アフガンの麻薬とタリバン②

 大寒」に合わせたように、大寒波がやってくるとの天気予報。

 初候「款冬華(ふきのなは、さく)」は20日から、次候「水沢腹堅(さわみず、「こおりつめる」)が25日から、末候「雞始乳(にわとり、はじめてとやにつく)」は30日から。
 今が寒さのピーク。これを過ぎれば春が見えてくる。
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 サンデーモーニング』のコメンテーター渡部カンコロンゴ清花さんという若い女性がいる。難民を人材とみて就職はじめ社会的な活動と結びつけるNGOの代表だそうだが、彼女のコメントは、全体を俯瞰したとても良識的なもので、感心させられる。

15日のサンモニに出演した渡部さん。

 15日のサンモニで、岸田首相の訪米と日本の安全保障政策の大転換について以下のようにコメントしていた。

《プロセスと内容、両方とも、このままではまずいと思う。

 まず、私たち国民の代表を国会に送っているはずなのに、そこで論議されずに進んでいるということ。

 次に内容だが、「反撃能力」という言葉だけを聞くと、何となく、いまの世界情勢の不安定化のなかで必要なのかな、と思ってしまうかもしれない。ただ、その中身を見ていくと、日本と密接な関係にある国が攻撃されたら、日本もその(攻撃してきた)国に対して攻撃できることになる。自分がやられたら守らなければ、やり返さなければ、というだけではない。中国の軍事化ももちろん(問題)なのだが、アメリカが第二次世界大戦のあと軍事介入したり戦争にかかわったりしたのが、数えたら15(回)を超えていた。安保法制と今回の反撃能力がセットになったときには、むしろ日本が巻き込まれる可能性があるんじゃないかと思う。》

 はい、文句なしの正論。

 安保法制では集団的自衛権、つまり「自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず、実力をもって阻止する権利」(政府解釈)を認めるので、アメリカに対する攻撃への「反撃」を日本もできるわけだ。もし、いま9.11後にアメリカが行ったアフガニスタン侵攻があるとすれば、日本も現地で「反撃」することになりかねない。敵基地をミサイルで叩く場合も、当然米軍の指揮のもとに決行されるはずだ。

 これのどこが「専守防衛」なんだ!?

 最近、姜尚中氏のコメントが支離滅裂で辟易させられるなか、彼女のメリハリのきいたコメントに拍手したい。
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 タリバンと麻薬のつづき。

 アフガニスタンの農民は何世代にもわたってケシを栽培してきた。乾燥地に向いているうえ、「果物、野菜、穀物とは異なり、樹脂は腐敗したり、害虫を引き寄せたりしない。保管も簡単で、長距離輸送もできる」。だからケシは「理想的な換金作物」なのだ。

 

橋の下で麻薬を吸う常習者(筆者撮影)

 では、歴史的にはタリバンと麻薬の関係はどうなのか。

 アフガニスタン・ペーパーズ』(クレイグ・ウィットロック著)はこう指摘する。

《皮肉なことに、アフガニスタンの麻薬産業を縮小させることができた唯一の力がターリバーンである。

 2000年7月、ターリバーンが国の大部分を支配したとき、人前に出ない隻眼の指導者、ムッラー・ムハンマド・ウマルは、アヘンはイスラム的ではないと宣言し、ケシの栽培を禁止した。全世界が驚いたことに、禁止措置はうまくいった。ターリバーンに逆らうことを恐れたアフガニスタンの農民は、すぐにケシの植え付けをやめた。国連の推定によると、ケシの栽培量は2000年から2001年にかけて、90パーセント急落した。》

 ところが・・

《2001年にアメリカが侵攻し、ターリバーンを権力の座から引きずりおろすとすぐに、アフガニスタンの農民はふたたびケシの種をまきはじめた。》

 ふたたびケシの栽培量が増え、アメリカ国内でアフガニスタンの麻薬が政治問題化する。そこで米軍は現地でケシの取り締まりという第二の戦線を開いた。しかし、まったく効果は上がらなかった。

アフガニスタンに関する学術専門家で元国連顧問のバーネット・ルービンは、ブッシュ政権はターリバーン復活の背後にある要因を誤解している、と述べた。「われわれは、どういうわけか、麻薬のせいだという説明を思いついた。ターリバーンは麻薬から利益を得ており、だから麻薬がターリバーン復活の原因だと」とルービンは(略)インタビューーで語った。
 その一方で、ターリバーン以外の人々が麻薬取引によって金持ちになっていった。ワシントンの同盟者と思われている知事、軍指導者、その他のアフガニスタンの高官は、アヘンの利益に夢中になり、自分の影響下にある地域で活動する農民や密売人から分け前を集めた。》

 カルザイ政権のもとで麻薬生産はおそろしいほどに増加していった。

《その年(2006年)、アフガニスタンはアヘンの記録的な収穫を達成し、国連の推定によれば、耕作中のエーカー数は59パーセント増加した。翌年にはさらに豊かになり、耕作面積はさらに16パーセント増えた。》(以上P154-161)

 タリバン政権下で大きく減少したアヘン生産は、アメリカが後ろ盾のカルザイ政権で激増していたのだった。

 いま一昨年20年ぶりに復権したタリバンのもとで、麻薬の状況はどうなっているのか。

 前回、私が首都カブールで多くの麻薬常習者を見たと書いたが、麻薬の蔓延をタリバンの責任に帰してよいのか。

 12月のTBS「報道特集」はアフガニスタンの麻薬問題を取り上げ、麻薬がタリバンの資金源であることを示唆していたが・・・。
(つづく)