反撃するウクライナ軍にBBCが従軍取材した映像が、生々しい戦場の様子を伝えている。ロシア軍が制空権を握るなか、ウクライナ軍は多大な犠牲を出しつつ前進する。
49歳の司令官はちょっと小さいヘルメットをかぶっている。それは同じ戦場でつい最近戦死した息子の遺品で、それを手に取る司令官は声を詰まらせる。「息子は英雄になった」・・・最前線のリアルを伝える好リポート。
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きのう20日、ジャーナリストの安田純平さんの裁判を傍聴するため、東京地裁に向かった。
安田さんは2015年、シリアで武装勢力に拘束され、18年、3年4カ月の拘束ののちに解放されてトルコ経由で帰国した。その後、旅券の申請をしたところ、国から発給拒否処分を受ける。安田さんはその処分の取り消しと旅券の発給を求めて訴訟を起こしている。
きのうは安田さんの当事者尋問が行われた。法廷にはプロジェクターとスクリーンが設置され、2012年の安田さんが撮影した素材で制作されたTBS「報道特集」のシリア特集が流された。裁判傍聴は数えきれないが、テレビ番組を法廷内で観るのは初めての体験だった。
外務省は「トルコ共和国から5年間の入国禁止措置を受けている」という理由でパスポートの発給を拒否したのだが、そんなことはまずありえず、外務省の「ウソ」だと私は思う。原告の安田さん側は、日本側に入国禁止措置を伝えたとされるトルコ大使館の担当官と日本の外務省の担当官の証人尋問を要求している。
この裁判は、移動の自由そして報道の自由の根幹をめぐる争いであり、負けるわけにはいかない。そもそも旅券発給拒否は、紛争地に行ったりする「とがった」ジャーナリストを見せしめにしてジャーナリズムを恫喝する意図で行われたと思われる。その背景にあるのは、安田さんなど紛争地でトラブルに遭うジャーナリストを「紛争地域に行った方が悪く、社会に『迷惑』をかけている」と見る多くの日本人の感覚だ。
この裁判は、こうした風潮への挑戦でもある。詳しくは以下をご覧ください。
安田さんへの旅券発給拒否は、同じフリージャーナリストの常岡浩介さんに旅券返納命令を出した措置と同様、権力が、立場の弱いフリーランスを狙った攻撃である。同じ危険地に行ったテレビや大新聞の社員記者に政府はけっしてこういう「いやがらせ」はやらない。
メディア企業で働くジャーナリストたちが、これを報道に携わるすべての者にかかわる重大な問題だとして、裁判を全面支援すべきなのだが、その動きはみられない。ここにもう一つの日本のメディアの宿痾がある。
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6月11日(日)、有楽町のI’M A SHOW(アイマショウ)で『マイ・ラスト・ソング ~久世さんが残してくれた歌~』を観た。
『時間ですよ』『寺内貫太郎一家』『ムー』など数々の名作ドラマを演出した久世光彦氏が、人生の最期の刻に聞きたい唄をテーマに14年間書き続けたエッセイ「マイ・ラスト・ソング」を小泉今日子の朗読、浜田真理子のピアノと唄で受け継ぎ伝える公演だ。https://spice.eplus.jp/articles/315703
多くの歌が流れたが、なかでも印象深かったのは「朧月夜(おぼろづきよ)」。
まず、小泉今日子が久世氏の文章を朗読する。
あの戦争のころ、もしこの国に《文部省唱歌》がなかったら、いまこの国はこうしてあったかどうかとさえ、私は思う。あの時代の大人や子供の、心のバランスを辛うじて保たせてくれたのは、明治のころからみんなで歌いつづけてきた、あの唱歌たちだったのではなかろうか。誰もそんなことを言っているのを聞いたことはないが、あのころ、お腹を空かしながら《文部省唱歌》を歌って、私たちは何とか戦争を越え、戦後をも越えてきたのだ。《文部省唱歌》の功績は、どの時代よりも、あの時代にあった。
終戦直後、釜山から対馬海峡を渡って帰る、すし詰めの引揚船の中で、食物のことで何人かの男たちの間で喧嘩が起こった。船内に灯りもない、暗い夜だった。争っている男たち自身、情けない、やりきれない思いだったが、それぞれ後へは引けなかった。刃物まで持ち出して、いまにも血を見るというとき、両眼を汚れた布で覆ったお婆ちゃんが、呟くように歌い出した。「朧月夜」だった。周りの何人かがそれに合わせ、やがて歌声は船内の隅々にまで広がっていった。争っていた男たちが、最初に泣き出した。みんな泣いていた。二番が終ってまた一番に戻り、「朧月夜」はエンドレスにつづいた。よくできた話のようだが、ほんとうにあった話である。
菜の花畠に 入り日薄れ
見わたす山の端 霞ふかし
春風そよふく 空を見れば
夕月かかりて におい淡し・・
朗読された文章の光景を思い浮かべながら、浜田真理子の澄んだ歌声を聴く。自然と涙を誘われる。
歌の力ってすごいなと思う。それもみなが親しみ誰もが歌える唱歌だったからだ。唱歌がどんな意味を持つのか、あらためて考えさせられる。
(つづく)