きのうは月が美しかった。
きのうが満月かと思ったが、ほんとは今日で、8年ぶりに中秋の名月と満月が同じ日にあたるという。もっとも、関東はよる雲がかかって月を見るのはむずかしいらしい。月を探してみよう。
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ちょうど1カ月前、東京ビエンナーレで「玉川上水46億年を歩く」の記録映画の上映会があった。https://takase.hatenablog.jp/entry/20210824
そのさい、宇宙創成と生命の誕生について何か話をするよう主催者から依頼され、上映前に15分ほど話した。
参加者のほとんどが大人だったので、ビッグバンや超新星爆発などもおりこんで、以下のような話をした。
地球にはいま分かっているだけで175万種の生き物がいます。
地球は46億年という長い時間をかけて、すばらしい多様な生命の星になりました。
「玉川上水46億年を歩く」は46kmを地球史の46億年に見立てたプロジェクトですが、地球はできた時すでに将来生命が生まれる可能性をもっていた星でした。
そのことを分かってもらうために、私たちは何からできているかを考えてみます。
体は主に酸素、炭素、水素、窒素でできていて、この4つで96%を占めます。
これらは、どこでどうやってできたのでしょうか?
主な4元素のうち水素ができたのは、宇宙のはじまりのときでした。
宇宙に「ビッグバン」というはじまりがあったことが分かったのは80年くらい前。そして今から8年前、そのはじまりが138億年前だったと分かりました。
目に見えない小さな点から巨大なエネルギーが爆発的に広がりました。それが広がり続けて今の宇宙になりました。
ビッグバンの直後、膨大な量の水素原子ができました。
その138億年前にできた水素が、いま私たちの体をつくっています。
例えば、私たちの体の6割は水ですが、水はH2Oで水素(H)でできています。
ビッグバンでできた物質を、この私がいま体内にもっていると思ってみてください。どんな感じがしますか。
その他の元素、酸素や炭素や窒素はどうやってできたのでしょうか?
実はそれらはみな、星が創ってくれました。
夜空に輝くたくさんの星は何をしているのかというと、水素を原料にして、いろんな元素をその中で創っているのです。
例えば太陽です。
太陽はほとんどが水素ですが、その中心部は超高圧、超高温の溶鉱炉のようになっていて、核融合が起きています。
水素原子が押しつぶされて陽子と電子がいったんバラバラになって融合し、ヘリウムができます。このとき出る莫大なエネルギーが熱と光となって地球まで届いています。
太陽よりずっと大きい星では、水素からヘリウムに、さらに炭素にというように、次々に重い複雑な元素が創られていきます。
つまり、星が輝くのはいろんな元素を創るため、とも言うことができます。
そして、核融合ができなくなったときが星の寿命になります。
大きな星は寿命が来ると大爆発を起こして、一生かけてつくった元素を宇宙空間にまき散らします。超新星爆発です。
こうして宇宙はどんどん複雑な宇宙になっていくのです。
私たちをつくっている主な4元素のうち、水素は宇宙の始まりのときにでき、残りの3元素は星の輝きで創られました。
ということは、私たちは「宇宙の子」であり「星の子」です。ロマンチックに聞こえますが、これは事実なのです。
さて地球の誕生です。
それは今から46億年前、宇宙の誕生、ビッグバンから数えると92億年後のことです。
138億年を3等分して3分の2のあたりになります。
地球は宇宙の複雑化が進んでから、いろんな元素でできた星として誕生しました。だからこそ生命が生まれたのです。
宇宙が次々に複雑なもの、高度なものをその中につくり出していくという進化の流れは、そのまま地球でもつづいていきます。
多くの元素をもって生まれた地球で、原子から分子へ、分子から高分子へというふうに、より複雑なもの、より高度なものへの進化がたゆみなく行われ、物質の複雑化があるレベルに達したとき生命が生まれました。
40億年近く前に登場した小さな小さな単細胞生物が、地球のすべての生き物の共通祖先です。
そこからまた複雑化、高度化の進化が連綿と続いて、今の私たちがいます。
私たちは、宇宙の138億年の進化の頂点にいると言ってもよいでしょう。
この宇宙進化の流れを知ることで、何を感じますか。
そこから、私たちはどう生きたらいいのかを考えていただければと思います。