単細胞生物から多細胞生物へ―生命の複雑化は進む

 近くのスーパーで「洋梨」を売っていた。

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シルバーベルという品種の洋梨が売られていた

 山形県洋梨の生産が昔からさかんだったので、私たちは子どものころからよく食べていた。大学に入学して上京し、洋梨を食べたことがない人がいるのに驚いた覚えがある。
 その後、「ラ・フランス」が登場してからかつての洋梨を見なくなった。

 写真の「シルバーベル」というのが昔食べていた品種かと思っていたら、違っていた。こういうことらしい。

 明治30年代、山形県はいち早くフランスから「バートレット」という洋梨の品種を導入して栽培した。そのとき「ラフランス」は、「バートレット」の交配用の受粉樹として栽培され、およそ100年間日陰の存在だったという。そのうまさが見直されて1980年代から「ラフランス」の人気が高まっていった。

 「シルバーベル」は、1957年に「ラフランス」の自然交雑実生を選抜し、山形県の園芸試験場で育成され誕生したという。
 知らなかった。この「シルバーベル」は実がとても大きい。買ってきて正月にも食べてみようか。
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 コロナ感染の拡大が止まらない。
 もう2週間ほど毎日、曜日の感染者数の記録を更新し続けている。

 菅首相は、28日、記者団に対して、変異種への対応として、28日から来年1月末まで全ての国・地域からの外国人の新規入国を原則停止する措置を講じるとし、「先手先手で対応するために指示した」と述べた。

 多くの国が、変異種が確認された国だけから入国を停止しているなか、全面禁止に踏み切った。一方で、中韓など11カ国からビジネス関係者などを受け入れる枠組みは維持したままだ。なんか無理やり「やってる感」を出している感じがする。
 「後手後手」との批判を意識して「先手先手」と胸を張ったのだが、もっと「先手」らしい策をバシッと打ち出してほしい。いまだに症状がないと原則PCR検査が受けられないという状況を早く変えるべきだ。

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 ちょっと遅れたが、「玉川上水46億年を歩く」プレウォークの地球史解説のつづき。
 11月28日、第4区(三鷹駅代田橋)の10.6kmを歩いた。

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晴れた日、サザンカ咲く道を歩くプレウォーク参加者

 きょう歩くのは、今からざっと20億年前から10億年前くらいまで。

 前回の光合成のおさらいをしたい。
 シアノバクテリアが酸素を出す光合成をはじめた結果、オゾン層が形成されて紫外線をブロックし、生き物にとって地表が安全になった。これはあとで生命が海から陸地に上陸できる環境を準備したのだが、酸素は生物にとって危険な物質でもあり、「酸素ホロコースト」とも言われる生物の大量死を招いた

 この危機を救ったのが、ミトコンドリアを細胞内に取り込んだ真核生物だった。ミトコンドリアのおかげで、エネルギー効率のよい酸素を利用して生きるようになり、生命は大進化をとげる。ざっと20億年くらい前のことだった。

 きょうの行程での大イベントとしては生殖が大きく変化したことがある。オスとメスという性ができた。
 オスとメスによる有性生殖では、互いの遺伝情報を組み合わせて、親とは少し違った子孫を残すようになった。多様性が大きくなり、環境の変化に適応することで、進化のスピードは格段に速まった。
 しかし、その代償として子孫を残したら親には死が運命づけられた。分裂を繰り返して増える原始生命には個体の死はないが、生物が性による進化を選んだとき、死もはじまったのだった。

 きょう歩く行程にはもう一つの大変化がある。
 生命は30億年ものあいだ、単細胞で命をつないでいたが、やがて細胞と細胞が結びついた「多細胞生物」が誕生した。今から10億年ほど前だったという。ちなみに人間は37兆個の細胞でできているとされる。

 宇宙史はビッグバンから素粒子、水素原子を生み出し、多様な元素の原子を生み出し、それら多様な元素からなる複雑な惑星、地球を作った。地球の上でも宇宙の進化はつづき、原子から分子へ、さらに高分子へと複雑化は進行し、その先に生命を生み出した。
 その生命はいまも高度化、複雑化の進化を続けている。

 生命は多くの種に分かれて進化を続けてきたが、分化・複雑化は分離や分裂ではなく、多様な生命と地球は一つのエコシステムを成した
 例えば、光合成をやる植物を動物が食べてその動物を別な動物が食べて、動物が死んだら微生物が分解してという食物連鎖のサイクルである。
 エコシステムは単純なものからより多様で豊かなエコシステムになっていく。

 植物と動物をまきこむ生態系の関係では、以前「森は海の恋人」というフレーズが流行った。宮城県気仙沼のカキ養殖業と大川の源流の山の森が関係しており、上流の森が荒れると養殖のカキはうまく育たない。
 森の落ち葉がくさってできる腐葉土の中に、カキの餌の植物プランクトンを育てる養分が含まれている。
 1989年、漁師さんたちがブナやナラなど3万本の木を山に植えた。そこは「カキの森」と名づけられた。
 私たち人間もまた、エコシステムのなかで数えきれないものとつながりながら生かされている。

 さて多細胞生物では、細胞はそれぞれ機能が専門化する。
 細胞同士の情報伝達のための神経細胞が登場する。さらに、体中にはりめぐらされた神経を束ねる脊椎が発達する。

 5億年前、「カンブリア爆発」と呼ばれる生物の大躍進期、精巧な目という器官をもつ生物が現れた。目が5つもあるオパビニアという動物までいた。激烈な生存競争では、目の優劣が生死を分けた。

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オパビニア(カンブリア紀)は5つの目を持っていた

 どうやって目を獲得したのかは、進化史の最大の謎の一つだった。
 クラゲが動物最初の目をもったとされる。これは、ある植物プランクトン(ウズベンモウソウ)の遺伝子がクラゲの中に突然入ったことによると言われる

 光合成をする上では、明るい所が有利なので、光センサーが備わっている。その光センサーが種の壁を超えて移動し、クラゲの目になったというのだ。あらためて光合成すごい!

 この戦国時代 甲殻類の複眼と脊椎動物のレンズ眼が優劣を競い合い、目の性能はどんどん改善されていった。
 こうして私たちは、進化の過程で生物が獲得してきた能力、機能を引き継いでいくのである。