冬至だ。「一陽来復」とも言う。この日を境に太陽が復活する、一年の大きな節目だ。
初候「乃東生」(なつかれくさ、しょうず)が12月21日から25日まで。ウツボ草(夏に枯れる)の芽が出るころ。
次候「麋角解」(さわしかのつの、おつる)は12月26日から30日まで。ヘラジカの角が生え替わる頃。
末候「雪下出麦」(ゆきわたりて、むぎのびる)が12月31日から1月4日まで。雪の下で麦が芽をだす頃。
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きのうの日曜、20日の夜、「危険地報道を考える会」のZOOMによる勉強会があった。
安田純平さんの「旅券発給拒否」がテーマで、ジャーナリストやNGO関係者などが参加した。国からパスポートの発給を拒否され、海外へ渡航できなくなった安田純平さんが、発給拒否処分が違憲・違法であるとして、国を相手にパスポートの発給等を求めて提訴し、裁判になっている。
裁判では、国が安田さんが(シリア)に密入国している事実をあげ、国際的な法秩序を乱す現実的なおそれが否定できなかったと主張して、密入国すること自体がさも非難されるべきことのように言い立てているけれど、シリア反政府勢力を取材する日本人を含む外国人ジャーナリストはみな密出入国するしかなかったのだ。
安田さん側は「原告(安田さん)が密入国するのは紛争地帯を取材するためであり、これは、原告が私人として享受する海外渡航の自由だけでなく、ジャーナリストとしての取材の自由、及び、民主主義社会に不可欠な知る権利にも資するものであり、被告(国)が問題視する原告の活動は、憲法上重要な意義を有するものである」と反論しているが、当然である。
詳しくは「CALL4」のサイトを見てほしい。
安田さんの旅券の発給拒否は、常岡浩介さんの旅券を返納命令で取り上げたこと(常岡さんが提訴して裁判中)とあわせ、政府が気に入らないジャーナリストを(とくにフリーのうるさい奴らを)排除しようということだと私は理解している。研究者の「レッド・パージ」である日本学術会議の任命拒否と同じ質の問題だろう。
国の言い分が通れば、日本のジャーナリストは紛争地取材が原則禁じられるということになりかねず、負けるわけにはいかない裁判である。ぜひ注目されたい。
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日本の新型コロナ感染者は20万人を突破。コロナ感染は他人事ではなくなった。
私の母が数年前から通っている西東京市の「田無病院」は、地域の急性期医療の中核だが、ここでクラスターが発生。
病院のHPによれば42人の陽性が確認されているという。
「12月1日(火)に当院職員(病棟看護師)が新型コロナウイルス感染症PCR検査で陽性であることが判明した件について、その後の経過をお知らせいたします。なお、併設の田無病院介護医療院及び介護老人保健施設エバグリーン田無でも陽性者が発生しておりますので併せてお知らせいたします。
本日12月16日(水)時点で合計42名の陽性が確認されております。内訳は、患者さま6名、入所者さま15名、デイケア利用者さま1名、職員20名であります。デイケア利用者さま及び職員1名につきましては、他機関でのPCR検査の結果報告を受けてのものであります」
先週の15日、父方の叔父が別の病院で亡くなった。
ながく建設業に携わっていた叔父は、いま裁判でニュースになっているアスベストによる中皮腫で入退院を繰り返していたが、コロナ禍で家族の面会もままならなかった。寂しがりの叔父は、そのためか、精神状態が不安定になり体調が悪化したという。コロナ蔓延が命を縮めたと思われる。
コロナの影響が、私の周辺にもひたひたと迫ってくる感じだ。
連日コロナの話題を書きたいわけではないが、書かざるをえない。
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朝日新聞の記事(20日付)より。
日本とは季節が反対のオーストラリアでは、冬を乗り切り、なんとか封じ込めを実現した。11月以降は感染者ゼロの日も珍しくないという。
封じ込めの手法は参考になる。
《感染者が行った店や娯楽施設、学校などの実名を公表し、当日の来訪者の連絡先を入手。感染者が乗っていた電車やバスの路線や日時、車両番号も公表し、同じ時間帯に居合わせた人には検査と自主隔離を求める。7月以降、店舗や施設に利用者の連絡先の記録を義務づける徹底ぶりだ》
ここまでプライバシーに踏み込んで自由を制限する措置を採っても、政府への支持は高いという。
《首相や州首相らが頻繁に記者会見を開き、首席医務官が同席する。専門家の助言を受けて政治家が決断するスタイルが確立されている》
政治家の説明の透明性と科学を根拠にした対策が国民の信頼を呼んでいるようだ。
台湾がやはりすごい。
人口2300万人で感染者はわずか759人。(12月18日現在)アジア開発銀行によると、今年の台湾の経済成長率は1.7%とプラス成長を維持する見込みだ。
まず、初期段階でウイルスを入れなかったことが抑え込み成功の要因だ。
素早い対応の背景に、2003年のSARSの経験があったという。中国の圧力でWHOの情報も得られず、対応が後手に回り37人の死者を出した。この反省から、04年に、緊急時に行政部門を横断する対策本部を設置できるよう法改正がなされた。
民間と行政の連携も注目される。
1月21日に台湾で初の感染が出ると、マスクの品不足で値段も高騰した。
《混乱の中で民間が動き、当局もそれを頼った。台南市のプログラマー呉展瑋さん(35)は2月1日、マスクを入手できない人が不満を訴えるネットの投稿を見て、徹夜でグーグルマップを使ったマスク供給地図を作った。利用者が店で見たマスクの在庫を入力すれば、サイト閲覧者は購入可能な店を見つけられる仕組みだ。翌日、無料公開すると、閲覧数は半日で54万に達した。
この取り組みを知った唐鳳(オードリー・タン)デジタル担当相は当局のマスク供給計画を公開し、それを生かして地図を改良するようネット上で依頼。プログラマーたちが大挙して応じ、数日後には無料で使える地図が30種類以上ネット上に現れた》
行政が市民の信頼を得ているからこその協力関係だ。
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日本でも自治体レベルで、すぐれた取り組みが現れてきた。例えば先日紹介した墨田区。
以下は、区の保健所長のツイッター。
施設の一斉・定期的な検査事業開始!
— 西塚 至 (@Stove_san) 2020年12月16日
12月1日、墨田区は、高齢者施設と障害者施設の職員と入所者全員を対象に、一斉・定期的な検査を開始しました。
対象は230施設の5000人です。
1人2万円まで。
区内に民間検査会社(6000円)を誘致し、1人3回まで定期的なPCR検査を可能に。 https://t.co/YuSiVEZrZg
これは半年以上前、少し感染がゆるんだときに政府が打ち出すべき施策だった。
すでに医療は逼迫している。医療・介護施設、障害者施設などはクラスターを防ぐためにすぐにでも無料で一斉検査をするよう政府に要望したい。