持続可能な町の町長が引退

takase222013-03-19

長い出張から帰ると、年度末ということもあって、山のようなオフィスワークが待っている。
「雑用」とは言うまい。資金繰りをふくめ、一つひとつが、仕事場を維持するための必要な仕事だから。
きょうは、保険屋が来社しスタッフの傷害保険の切り替え、テレビ局出向者の契約更改手続き、故障した機材の買い替えで複数の会社から見積もりをとって値段交渉、弊社で仕事をしたいと応募してきた人の選考、会計事務所と年度末決算についての打合せ、その他ここで明らかにできない種類の総務、そしてテレビ局に行ってミャンマー取材の編集の打合せなどなど。
プライベートでは、昼ごろ上の娘から全身に赤いポツポツができたとメールが来た。アレルギー体質ではないし、最近飲み始めた薬もないという。ミャンマーでダニに悩まされたことを思いだし、ひょっとしたらダニを家まで持ち帰ったのではと心配になり、医者に行けと指示。
次に、下の娘が公立大学への入試の出来がよくなかったとの報告。私立に行くとしたら学費をどう調達するか、沈思黙考。
母からは、母方の実家の法事が来月あるから日程をあけて出るようにということと、父の法事も合わせてやってしまおうかという相談。
そうこうして風のように年月が経っていくのだろう。これが人生か。
夜8時すぎ、上京した徳島県上勝町(かみかつちょう)の笠松和市町長に会いに行った。12年間町長をやってきたが、この4月で引退なさるというので、一献傾けて、慰労するためだった。
笠松さんについてはこのブログで何度も紹介したが、私が最も尊敬する自治体首長の一人である。http://d.hatena.ne.jp/takase22/20080710
上勝町のホームページには「町長のご挨拶」として「持続可能な地域社会をつくる」と題する一文を載せている。http://www.kamikatsu.jp/mayor/
私が、反原発派の論客(広瀬氏や小出氏など)が温暖化論を批判している話を持ち出すと、笠松さん、IPCC気候変動に関する政府間パネル)についてひとくさり。徳島県で一番人口の少ない町の町長が、酒の席ですぐにIPCCについて語れるということ自体、すごいと思う。頭の中は、まさにローカルにしてグローバルだ。
町長をやめたら林業をやりたいというが、林業はもう立て直す方策が見当たらないほど壊滅状態だとのこと。1960年代前半に原木への関税をゼロにしてから林業の崩壊が始まったという。
TPPはもちろん大反対。
「2010年時点で、日本の農業従事者の平均年齢はいくつか知ってますか。65.8歳ですよ。もうNO業やね。トヨタが潰れても、国民は困らんのですよ。しかし、農業がなくなったらどうなります。農業というのは国土管理もしているんですよ」。
鋭い舌鋒は深夜まで衰えることがなかった。
いまや笠松さんもスマートフォンを使っている。スマホで写真を撮る町長の姿がかわいい。(写真)
12年ものあいだ、ごくろうさまでした。