米軍駐留は憲法違反・・伊達判決の衝撃

takase222015-06-19

労働者派遣法改正案が衆議院で可決された。
《現在派遣期間が最長三年の製造業や一般事務などの派遣労働者について、受け入れ企業が労働組合などから意見を聞き、働く人を代えれば、派遣労働者を同じ職場で働かせ続けられる。》(東京新聞

同一労働同一賃金推進法案修正案もセットだが、これは《同じ仕事なら受け入れ企業の正社員と派遣労働者らの待遇の格差是正を目的とする法案。だが、両者の待遇格差を残す余地がある文言が盛り込まれたため、同じ処遇が実現するかは不透明だ。》

こうなってしまった裏には維新の動きがあった。
《当初案は維新のほか民主、生活の三党が共同提出したが、維新が労働者派遣法改正案の採決に加わることを条件に、修正案を自民、公明と提案することで合意した。当初案は均等待遇実現を図るとしたが、修正案は均等待遇にこだわらない内容に後退した。》
維新は与党に反対するポーズを取りながら、しっかり法案可決に協力したわけだ。第二公明党といわれても仕方ない。

朝日川柳にはこのところ、維新を皮肉るものが多い。

是々非々の非々というのを是非見たい    (大阪府 村松則康)17日
志士よりは新撰組が似合いそう      (兵庫県 横山閲治郎)18日
首相待つ維新の後方支援かな      (静岡県 増田謙一郎)19日

参議院で強く抵抗して、なんとかつぶせないものか。これだけ評判が悪いのだから、維新も態度を変更したらどうか。
・ ・・・・・・・
さて、きのうの「砂川判決」だが、これがなぜ「戦後最大の事件」などと言われるのか。
私の年代より下になると、ほとんど知らないと思うので、『法治国家崩壊』から紹介する。

日本の独立から5年を経た1957年、現在は東京都立川市になっている旧砂川町の米軍基地で、滑走路拡張反対のデモ隊が、わずか数メートル敷地に入ったという理由で、22人逮捕され、うち7人が起訴された。これが「砂川事件」である。
(この米軍基地はいま、その一部が昭和記念公園という広大な国営公園になっている。私の家から自転車で行ける距離で、かつては娘を連れて行って遊んだものだ。写真)
さて、7人の容疑内容は、日米安保条約にもとづく「刑事特別法」違反だった。通称、刑特法。米軍基地への許可の無い立ち入りや、米軍の軍事機密を探ったりすることを取り締まるための法律だ。

ところが、裁判を担当した東京地裁の刑事第13部(裁判長、伊達秋雄)が、判決のなかで、「米軍駐留は憲法第9条違反」と前例のない判断を示した。
その理屈はこうだ。

1)日本は憲法で、戦争をすることも戦力をもつことも禁じられている。
一方、安保条約にもとづき日本に駐留する米軍は、日本防衛のためだけでなく、戦略上必要と判断すれば、日本国外にも出動するから、日本が直接関係ない戦争にまきこまれるおそれがある。
これは「政府の行為によってふたたび戦争の惨禍が起きないようにすることを決意」した日本国憲法の精神に反する。

2)そうした危険性をもつ米軍の駐留は、日本政府が要請した結果であり、日本政府の行為によるものである。日本政府が米軍の駐留を許していることは、第9条第2項で禁止されている戦力の保持にあたる。従って、日本に駐留する米軍は憲法上、存在が許されない。

3)刑特法は、正当な理由のない基地内への立ち入りに1年以下の懲役または罰金を科しており、特別に重い。しかし、米軍の日本駐留自体が憲法違反である以上、どんな人でも適正な手続きによらなければ刑罰を科せられないとする憲法第31条(適正手続きの保障)に違反しており無効である。
したがって、全員無罪。
私は、日本国憲法を素直に読めば、この判決の論理は非常にまっとうなものだと思う。

(なお、断っておくと、私は、本来、第9条は改正すべきだという「改憲派」である。ただ、物事はつねに「コンテキスト」(文脈)の中で判断しなければならない。今の政治状況においては、改憲は非常に危ない結果になるのが目に見えている。従って、いま憲法をいじくるのはダメ!という「暫定的護憲」の立場をとっている。)

このいわゆる「伊達判決」が出たのが1959年3月30日。
日米両政府は大きな衝撃を受けた。
「米軍駐留は憲法違反」という判決が覆らなければ、当時繰り広げられていた米軍基地反対闘争や、安保条約改定反対闘争を勢いづけ、新安保条約案の国会提出も調印もできなくなってしまう・・・
その翌日の3月31日、アメリカがすぐに動いた。
皇太子と正田美智子さんとの婚儀とパレードを10日後に控え、お祝いムードが高まっていた。
(つづく)

