ウクライナ戦争―大国には見えない世界

 24日、ガザでの4日間の戦闘休止が始まり、ハマスに拘束されていた230人以上の人質のうち、イスラエル人13人、外国人11人の計24人が解放された。

 一方、合意を仲介したカタールの外務省は、イスラエルが拘束していたパレスチナ人の子どもや女性計39人が釈放されたと発表した。人質解放は4日間、段階的に行う。対象者はハマスが拘束する人質約240人のうち計50人と、イスラエルが収監するパレスチナ人受刑者のうち計150人。その後も、ハマス側がさらに10人解放するごとに、戦闘休止を1日延長することができるという。

 イスラエルが拘束していたパレスチナ人」って?

 実は、イスラエルは数千人のパレスチナ人を収監しているつまりイスラエルはこれまでたくさんのパレスチナ人の「人質」をとっていたとも言えるのだハマスの襲撃を短期的な視点だけでとらえずに、俯瞰した眼で、パレスチナ問題の「構造」をしっかり把握したい。

イスラエルから解放されたパレスチナ人の車を取り囲む人びと

 

パレスチナ自治区ヨルダン川西岸地区ベツレヘムにある難民キャンプで2023年11月24日、イスラエルから解放されて親類や友人らと抱擁するパレスチナ人女性=AFP時事

解放されたパレスチナ人の一人(NHKニュース)

 CNNによれば、パレスチナ自治区ガザ地区の保健省などは25日までに、イスラエル軍の攻撃による同地区での死者数は軍事衝突が始まった先月7日以降、計1万4854人に達したと報告した。23日時点での人数で、子ども5850人が含まれる。

 同保健省によると、20日以降のデータの更新は、イスラエルの大規模空爆や地上作戦のため深刻な通信障害が起きて正確な情報が得られず、不可能となっている。

 アメリカ政府は同保健省の死者数の真偽に疑問を呈したが、国連のグリフィス事務次長(人道問題担当)は22日、国連はガザ地区の保健省がまとめるデータの利用を支持する考えを表明。CNNの取材に、関連データの正確さを担保するため長年精密な方法を駆使していると説明。「思慮もなくこれらのデータを使っているわけではない」と述べた。

 この膨大な死者数に、あらためてイスラエルによる虐殺のものすごさを思う。この数字のうしろに一人ひとりの生身の人間がいたことを忘れないようにしたい。

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 きょう11月25日は、ウクライナでは旧ソ連が引き起こしたとされる「ホロドモール」という大飢饉の犠牲者の追悼日。その日にロシア軍は計75機のイラン製自爆型ドローン「シャヘド」でキーウなど少なくとも6地域を攻撃したという。ロシア軍のドローン攻撃としては昨年2月の侵攻開始以降で最大規模だった。

ロシア軍のドローン攻撃を糾弾するゼレンスキー大統領(NHKニュース)

 これから冬に向けて発電所などのインフラへのドローン攻撃が増加するのではとウクライナでは警戒が強まっている。ウクライナへの国際支援の先細りが心配だ。
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 今の世界の動きを小さい国、例えばアフガニスタンから見たらどうなるのか。山本忠通・内藤正典アフガニスタンの教訓~挑戦される国際秩序』集英社新書)は、大国には見えない世界があるという

 2001年、9.11同時多発テロが起きると、アメリカは安保理決議に基づきアフガニスタンに侵攻、NATO集団的自衛権を行使してタリバン政権と戦争を始めたタリバン政権は倒れ、アメリカと同盟国が支えるアフガニスタン・イスラム共和国ができた。20年たって一昨年、政府軍はタリバンに敗れ、アメリカは撤退した。

 それから半年後の2022年2月、こんどはロシアがウクライナに侵攻した。以下、本から引用する。

アメリカとヨーロッパ諸国は、ロシアに対して厳しい経済制裁を科しているが、軍事力の使用はできない。ウクライナNATO加盟国ではないからである。

 NATOは、加盟国の一つが攻撃を受けた場合、NATO全体として集団的自衛権を行使して反撃することを定めている(NATO条約第5条)。しかし、NATOと近い関係にあったとしても、非加盟国に対して集団的自衛権を行使することはできない。そのため、ウクライナ侵攻が始まってから、アメリカもNATOウクライナに軍事介入することはできないと言い続けた。

 当初ロシアは、ウクライナが将来もNATOに加盟しないという約束をNATOに求めたが、NATOは、加盟はその国の自由意思だと反論した。

 この食い違いが解消されないうちに、ロシア軍がウクライナへの侵攻を始めた―と報道された。だが、ここには、おかしな点がある。ロシアは、ウクライナNATOに加盟できないことを知っていたし、NATO加盟国の側も、そう認識していたからである。

 すでに2014年にロシアはウクライナ東部を侵略し、親ロシア派が政府の樹立を宣言していた。今回、ロシアが公式に「独立」を認めた二つの人民共和国である。このような状況で、キーウのウクライナ政府をNATOに加盟させたら、NATOはロシア軍と直接対峙することになる。アメリカをはじめ、NATO加盟国はそれを避けていた。

 それに、新たに加盟国を迎えるには、全加盟国の同意が必要である。加盟国の一つであるトルコは、ウクライナとロシア双方と緊密な関係にあるため、加盟に同意するはずがなかった。そのことをロシアは知っていた。」

(つづく)