人類の移住が新大陸の大型獣を絶滅させた

 きのう早稲田大学の近くで打ち合わせがあり、少し早めに終わったのであたりをぐるっと散歩した。私が入学したのが1972年。もう半世紀もたつのか。

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立て看板もなければ、ビラをまく学生もいない

 「中国研究会」があった1号館の地下はどうなっているだろう。当時は何十ものサークルがひしめきあい、使い古した立て看板で仕切って部室を確保していた。隣はたしか「川崎セツルメント」だった。タバコの煙が立ちこめ、床はガリ版刷りのビラでいっぱいで汚かったが、そこが学生時代もっとも長い時間を過ごした場所だった。
 行ってみると、今はもうサークル自体が存在せず、無機質な事務スペースになっていた。キャンパスはどこも不純物が排除されてきれいだ。

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演劇博物館の隣に変わった建物が建設中。入口に村上春樹ライブラリー(2021年10月オープン)と書いてあった)

 変わってないのは俺だけなんじゃないか・・。思い出のとっかかりがなかなか見つけられないセンチメンタル・ジャーニーだった。

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西早稲田の交差点にタチアオイが咲いていた

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 大坂なおみ、すごいな。たった一人でテニス界を変えようとしている。

 5月30日、試合後の会見拒否で罰金を科せられ、「違反を続ければ大会からの失格、4大大会への出場停止もあり得る」とまで警告されたのに、うつを告白し、大会を棄権するにいたって、一気に風向きが変わり、大坂への支持が高まった。

 すると4大大会の主催者は一転、合同で「大坂選手がコートを離れている間、可能な限りのサポートを提供したい」、「選手が心身や社会的に最高の状態を保つことは、4大大会にとって常に優先事項。心のケアとともに、さらなる行動を起こしたい」と声明を出し、新たな制度構築も計画しているとした。4大大会の方が、心を入れ替えますというのだ。

 日本のスポーツ界では近年、パワハラ、セクハラなどの不祥事が次々に表に出てきたが、アスリートが普段からきちんと自分の意見を主張するようになってほしい。
 東京五輪についても、当事者としてもっと語ってはどうか。
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 ホモ・サピエンスが地球のすみずみにまで広がったグレートジャーニーは、環境へのすばらしい適応を示すできごとだ。もっと前の原人や旧人などの人類種もユーラシアの一部には進出したが、極寒のベーリング海峡を抜けていかねばならないアメリカ大陸と途中で広い海を渡る必要があるオーストリア大陸には行けなかった。

 しかし、それら人類にとっての新大陸への旅は同時に、地球環境に劇的な影響を与えたのだった。

 人類の移住と機を一にして、大型の動物が次々に絶滅していったのだ。
 南北アメリカでは、体重45kg以上の動物は75%が絶滅。オーストラリアでは86.4%が絶滅したとされている。

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オーストラリアで絶滅したプロコプトドン(体高3mのカンガルー)の想像図

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オーストラリアで絶滅した大型獣

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南米で絶滅したメガテリウム(体重3t、体長6-8m)想像図

 これらの動物は100万年以上前から数度の氷河期を生きのびてきたので、気候変動ではなく人類の移住が絶滅を招いたとみられる。

 アフリカ、ユーラシアでは数万年におよぶ狩猟の歴史のなかで、動物たちはヒトへの警戒心を培ってきたが、新大陸の動物たちはそれまでヒトを見たことがなかった。ヒトを恐がらないガラパゴス諸島の動物と同じで、新大陸の動物を狩るのは簡単だったろう。

 アメリカ大陸では、ウマ、ゾウ、オオアルマジロ、巨大ナマケモノが絶滅。西部劇でインディアンが馬に乗って騎兵隊と闘うのは、後世の刷り込みで、白人がアメリカに来た時、新大陸の馬はとっくの昔に絶滅していた。

 大型獣の絶滅は、家畜にする動物が少なくなったことで、のちに白人たちが持ち込んだ感染症で新大陸の社会が壊滅する遠因にもなっている。人類の感染症のほとんどは動物、とくに家畜由来で、牧畜の歴史のあるユーラシアから来た感染症への抵抗力を新世界の住民はもっていなかったのだ。

 ホモ・サピエンスは、地球に拡散する過程で、高い適応力と技術力により、地球環境を大きく変えていった。

(つづく)