いま国会で問題になっている派遣法改正。
厚労省の富田望課長が、「派遣労働は期間がきたら使い捨て、モノ扱いだった」が、今回の改正で「ようやく人間扱いするような法律になってきた」と述べたという。
「実際、私たちはモノ扱いされています」。
こう壇上で訴えたのは、派遣で働く56歳のシングルマザー。
今の派遣先で15年間、一般OLと同じ仕事をしてきた。
3ヵ月毎の更新を繰り返しながら、多くの女性正社員よりも長く働き続けてきた。それでも派遣となると、正社員との格差は2倍。正社員がもらえる退職金も、交通費もなし。忌引きさえない。
「私にも親兄弟がいます。何かあれば行き来したいのが人情です。」
パワハラを上司に訴えると、「そんなにつらかったら、死ぬ方法もあるよな」とまで言われたという。
彼女にとっては、いまの働き方は「不本意就労」だが、では、改正でよくなるかというと、職自体を失うことになるという。この改正案では、同一の事業所における派遣労働者の継続的な受入れが、3年が上限となるのだ。
「先月末、社長から、派遣法改正で、3年後にはやめてもらうと言われました。3年後は59歳。職が見つかるあてはありません。労働者にとって仕事を奪われるのは死刑宣告のようです」。
これは、きょうの「東京法律事務所60周年記念セミナー」での訴えだ。
テーマは、派遣法改正を控えて「非正規雇用〜もう無権利のままにはしない」。200人を超える参加者が熱心に訴えに聞き入った。
派遣法改正をめぐっては、国会での駆け引きが山場を迎えている。
《派遣労働の期間制限を一部撤廃する労働者派遣法の改正案を巡り、衆議院厚生労働委員会の理事懇談会で、与党側が今月19日に安倍総理大臣の出席を求めて質疑を行ったうえで、採決を行うことを提案しましたが、民主党と共産党は応じず、引き続き協議することになりました。》(NHK)
最近、子どもの貧困や母子家庭の困窮の問題が取りざたされているが、格差が小さいとされてきた日本社会の様相が変わってきたような気配だ。
非正規雇用はすでに38%を超え、女性では過半数になっている。
非正規雇用は、まず、いつ職を失うか分からないという「雇用の不安定」、そして労働条件が劣悪で、とくに賃金が安いという二つの問題がある。
一見、これは経済の問題のようにみえるが、「人間の尊厳」を奪われるということなのだ。
郵便局で働く非正規がこんなことを言った。
同じ制服で、同じ仕事をしているのに、賃金も手当ても圧倒的な差がある。差別のなかで仕事をしていると、心も曲がってしまう。
「雇用の安定」、「同一労働同一賃金」が求められているなかで、今回の派遣法改正は、逆の方向を向いている。
廃案にすべきだ。