依然深刻なチェチェンの人権状況

 コロナの新規感染者数はようやくてっぺんが見えた感じでほっとするものの、感染者の絶対数は高いままで、医療、介護の逼迫度は深刻な状態が続いている。それにもかかわらず、政府は病床数の削減をこのコロナ禍のなかでも推進しているというからあきれる。

 コロナ対策として莫大なバラマキをするなら、そのお金を医療体制の抜本的な強化にまわしてほしい。

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 先月末の沖縄那覇市国際通り。閑散としていた

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 去年のノーベル平和賞受賞者二人に関連するニュースが、9日の朝日新聞朝刊に並んで載っていた。

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8日の朝刊より

 まず、チェチェン 人権抑圧深刻」の記事。ロシアで人権弁護士やジャーナリストが危険な目にあっているというニュース。

 ロシアのチェチェン共和国の人権弁護士、アブバカール・ヤングルバエフ氏が、独裁者のカディロフ(首長と呼ばれている)から「一家の未来は獄中か地下だ」と脅されている。

 2日にはヤングルバエフ氏の一家を批判する40万人もの大集会が開かれたという。親族が失踪し、弟はチェチェン当局をSNSで批判したあと、テロ容疑で指名手配されている。1月20日には母親が当局に連行された。

 これを独立系新聞『ノーバヤガゼータ』が報じたとところ、その記者らを、独裁者カディロフはテロリストと呼んで敵意を煽ったため、同紙は記者を「国外出張」させると発表した。

 『ノーバヤガゼータ』の編集長ムラトフ氏は去年のノーベル平和賞受賞者で、同紙の記者は何人もが殺害されてきた。今も記者たちは命の危険にさらされながら記事を書いているのだ。

 

takase.hatenablog.jp

 今回、『ノーバヤガゼータ』の記者が狙われた元になったのはチェチェンに関する報道だが、チェチェンプーチンの関係には因縁がある。無名だったプーチンを、絶対権力者に押し上げたのがチェチェン戦争だった。実はここには大きな闇がある。
 チェチェン問題に関わって命を落とした犠牲者の中には、『ノーバヤガゼータ』のポリトコフスカヤ記者もいる。

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 今回、『ノーバヤガゼータ』は記者を国外に出したが、それでも安全と限らないのがロシアの恐ろしいところだ。

 体制に逆らったチェチェン人亡命者が世界各地で殺害されている。

 《ロシア南部のチェチェン共和国からの亡命者らが欧州各地で殺害される事件が近年相次いでいる。犠牲者はチェチェン共和国のカディロフ首長やプーチン露大統領を批判してきた人物らで、チェチェンやロシアの当局の犯行への関与を疑う声が上がっている。

 複数の英メディアなどによると、2019~20年に欧州各地で3人が殺害され、1人が殺されそうになった。ロシアからの独立を目指すチェチェン独立派勢力の元司令官が独ベルリンで射殺(19年8月)▽チェチェンの反体制派ブロガーが仏リールで刺殺(20年1月)▽別の反体制派ブロガーがスウェーデンのイエブレで襲撃(20年2月)▽さらに別の反体制派ブロガーがオーストリアのウィーンで射殺(20年7月)された。》(毎日新聞2021年6月26日)

 ドイツの裁判所は昨年末、あるジョージア人の殺害をロシア政府によるテロだと認めている。ロシアはまさにテロ国家である。

《ドイツの裁判所は15日、首都ベルリンの公園で2019年8月、ジョージア人男性を白昼射殺したとして、殺人罪に問われたロシア治安機関関係者の男(56)=ロシア国籍=に終身刑の判決を言い渡した。犠牲者はロシア軍と長年戦った経歴があり、裁判所は男が本国政府の指示で犯行に及んだと指摘し「国家によるテロ」と断じた》(共同12月16日)


 近年、チェチェン情勢は報じられることが少なくなったが、いまも異様な事態が続いていることを忘れないようにしよう。

 

 ロシアの記事の隣には、8日にフィリピン大統領選の選挙戦が始まったというニュース。

 かつての独裁者マルコスの息子とドゥテルテ大統領の娘が手を組んで、正副大統領に当選しそうな情勢だという。

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マルコスの圧勝ムードだという(NHJKより)

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夢よもう一度というスローガンが受けているという(NHKより)

 現状を批判しつつ、「偉大な時代の再来」を訴えるマルコスに支持が集まっているという。似たようなスローガン、日本や米国の選挙でも見たような・・・

 フィリピンは多島国家で、ルソン島北部を基盤にするマルコスと南部ミンダナオ島のドゥテルテの組み合わせは、通常の選挙戦術からみても有利だ。

 このタッグが当選すれば、現在の強権政治は続いていくことだろう。

 ロシア、フィリピン両国とも、メディアを取り巻く状況は厳しいままだ。

 暗澹たる気持ちにもなるが、いつかは明かりが見えてくるはずだ。