ビッグヒストリーの先に

 イスラエルパレスチナの戦闘は、21日からとりあえず停戦となった。

f:id:takase22:20210517124255j:plain

UNICEF より

 パレスチナ側で243人(66人は子ども、39人は女性)、イスラエル側で12人が死亡、多数の負傷者が出た。ガザ地区では激しい砲爆撃で各地の街並みが瓦礫と化し、数万人が住む家を失ったとみられる。
 この地域の問題は、アメリカが動かないとはじまらないのだが、イスラエルとの特別な関係から国連安保理が停戦を求める声明を出すのに反対し続けた。
 このかんのバイデン政権は、ミャンマー軍部とパイプがあるからと制裁に二の足を踏む菅政権にダブる。

 日本での報道はいつもながら、「どっちもどっち」で、パレスチナ問題がどうして起きたのかはすっかり忘れ去られている。「そもそも」論からやらないといけないのだが、さてどうすればいいのか。無力感に襲われる。
・・・・・・・
 お知らせです。

 新しいコスモロジーをつくるために、シリーズで開いているオンラインイベント「焚き火のある風人塾」は今週27日(木曜日)、第5回を迎えます。
 今回は『気づきの宇宙史 138億年』の「 ⑤人類のはるかな旅 グレートジャーニー」。いよいよ人類の地球拡散の旅です。27日(木)21:00からです。ご関心のある方はぜひご参加ください。

f:id:takase22:20210524231016j:plain

 私たちホモ・サピエンスはおよそ20万年前アフリカで誕生しました。その一部はアフリカを出て、ヨーロッパ、アジア、アセアニア、さらにはベーリング海峡を越えて南北アメリカ大陸へと世界中に広がっていきます。日本列島にも私たちの祖先たちがぞくぞくとやってきました。
 この偉大な旅、グレートジャーニーは、地球のすみずみにまで人類の多様な文化を花咲かせると同時に、地球環境を激しく変えていきました。
 地球全体を見渡す大きな視点から、私たちヒトの立ち位置を考えていきます。

 シリーズ企画ですが、初めての人にも分かるようにお話しますので、お気軽にご参加ください。
bonfire-place.stores.jp/items/60a740e07c42ee4d1339124f

 このコスモロジー・プロジェクトは、もともとは、私は何のために生きるのか、など、いわゆる「ビッグクエスチョン」に向き合うためにはじめたものだ。
https://takase.hatenablog.jp/entry/20120104

 これまで人類が依拠してきた宗教的コスモロジーが崩壊し、多くの現代人が生きる「軸」を喪失するするなかで、現代科学にもとづいたコスモロジーを作ろうと模索している。

 138億年前の宇宙の誕生から現在の私までを、宇宙史、地球史、生命史、人類史、世界史、日本史などと分断せずに、通しで見ていく。大きな視点からは、これまで気づかなかったものが見えてくる。その「気づき」を大事にし、積み重ねていくことで新しいコスモロジー、人生観を得ていければと思っている。

 NHKに「ファミリーヒストリー」という番組があって、ご先祖の人生をたどっただけで、多くのゲストは泣いてしまう。ご先祖はこんなに苦労して子育てして、そして今の自分があるんだな、と感動。先人に感謝し、これからの人生を大事に生きようと思う。
 3代前、4代前を振り返ってこれなのだから、138億年を振り返ったら、もっと巨大な感動になるはず、と思うのだが(笑)・・あとは私の語りの技術による。

 大きなスパンで現在を見ていくというのは、いま一つの流行になっている。最近、「ビッグヒストリー」という言葉を聞くようになった。ビッグバンから現在までの歴史を研究する新しい学問分野とされている。

 マイクロソフト社創業者ビル・ゲイツがデヴィッド・クリスチャン(『ビッグヒストリー』の著者)のレクチャーに感動して、1千万ドルをぽんと出して「ビッグヒストリー・プロジェクト」を立ち上げ、世界に広めようとしている。

f:id:takase22:20210524221850j:plain

 日本の大学で講義に取り入れるところもあり、桜美林大学では「ビッグヒストリー学科」ができている。

 こういうのが出てきたのには理由があると思う。
 一つは、この世の中どうなっているのか、混迷するなか、大きな視点で見ることが求められてきた、ということ。

 もう一つは、これまでにないような大きな視点で見ることができるだけの科学の達成があり、その知見が急速に拡大していることだ。
 太古から、宇宙ははじまりがなく永遠に存在していると考えられてきたのに対して、宇宙には始まりがあり、小さな一点から膨張してできたとするビッグバン理論が登場したのは、第二次大戦のあと。そのビッグバンは138億年前だったと確定したのが8年前だ。現代科学はものすごいスピードで進んでいる。

 科学が進むと、学問分野の行き過ぎた細分化で全体が見えなくなっていることに反省が生まれてくる。「ビッグヒストリー」では自然科学と人文科学が垣根を取り払って、宇宙物理学から考古学、遺伝学、発達心理学まで学際的にやっている。
 
 とんでもなくおもしろい、ラッキーな時代に生まれ合わせたと思う。

 ところで、『ビッグヒストリー』の結論はこうだ。

 太陽は赤色巨星に、その後収縮して矮星となり、惑星としての地球は終わりを迎える。宇宙は広がりつづけ、遠い将来、生命、惑星、恒星までもが崩壊して死の世界に還る。
「この陰うつな未来像から今日の宇宙に立ち戻って考えれば、ある意味非常な満足感を覚えるだろう。なぜなら、こうした未来予測の観点からするとそれほど歳をとっていない宇宙(もちろん138億年という宇宙の年齢は私たちにとっては、とてつもなく古いと思われるが)に、それが緑あふれる春の時期に、すなわち宇宙が恒星、惑星および生物、さらには人間さえも含む複雑な存在を生みだすのに必要な、多大なエネルギーと物質的な成分その他もろもろに満たされている時期に、私たちが生きていることを知るのだから。恒星、惑星、生命、そして人間を生みだすゴルディロックス条件は、いま静かに存在しているのだ!
 私たちは、宇宙が私たちを取りまく驚異的な世界を創造するのに必要な活力で満たされた時期に、宇宙の被造物となったのだ。」

ゴルディロックス条件とは、より複雑な状況が出現するのにちょうどよい条件(熱すぎない、冷たすぎない、大きすぎない、小さすぎないなど)がそろった環境のこと)

 ここにもやはり、大いなる感謝と生への感動がある。
 さあ、さらなる「気づき」へ進もう。