オフィスが御茶ノ水にあり聖橋(ひじりばし)口で下りて歩く。
聖橋というのは、近くにあるニコライ堂にちなむが、ここは日本のギリシャ正教の中心だ。夏の陽が照りつけるニコライ堂を横目に出勤。
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SPEEDIについて文科省が総括したが、これについて報道は割れている。
「SPEEDI:文科省が非公表の誤りを認める」との見出しは毎日新聞。
《文部科学省は27日、東日本大震災と東京電力福島第1原発事故後の対応を検証した報告書を公表した。緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)の拡散予測を当初公表せず、住民避難に活用されなかった点について、データの信頼性に疑問があったが、住民に提供する意味は「否定することまではできない」として、初めて非を認めた》
文科省がついに反省したというのだ。
一方、東京新聞は、文科省は公表しなかったことを正当化しているという。見出しは;
「放射能拡散予測の非公表「適当」 文科省が事故対応検証」
《文部科学省は27日、東京電力福島第1原発事故後の同省の対応の検証結果を公表した。住民避難に役立てるはずの緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム「SPEEDI」の拡散予測を当初、公表しなかったことについては「仮定に基づく計算で現実をシミュレーションしたとは言い難いとの認識は適当だった」と正当化した。
同省は記者会見で「文科省はSPEEDIの結果を公表する立場ではない」とも説明した》
要するに、文科省の報告が、あいまい不明瞭で責任の所在も明らかにしていないから、こんなに評価が割れるのだろう。事故から1年以上こんな報告書づくりをやっていたのか。現b発
政府がこんなふうである一方、電力会社もあきれるニュースしか提供してくれない。
今週発覚した、福島第一原発事故の収束作業で、下請作業員の被ばく放射線量計を鉛板で覆う工作。
やったのは「ビルドアップ」(郡山市)という建設会社だが、この《作業員十二人のうち八人は、派遣業の許可のない業者が送り込んだ疑いがあることが、ビルド社関係者の話で分かった。職業安定法(労働者供給事業の禁止)に触れる違法派遣で、下請け業者が労働者を現場に送り込むだけで仕事の指示や監督をしない偽装請負が行われていた可能性》があると東京新聞(26日)は指摘する。
こういう不祥事が起きると電力会社は、下請に任せているので関知しないと言って逃げるのだが、作業員を監督できない(しない)ようなら下請を使うべきではない。
そもそも原発内の作業には、リスクの高い工程も多く、万一の事故を想定することも必要なのだから、電力会社が作業員を直接指揮できない「請負」という契約自体が問題だと私は思う。たしか原発作業員はすべて直雇いにしている国が多いと聞いたことがあるが、こんど調べてみよう。
さらに昨日の朝日新聞。
《原発で働く電力会社社員に比べ、請負会社など社外の作業員の放射線被曝が平均で約4倍の線量にのぼることがわかった。全体の9割近くが社外の作業員であるため、総被曝線量では約30倍になる。安全教育の水準に差があることに加え、より危険な業務に下請け作業員を当たらせたためとみられ、「下請け任せ」の実態を映し出している》
きのう、下請の作業員が、この差別構造を訴え出た。
この作業員は、弊社が去年取材し、TBS「報道特集」で放送した男性である。ちょっと長いが記事を引用する。今の世の中で、しかも原発という、科学の最先端というイメージの場所で、奴隷労働のようなえげつないことが行われているとは・・・
原発が信用できない理由の一つは、こういう、人を人として扱わない怪しげなシステムで支えられているからだ。
《東京電力福島第一原発事故の収束作業に携わった長崎県出身の元作業員男性(45)が二十六日、下請け上位の日栄動力工業(東京都港区)が職業安定法と労働者派遣法に違反する多重派遣をしていたとして東京労働局に訴え出た。二十七日には、多重派遣のほか約束された賃金が支払われていないとして、長崎県内の下請け会社四社を長崎労働局などに訴え出る。
男性は昨年七月一日〜八月九日、福島第一で事故収束作業に従事していた。弁護団などによると、男性に仕事を紹介し、給料を支払っていたのは前田工業(長崎県松浦市)だが、放射線管理手帳上の所属会社は、大和エンジニアリングサービス(同県佐世保市)になっていた。
両社の間には、佐世保市の創和工業と福田工業が介在し、上には、日栄動力工業がある複雑な下請けの流れになっていた。
下請けを繰り返す中で、大和エンジニアリングは日当と危険手当の計二万四千〜二万五千円を下請けに支払ったが、男性には一万千円しか支払われていなかったという。
男性は「何重もの下請け構造は不当だ。約束された日当も支払われず、危険手当もピンハネされた」と訴えている。
本紙の取材に対し、大和エンジニアリングは「請負契約であり、多重派遣ではない。下請け会社には危険手当を含めた金額を支払った」と説明。前田工業は「上にたくさんの会社があるとは知らなかった」と話している。
◆建屋外と事前説明/実は高線量要員
福島第一原発の収束作業で危険手当の未払いなどを申し立てる元作業員の男性は、本紙の取材に、原発の建屋外の作業だと説明されていたことや、被ばくの恐怖と闘いながらの作業だったのに正当な手当が支払われない怒りを語った。
二十キロの鉛板を入れたリュックサックを背負い、防護服に全面マスクを着け、1号機原子炉建屋の急階段をビル六階の高さまで駆け上がる。線量計の警報は鳴りっぱなし。緊張と息苦しさで心臓が破裂しそうになる。「早く終われ、早く終われ」。男性は心の中でつぶやき続けた。
昨年七月に携わった作業を男性が振り返った。建屋内にいたのは十分弱だったのに、二・四ミリシーベルトも被ばくした。一般人の年間被ばく上限の二倍以上もの線量だ。建屋内に局所的に線量が極めて高い場所があることなどが影響したとみられる。このほか男性は高濃度汚染水を処理するための配管作業など、被ばく線量の高い作業に当たった。福島第一での作業は一カ月あまりだったが、この間に計約一二・三ミリシーベルトも被ばくした。
原発作業員の被ばく上限は五年間で一〇〇ミリシーベルト。年平均二〇ミリシーベルトが作業員の手持ち線量だ。男性の場合、わずか一カ月で半年分を使ったことになる。
下請け会社も自社の社員が線量を使い切ってしまうと、次の仕事を取りにくい。そこで男性のように臨時の作業員を雇うケースが出てくる。男性は「自分が(被ばく線量の高い作業を短期で担う)高線量要員だったことを後で知った」と話し、「約束した賃金は少なくとも払ってほしい」と訴えた。 (片山夏子)》