昨日はJCJ(日本ジャーナリスト会議)の贈賞式があった。今年の大賞は安田浩一さんの『地震と虐殺1923-2024』で、関東大震災の朝鮮人殺戮と百年後の現在が地続きであることを著している。他の受賞作品も素晴らしい力作ぞろいで、受賞者の話を聴いてとても刺激を受け、元気づけられた。後日、本ブログで紹介しよう。
今年はJCJ特別賞として「国境なき医師団」の緊急対応コーディネーター、萩原健さんの『ガザ、戦下の人道医療援助』が選ばれた。ジェノサイド下のガザで活動した6週間の記録で、萩原さんは「ジャーナリストでもない私が、これを書いたのは、危機感ゆえだ」という。


懇親会で隣になって親しく話を聴いた。
ほとんどの国際NGOが撤退を余儀なくされるなか、国境なき医師団は、今も3チームをガザに派遣している。彼らの活動現場であるナセル病院は先日ダブルタップ爆撃された。
1週間前はMSF(国境なき医師団)のマークを付けた給水車が攻撃されたている。
https://www.msf.or.jp/news/press/detail/pse20250919nt.html
2023年11月18日にはMSFの車2台が故意に銃撃され、MSFスタッフの家族1人が死亡、もう1人が負傷。その後2023年11月21日、ガザ北部アウダ病院で活動していたmsfの医師2人を含むの3人の医師が亡くなっている。
これについて、国教なき医師団は以下の声明を出している。
「MSFは、アル・アウダ病院が機能しているということ、そしてそこにスタッフがいることを、双方の紛争当事者に定期的に伝えていた。また、病院の位置を示すGPS座標も前日にイスラエル当局に共有していた。
私たちは、この攻撃を最も強い言葉で非難し、医療施設、医療スタッフ、患者の尊重と保護を改めて求める。
21日現時点で、200人以上の患者がまだアル・アウダ病院におり、必要な治療を受けることができていない。これらの患者は、緊急かつ安全に、まだ機能している他の病院に避難させなければならない。しかし10月以降、ガザのすべての病院は、人員の不足、度重なる攻撃、非常に多い患者数のために、その受け入れ能力をはるかに超えている。」
https://www.msf.or.jp/news/detail/headline/pse20231122nt.html
当然のことだが、医療への攻撃は国際人道法違反である。
むかし、ベトナム戦争の時代は医療や人道援助、取材に携わる人は攻撃されないことが了解されていた。だから赤十字のマークやPRESSの旗を立てた車は安全に通行できた。今はガザでもウクライナでも医療スタッフやPRESSが攻撃目標になる時代だ。法の支配が成り立たない世界である。
萩原さんたちは、まさに命懸けの支援活動を行なっている。
10年前に「情熱大陸」で看護師、大滝潤子さんを取材し放送したこともあり、「国境なき医師団」とはご縁があるが、今後も皆さんの無事を祈りながら活動に注目していきたい。
イスラエル軍は16日、ガザの最大都市ガザ市への地上侵攻を開始。同じ日、国連人権理事会の独立調査委員会は、イスラエルがガザでジェノサイドを行ったと認定した。これは国連の公式見解ではないとはいえ、人権理事会が設置した専門組織の結論には重みがある。だが、イスラエル政府は「虚偽の文書」だと反発して、人権委員会の廃止を求めた。
ジェノサイドは特定の民族や人種のすべて、または一部を破壊する意図を持った行為で、ユダヤ人が大量虐殺されたホロコーストを繰り返さないため、1948年に採択された条約で定義された。
調査委員会は、おととし10月以降、今年7月までの人権状況について報告書を発表し、ジェノサイド条約に基づいて法的に評価した結果、大型爆弾の使用、6万人以上という前例のない数のパレスチナ人の殺害や、犠牲者の半数近くが女性や子どもである事実、強制的な移住、人道支援物資の搬入を遮断して飢餓を引き起こしたことなどを理由に、イスラエル側による行為はジェノサイド、集団殺害にあたると結論づけた。ネタニヤフ首相らがジェノサイドを扇動したとしている。当然、国際法で裁くべきなのだが、残念ながら、それをアメリカが妨害に出て、判決が出ても有効に執行できない状況にある。
https://www.un.org/unispal/wp-content/uploads/2025/09/a-hrc-60-crp-3.pdf

さて、トランプ政権によるICCの裁判官や検察官への制裁である。制裁を受けると具体的にどんな状態になるのか。
制裁を受けた判事らは、米国内に保有するすべての資産および権利を凍結され、家族とともに米国への入国を禁止された。それだけではない。米国の組織・個人が制裁対象者と取引をすると米国内の法律で処罰されるほか、米国以外の国の組織や個人も、制裁対象者との取引を二次制裁で処罰される可能性が出てくる。制裁対象者は銀行口座を凍結され、居住地オランダの一部の金融機関のユーロ口座しか使えなくなった。国際送金もできない。
制裁対象になったカーン検察官は、マイクロソフトからサービス提供を停止されたという。さらに、ICCのために証拠や証言を集めるなど協力してきた人権団体の活動も困難になり、協力を停止したところも出ているもようだ。
帰国時の逮捕を恐れてICCを退職した職員、ICCでの仕事を続けられるようにトランプ政権を起訴して業務を継続している米国出身の検察局職員もいる。
イスラエルとハマスによる戦争犯罪疑惑の調査を率いた主任第一審弁護人のアンドリュー・ケイリー弁護士も緊張と制裁への恐れから体調を崩し、今年、職を離れた。オランダのセキュリティサービスから「非常に危険な状態」にあると警告を受けたほか、脅迫を受けていたという。不安から体調を崩す職員は少なくないという。
赤根智子ICC所長は、取材した駒林歩美氏に、現在考えられる最悪のケースは「ICCそのものが制裁対象になる場合」だと語っている。そして、それが現実になろうとしているのだ。
(以上、駒林歩美「法の支配を田絵が守るのか」世界9月号より引用)
(つづく)