「スーパー堤防」が街を壊す

takase222014-07-09

原発の映らぬ日々なりテレビには民を守ると総理は映る
                  (本宮市)廣川秋男

「社会派」の朝日歌壇には、集団的自衛権を詠んだ歌がならぶ。
シベリア抑留者の歌も。

ラーゲルの黒パンの味知る友のまた一人逝く天をばあおぐ
                  (枚方市)鈴木七郎

松田わこ、中村桃子、室 文子らの年少の常連が入選。
私が楽しみにしている上田結香(東京都)はとみると、みごと二人の選者から選ばれている。これも面白い。

美しい羽でなかったらもっと長く空を飛んでいられた蝶の標本
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雨が続いたあと、きのうは一転して暑い日になった。
朝、私は江戸川の堤防の上から、更地を片付けるパワーショベルを見ていた。三日前まであった一軒の家が消えていた。
東京の下町で、移転を拒否する家が強制解体されるという事態が起きているのだ。

現場は江戸川区北小岩1丁目東部地区(通称18班)。江戸川堤防沿いに88世帯が住んでいたが、「スーパー堤防」工事のため立退きを迫られ抵抗して残っているのは6軒。そのうち一軒に対し、区は強制解体という手段に出た。
スーパー堤防」とは何か?
以下は、この問題を以前から調べていて、私にレクチャーしてくれたジャーナリストの樫田秀樹さんからの受け売りだ。
スーパー堤防」とは、堤防の幅が高さの30倍という巨大な堤防で「200年に一度の洪水にも耐えられる」と国交省は説明する。首都圏と近畿圏の6河川の873キロを整備する計画だったが、87年の事業開始から今まで完成したのは7千億円をかけて50キロだけ。このペースだと完成まで400年と12兆円かかることになる。
その非現実性に、この事業は2010年、民主党政権時の事業仕分けで「スーパー堤防はスーパー無駄使い」とされ、「廃止」に決まった。
ところが国交省は、翌2011年、計画を6河川120キロに規模縮小して復活させ、江戸川区でもこれに関連付けた区画整備事業の予算を計上した。この超巨大堤防工事が、住民と大きなトラブルを引き起こしているのだ。
江戸川区の「スーパー堤防整備方針」の対象は、区を流れる江戸川と荒川の全沿川の44キロの区間で、4万世帯9万人が暮らす。これをすべてスーパー堤防にするには、江戸川区だけで200年と2兆7千億円がかかると試算されている。

写真は、5日(土)朝の抗議行動。この日解体が始まると聞いて、私も朝8時からカメラもって堤防にいたのだが、実際は工事の足場を組んで屋根をはがしただけだった。本格解体は月曜に行われた。
住民によると、ここは100年以上水害が起きたことはないという。立退きたくないという80歳を過ぎたおばあさんは「ひどいねえ、街を壊していくんだね」と怒っていた。

いま、安倍内閣は、「国土強靭化」をスローガンに、莫大な公共事業予算を「復興・防災対策」の分野に重点的に計上している。
不要な災害対策で、税金を無駄遣いするばかりか、暮らしを破壊するような公共事業が増えるのでは、と危惧する。

この問題に関心を持った方は、樫田秀樹さんのブログ記事を読んでください。
http://shuzaikoara.blog39.fc2.com/blog-category-33.html