労働者派遣法改正案が衆議院で可決された。
《現在派遣期間が最長三年の製造業や一般事務などの派遣労働者について、受け入れ企業が労働組合などから意見を聞き、働く人を代えれば、派遣労働者を同じ職場で働かせ続けられる。》(東京新聞

同一労働同一賃金推進法案修正案もセットだが、これは《同じ仕事なら受け入れ企業の正社員と派遣労働者らの待遇の格差是正を目的とする法案。だが、両者の待遇格差を残す余地がある文言が盛り込まれたため、同じ処遇が実現するかは不透明だ。》

こうなってしまった裏には維新の動きがあった。
《当初案は維新のほか民主、生活の三党が共同提出したが、維新が労働者派遣法改正案の採決に加わることを条件に、修正案を自民、公明と提案することで合意した。当初案は均等待遇実現を図るとしたが、修正案は均等待遇にこだわらない内容に後退した。》
維新は与党に反対するポーズを取りながら、しっかり法案可決に協力したわけだ。第二公明党といわれても仕方ない。

朝日川柳にはこのところ、維新を皮肉るものが多い。

是々非々の非々というのを是非見たい    (大阪府 村松則康)17日
志士よりは新撰組が似合いそう      (兵庫県 横山閲治郎)18日
首相待つ維新の後方支援かな      (静岡県 増田謙一郎)19日

参議院で強く抵抗して、なんとかつぶせないものか。これだけ評判が悪いのだから、維新も態度を変更したらどうか。
・ ・・・・・・・
さて、きのうの「砂川判決」だが、これがなぜ「戦後最大の事件」などと言われるのか。
私の年代より下になると、ほとんど知らないと思うので、『法治国家崩壊』から紹介する。

日本の独立から5年を経た1957年、現在は東京都立川市になっている旧砂川町の米軍基地で、滑走路拡張反対のデモ隊が、わずか数メートル敷地に入ったという理由で、22人逮捕され、うち7人が起訴された。これが「砂川事件」である。
(この米軍基地はいま、その一部が昭和記念公園という広大な国営公園になっている。私の家から自転車で行ける距離で、かつては娘を連れて行って遊んだものだ。写真)
さて、7人の容疑内容は、日米安保条約にもとづく「刑事特別法」違反だった。通称、刑特法。米軍基地への許可の無い立ち入りや、米軍の軍事機密を探ったりすることを取り締まるための法律だ。

ところが、裁判を担当した東京地裁の刑事第13部(裁判長、伊達秋雄)が、判決のなかで、「米軍駐留は憲法第9条違反」と前例のない判断を示した。
その理屈はこうだ。

1)日本は憲法で、戦争をすることも戦力をもつことも禁じられている。
一方、安保条約にもとづき日本に駐留する米軍は、日本防衛のためだけでなく、戦略上必要と判断すれば、日本国外にも出動するから、日本が直接関係ない戦争にまきこまれるおそれがある。
これは「政府の行為によってふたたび戦争の惨禍が起きないようにすることを決意」した日本国憲法の精神に反する。

2)そうした危険性をもつ米軍の駐留は、日本政府が要請した結果であり、日本政府の行為によるものである。日本政府が米軍の駐留を許していることは、第9条第2項で禁止されている戦力の保持にあたる。従って、日本に駐留する米軍は憲法上、存在が許されない。

3)刑特法は、正当な理由のない基地内への立ち入りに1年以下の懲役または罰金を科しており、特別に重い。しかし、米軍の日本駐留自体が憲法違反である以上、どんな人でも適正な手続きによらなければ刑罰を科せられないとする憲法第31条(適正手続きの保障)に違反しており無効である。
したがって、全員無罪。
私は、日本国憲法を素直に読めば、この判決の論理は非常にまっとうなものだと思う。

(なお、断っておくと、私は、本来、第9条は改正すべきだという「改憲派」である。ただ、物事はつねに「コンテキスト」(文脈)の中で判断しなければならない。今の政治状況においては、改憲は非常に危ない結果になるのが目に見えている。従って、いま憲法をいじくるのはダメ!という「暫定的護憲」の立場をとっている。)

このいわゆる「伊達判決」が出たのが1959年3月30日。
日米両政府は大きな衝撃を受けた。
「米軍駐留は憲法違反」という判決が覆らなければ、当時繰り広げられていた米軍基地反対闘争や、安保条約改定反対闘争を勢いづけ、新安保条約案の国会提出も調印もできなくなってしまう・・・
その翌日の3月31日、アメリカがすぐに動いた。
皇太子と正田美智子さんとの婚儀とパレードを10日後に控え、お祝いムードが高まっていた。
(つづく)