で異質なものへのカルチャーショックがありながら、日本の自分たちと同じような悲しみや実存的な悩みに向き合う姿を見せられ、やはり世界は一つながりであることを確認する。

「10年間、私と同じクラスで学んだ同級生。彼女は私に『自分自身のことがわからない」と言った。ウランバートル、2016年」(写真キャプションより) 私がもっとも惹きつけられた一枚。















5日(土)14時からのインジナーシさんのトークイベントでは、モンゴル社会が激変するなかで、政治家や富豪の不正や汚職が蔓延し、貧富の極端な差が大きくなっている現状を批判しながら、生きにくい世の中でこそ「美」を求めていくことが大事だと語った。目指す作品は、「語りかけてくる写真」だそうだ。
いまモンゴルでは家庭崩壊が珍しくなく、インジナーシさんも、幼いころから貧困と継父によるDVで心と体を傷つけられてきた。彼の写真からは人の悲しみによりそう深い愛が伝わってくるが、そんな生い立ちも関係しているのか。すごい写真家が出てきたものだと感心した。
実はインジナーシさんを知ったのは、友人が彼の苦境を見て救援活動を始めたことからだった。
日本のある出版社が彼の写真集を出すことになり、彼は去年2月に来日した。ところが、その後、急に出版が取り止めになり、梯子を外された形になった彼は精神的に落ち込み、滞在費も尽きて大事な愛機ハッセルブラッドをお金に換えるところまで追い詰められた。そこで友人の大西夏奈子さんというモンゴルの専門家が、身銭を切って彼の写真集GRIMPS OF USを自費出版し、写真展を企画・実行したというわけである。
写真集は名のあるデザイナーの手になるもので5500円。これが35歳の彼の最初の写真集になる。日本でトラブルの末に写真集デビューなんて、いいじゃないか。これもご縁である。
写真展は4月14日(月)まで。12日(土)にもインジナーシさんのトークがある。
この写真展と写真集、ほんとうにお勧めです。写真集をご希望の方は以下へ。
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