核ミサイル開発は「挑発」ではない

 福岡市で3億8千万円強奪事件。
 これと、福岡空港で7億円を韓国に持ち出そうとした事件とは無関係らしい。どういうことなのか、不思議だ。

 とりあえず、朝日川柳より
  お金って有るところには有るんやね  (大阪府 石田貴澄)
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 きょう午後は神保町へ。

 北朝鮮人権問題国際シンポジウムで、「金正恩の恐怖政治と今後の展望」と題する講演を聴きにいった。講師は高英煥(コ・ヨンファン)氏(韓国の国家安保戦略研究院副院長)(写真左)。ザイールとコンゴの大使館につとめた北朝鮮外交官で、92年に韓国に亡命した。私は彼を1996年にインタビュー取材し、その後、私や同僚が何度か取材している。10年以上会っていなかったからなつかしい再会だった。
 高氏は、金正恩の統治の核が、恐怖政治にあると指摘。次官級以上の幹部だけで140人もが処刑されたという。結果、幹部は徹底して「上から言われたことしかやらない」という態度になり、自分の身を守るために面従腹背、賄賂などの腐敗が蔓延している。
 また、金正恩が誇る大規模建築は、ウオーターパークにしろ高層アパート群にしろ、優先的に電気を供給するよう指示されるから、他の地域の分を回すことになる。電力供給量がそもそも限られているため、平壌市内でも日に1時間しか電気が来ない地区も出てきて、市民が大きな不満を持っているなど、興味深い情報も披露された。
 このタイミングでの講演であるから、核ミサイル問題は当然、中心テーマの一つだった。
 高氏は、韓国に亡命して以来、「金日成金正日核兵器開発の意思は確固たるものである」と主張し続けてきたが、聞き入れてもらえなかったという。ただ、さすがにここにきて「核ミサイル開発は、アメリカとの対話用だという人はいなくなった」そうだ。日本では、この主張がまだ生き続けているように見えるのは、困ったものだ。援助がほしいから核開発しているなどという識者までいたからな。
 北朝鮮外交のトップだった故姜錫柱(カン・ソクチュ)は部下に対して「(核ミサイル開発をするのは)いくばくかのドルが欲しいからだと思っているのか。いいかげんに迷妄から覚めろ!」と言ったという。日本の識者も迷妄から覚めてほしいが。
 ただ、高氏の見方にちょっと違和感を感じたのは、核ミサイル開発の目的を「体制の維持と強化」と見ていること。これでは防衛的な位置付けになる。私は攻撃のための核兵器開発だと考えている。「攻撃のための」という意味は、先制攻撃するということではなく、北朝鮮の「国是」である南進統一を実行するための必要条件だということ。韓国へ進攻する際、アメリカ本土、少なくともアジア太平洋の米軍基地に届く核ミサイルによって、アメリカの介入を牽制できると考えているはずだ。つまり、核ミサイル体系の完成は、南進の条件が整うことを意味するのではないか。
 会場からもこの点で質問が出て、高氏はこう答えた。
 もともとは、金日成朝鮮戦争での敗因の一つにアメリカの核の脅しがあったことから、次回の南進のためには核兵器が必要だと考えた。ただ、90年前後に、共産圏崩壊と中国の改革開放という激変にさいして、「核兵器がないとやられてしまう」と体制維持の目的が大きくなった。高氏も南進への準備という位置づけは認めていた。
 いずれにしろ、核実験、ミサイル発射は、高氏のいうように「確固たる意思」で進めていいるのであって、時々の政治的思惑で「挑発」しているわけではない。政府もメディアももう「挑発」という言葉を使うのをやめたらどうか。

 ところで講演会場は専修大学の5号館という新しい校舎だったが、つくりもインテリアもしゃれた感じで、まるでどこかのカフェのよう。時代を感じる。
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 きのうの夕方4時ごろから、私のフェイスブックに異様な数のシェアが入って驚いている。
 それがみなミャンマー人。22日の深夜12時時点で「シェア」250を超えた。「友だちリクエスト」が120。
 4年前、ミャンマー民主化運動内部で二十数年前に起きた陰惨な粛清事件について投稿したのだが、それをあるミャンマー人が見つけて拡散したようだ。
https://www.facebook.com/hitoshi.takase.75?fref=nf&pnref=story
 友だちリクエストをしてきた中に、当時、「スパイ」だとして後ろ手に縛られて私の前に引き出されてきた一人の名前を見つけた。写真に一人だけ写っている女性だ。

 4年前、「21年目の真相〜あれは誤報だったのか」という番組を作った。これは、私が主人公のドキュメンタリーで、21年前に、民主化組織内に「スパイ」が潜入していたと報じたのは誤りだったのではないか、ともう一度取材したもの。結果、「スパイ」は濡れ衣で、組織内部の権力闘争の末に起きた粛清だったと結論づけた。テレビ朝日の「テレメンタリー」で放送された。
 もとの番組(テレ朝「ザ・スクープ」)の一部は以下に誰かがアップしている。https://www.youtube.com/watch?v=sZtUeA8K_p0
 この粛清事件では、およそ40人が「スパイ」としてむごたらしく処刑された。しかし、ちょうど私が再取材した2013年ごろから、犠牲者の家族たちが裁判を起こすなどして世間に知られるようになった。
http://d.hatena.ne.jp/takase22/20130602

 スターリン主義的な組織の病理は、いつの時代にも存在する。場合によっては、民間の企業などにも。