きのうは名古屋だった。
『ガイアの夜明け』(先月21日放送)で取材に協力していただいた、「南医療生協」にご挨拶と資料の返還に行ったのだ。
JR南大高駅前に4月1日にオープンした医療介護・みんなの交流施設、「よってって横丁」の中をはじめて見ることができた。
3階から8階がサ高住(サービス付き高齢者向け住宅)と老人ホーム。
1階と2階に24時間の在宅診療所やメンタル・デイケアなどの他、各種店舗や多目的ルームなど誰でも出入りできるスペースがある。
夕方、女子高校生がやってきて、1階にある「自習室」に入っていった。学校帰りなのだろう、制服の生徒10人ほどが勉強していた。駅前にこういうのがあるのはいいな。(写真)
夕食は2階のオーガニックのイタリアン・レストラン「ラ・ロンディネ」で、生協の事務方のトップ、成瀬専務らと。料理もワインもすばらしかった。
成瀬さんによると、番組放送後、全国から見学の申し込みが殺到しているという。
住民がみずから医療や介護の在り方を決め、それが新たな地域づくりを進めていくという南医療生協の実践が、各地でのコミュニティづくりの参考になればうれしい。
いま、「地方消滅」という言葉が危機感をもって広まっていて、政府は地方の中核都市だけを選んでコンパクトシティ化し、その他は「たたむ」、つまり見捨てるという方針でいこうとしている。しかし、実際は『里山資本主義』でも紹介されているように、過疎といわれる地域でも、自発的に動いて住みやすい環境を作り、若者を惹きつけているところがたくさん出てきている。
大都市部でも問題は山積で、例えば名古屋市では、かつて5つあった市民病院が、民間への払い下げなどで、いまや2つしかないという。残りの二つも巨額の補助金をつぎ込んでやっと維持しているという。もう行政に、あれやって、これやって、と頼る時代ではない。
成瀬さんによると、南生協は5年連続で経常剰余が5%以上あり、完全に黒字経営をしているそうだ。ベッドの充床率は他の病院より10%高く、非常に効率性が高いという。一方で、社会貢献にも積極的で、福島県から愛知県に避難してきた子どもたちの甲状腺検査をしているのは南生協病院だけだ。
成瀬さんは、十八番の「愛知用水」の建設物語をはじめた。
水で苦労した地域住民が、自発的に土地を供出し、大変な困難のなか、農民自ら土を掘り切りひらいたそうだ。
この愛知用水の建設史は、「協同」の精神そのものだ。我々南生協は、ご先祖のその精神を受けついでいきたい、と成瀬さんは熱く語る。
誇るべき伝統があるのはすばらしい。いや、こうした「協同」の物語はどこにもあるはずで、それを再評価する姿勢が大事なのだろう。
(以前の日記で、「つづく」としてそのままほったらかしにしたのがこの話だった。)
http://d.hatena.ne.jp/takase22/20150424
どこであれ、これからの地域づくりを考える上では、それぞれの歴史の発掘もあわせてやったらいいと思う。
・・・・・・・・
安倍内閣の暴走ぶりには連日驚かされる。
ここまで「危ない」と思った政権は記憶にない。以下の東京新聞の社説は、そのまま私の危機感でもある。
安保法制閣議決定 専守防衛の原点に返れ(2015年5月15日)
安全保障法制が閣議決定された。海外での武力の行使に道を開く危うい法案だ。戦後貫いてきた「専守防衛」の原点に、いま一度返るべきではないか。
安倍内閣がきのう閣議決定したのは、集団的自衛権を行使できるようにするための自衛隊法改正案など、十の改正法案を束ねた「平和安全法制整備法案」と、自衛隊の海外派遣を随時可能とする新法「国際平和支援法案」だ。
これまで「安全保障法制」と呼んでいたものを、二つの法案を合わせて「平和安全法制」と言い換えたのも、「戦争法案」との批判を和らげる意図があるのだろう。
それは欺瞞(ぎまん)である。呼び方をいかに変えようとも、法案が持つ本質は変わりようがない。
その本質は、自衛隊の活動内容や範囲が大幅に広げられ、戦闘に巻き込まれて犠牲を出したり、海外で武力の行使をする可能性が飛躍的に高くなる、ということだ。
こうした自衛隊活動に、憲法の揺るぎない裏付けと国民の大多数の理解と納得があるのならまだしも、海外での武力の行使は、自民党を含む歴代政権が憲法違反として認めてこなかったものである。
国会で積み重ねられた議論を無視して一内閣の判断で憲法解釈を変え、自衛隊を地球上のどこにでも派遣して武力の行使を認めることを、憲法破壊の暴挙と言わず何と言う。