強制送還に怯えるシリア難民

 6月20日は「世界難民の日

 UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)は、戦争や迫害などが理由で住む場所を失った難民や国内避難民が過去最多になったと発表した。ウクライナでの戦争や気候変動の影響もともない、ふるさとを追われた人が2022年の1年間で1,910万人増加。今年になってもスーダンで紛争が勃発するなど増加傾向は収まらず、難民や国内避難民の数が過去最多の1億1,000万人に達したという。

 レバノンのシリア難民の苦境NHKが報じていた。

 シリアから国外にでた難民は654万人、うち150万人がレバノンにいる。レバノンは人口およそ500万で、難民比率が世界でもっとも高い国だ。そこでいまシリア難民が「強制送還」に怯えているという。

 マハセンさんは、7年前、子ども5人とともにシリアからレバノンに脱出してきた。シリアに残った夫は空爆で死亡した。

 今年4月、一緒に暮らしていた長男のムハンマドさん(29)が突然姿を消した。検問所で滞在許可を持っていないとして拘束され、シリアに送還されたらしく、まったく消息が分からない。今年4月と5月だけで約1500人がレバノンからシリアに強制送還されたとみられる。

国際報道20日OAより

 検問所があるので、「他の子どもを学校に行かせるのも怖い」とマハセンさん。先日、長期滞在の申請をしたが、理由をつげられないまま拒否された。彼女自身、強制送還に怯える日々だ。

彼女の70代の父親が突然行方不明になった。しばらくしてシリアから1本の電話があり、父親はシリアの首都に連れて行かれ、取り調べを受けたと聞いた。シリアは「もう安全だ」という人もいるが、それは紙の上だけのことだという。

 この変化をもたらした一つの要因は、軍事的に勝利しているアサド政権が周辺国との関係を回復してきたこと。また国家財政が破綻状態のレバノンでは、シリア難民よりレバノン国民を支援すべきとの世論が強くなっていることがある。シリア難民が邪魔者扱いされる風潮を背景に、政府がひそかに強制送還を進めているというのだ。

シリアは12年ぶりにアラブ連盟への参加を認められた。演説するアサド大統領。

UNHCRは強制送還に憂慮する(国際報道20日OAより)

 「リスクのある母国に強制的に戻されてはならない」。この原則が重い現実の前に揺れ動いている。
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 ジャーナリストの青木理さんが、第211回通常国会をこう評した。

 「防衛費倍増で敵攻撃能力の保有は、戦後日本の防衛政策を大転換する、その財源を裏付ける法律ができたんだけれど、かなり甘い見積でこんなので果たしてできるのかという問題もあるし。それ以外にもマイナ保険証を統合するんだと、うまくいっている保険証を来年の秋までになくすんだと言っていて。あるいは少子化対策も、やるんだといってるけど、財源は先送りだと。

 一方で、LGBTの差別禁止を定めなかったどころか、「多数者の安心を前提とする」という文章が入ってしまって、あたかも性的少数者が多数者に不安を与えるような存在だと、むしろ差別増進法じゃないかという批判も出てきている。

 それから福島の状況まだ何も変わっていない、むしろいつになったら収拾できるかわからないのに完全に原発回帰の法案ができた。難民をほとんど入れてないのに、難民を追い返すかのような入管法も通ってしまった。

 これは戦後最悪の国会だったんじゃないか。」(「サンデーモーニング」(18日OA)でのコメント)

 まったくそのとおりだと思う。岸田首相は戦争できる国づくりを進め、「安倍政権以上に安部的」なるものが私たちの目前で展開していると青木さんは言う。

 一つつけたすと、戦後初めて、予算に防衛費に充てるための建設国債の発行が盛り込まれた。これは戦後、先の戦争の教訓として借金で防衛費を賄わないという不文律を破るものだ。数を頼んで政治が「暴走」している。

 ところで青木理さんは、統一協会勝共連合自民党の黒い癒着を明らかにする新著『カルト権力 公安、軍事、宗教侵食の果てに』を出した。青木さんによれば、この癒着の歴史には大きな二つの謎があるという。

 一つは、霊感商法や集団結婚式など活動の反社会性が顕著な教団が、なぜ今日まで活動を続けられたか

 青木さんは90年代、通信社で公安警察担当で、94年の年末に公安が統一協会を調べていることをつかんだ。しかし、しばらくすると公安警察の動きはピタリと止まり、公安幹部は「政治の意向だ」と明かしたという。

 もしあの時に捜査のメスが入っていれば、教団の反社会的活動には歯止めがかかり、被害が抑えられ、結果、元首相銃撃事件も回避できたかもしれない。その後、社会やマスコミの関心も薄れて「空白の30年」を迎えるが、これ以上の「空白」は許されないと青木さんは言う。

 もう一つの謎は、韓国の信仰教団がなぜあっさりと岸信介元首相や右翼の大物の懐に入り込むことができたのか

 背景には、「冷戦」の中で当時軍事独裁だった韓国と日本に「反共」の砦を築こうとしたアメリカやその諜報機関の意向もあったのではないか。

 酒井啓子千葉大教授は9.11とアルカイダの関係について、「冷戦という大きな戦いのなかで、西側諸国は反共のために『宗教』を利用してきた」「その結果、動員されたイスラム義勇兵の一部が国際テロ組織アルカイダとなった」「ご都合主義的な政策」で「強烈なしっぺ返し」をくらった。そして「反共」を政治利用してきたツケが回っている点では日本も同じではないかと指摘する。(「対テロ戦争負の遺産 過去を総括しない日本」(毎日新聞22年10月13日)

 統一協会や「日本会議」などのカルト的宗教右派に侵食された政権をありようを青木さんは「カルト権力」と呼んでいる。

 「『反共』を金科玉条に社会の進歩や民主主義に逆行する活動、『戦争狂』のような防衛力増強のみをめざす傾向には、きびしい監視が必要です」(青木さん)(以上は『赤旗日曜版』5月21日号から引用)

赤旗日曜版」5月21日号

 戦後最悪の国会を出現させたこの流れを断ち切らなければならない。