朝9時半ごろ、御茶ノ水駅の聖橋口を出ると、久しぶりに『ビッグイシュー』の売り子が立っていた。
しばらく見なかったね、と声をかけると、
「肺炎になって入院していたんです」
この雑誌は月2回刊。ホームレスが街頭で売ることで、自立を支援する事業だ。
売り子は価格の350円のうち180円を自分の利益として得ることができる。
具体的には、住所不定では就活ができないので、まずは住所を持てるようにする。
第一段階として、1日に20〜25冊売れば、簡易宿泊所(1泊千円前後)などに泊まり、路上生活から脱出でき、第二段階として、25〜30冊売れれば、毎日1,000円程度を貯金し、7〜8ヶ月で敷金をつくって自力でアパートを借りることができる。
ここで「住所」を持つことができて、第三段階の就職活動へと進んでいく。
http://www.bigissue.jp/
実際、おととし聖橋口で売り子をしていた青年は、定職を得て交代した。
夕方4時ごろ通りかかったら、まだ雑誌を手に四つ角に立っていた。
早く自立できるように祈る。
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きょうは、来日している「クルド自治政府訪問団」の「情勢報告会」に参加するため、13時に衆議院第二議員会館へ。
団長のクルド人のイラク国会議員、セルワン・アブドラ・イスマイル氏は、以下のような報告を行った。
「イスラム国」の出現は、サイクス・ピコ協定からの矛盾、サダム・フセイン時代の圧制、そして現在のシーア政権下のスンニそしてクルドとの権力闘争の結果だ。
イラクでは200万人が避難民となり、うち8割がクルド自治区に流れこんでいる。国連はレベル3の最悪の人道的危機だとしている。
クルド自治区は、ISと1050kmの境界を接し、激戦を展開中だ。ペシュメルガ(クルド自治政府の民兵)にも大きな被害が出ており、すでに犠牲者は1000人超、負傷は5000人を超える。
結論として、
「ペシュメルガは、米国の空爆とともに、イラク北部での「イスラム国」の攻勢を食いとめてきた。しかし、空爆によっては「イスラム国」を打ち負かすことはできない。だから、クルドはより大きな支援を必要としており、できれば同盟国の物理的介入を求めたい。同盟国がクルド自治区とイラクに地上軍を派遣し、ペシュメルガに直接に兵器を供給することこそ、「イスラム国」を打ち負かす唯一の道である」と述べた。
情勢報告の後、民主党の長島昭久議員が、「イスラム国」の問題が解決したあと、イラクと一体でやっていけるかと質問。
これに対し、セルワン氏は「個人的見解だが」と断わりながら「一つの国としてありつづけるのは不可能だと思う」と言い切った。
イラクは将来3つの独立した地域(クルド、スンニ、シーア)に分かれるだろう。米国もそのように考えている、と。
「イスラム国」との戦いの尖兵として、欧米などから期待され、実際に最大の軍事的貢献をしていると自負するクルド自治政府は、もう「独立」を目指すことを隠そうとしない。
これから中東の台風の目になるのが確実なクルド自治区だが、政治家の参加が少ないのが気になった。
銀座のホテルで開かれた夜のレセプションには、国会議員は二人しか見なかった。
一人のクルド人に、「政治家が来てないね」と話しかけると、「そうですね。でもメディアも来ていませんよ」と切り返された。メディア関係者は、私を含めわずか5〜6人。
政治家もメディアも、もっと中東への関心を高めないと。