笠松さんは、《すべての環境問題はごみ問題である》という。
《ごみ、大気汚染、水質汚濁、有害物質、環境ホルモン、地球温暖化、生物多様性など、環境問題は多岐にわたり、それぞれがまるで何の関連もない個別の問題として扱われ、別々の対策がとられています。しかし、すべての環境問題はごみ問題といっても過言ではありません。
私たちはごみを固形の廃棄物だけだと思い込み、ごみを燃やして形をなくすことだけを考えてきました。しかし、ごみの形態は固体だけではありません。排水は「液体のごみ」であり、排ガスは「気体のごみ」です。そして、あらゆる形態のごみが地球を汚染することによってさまざまな環境問題が引き起こされているのです。たとえば水俣病は、メチル水銀を含む排水という「液体のごみ」を垂れ流すことによって引き起こされました。車の燃料であるガソリンやディーゼルを燃焼させると、浮遊粒子状物質、二酸化炭素、二酸化窒素、二酸化硫黄をはじめとする「気体のごみ」が排出されます。原子力発電所は放射性廃棄物という、気体、液体、固体のごみを発生させます。》
言われてみるとたしかにそうだ。そしてこうしたごみすべてに「資源回収法」(12日の日記http://d.hatena.ne.jp/takase22/20080711)の網をかぶせたら・・・。革命がやってくる。いや、「やってくる」ではなく、革命を起こさなくてはならない。
いまこの小さな町は、今世紀末までに「持続可能な地域社会」を実現するという大きな目標を掲げている。外国からの安い作物や木材の流入で、農業、林業が衰退し、若者は都会へと去った。この半世紀に人口が三分の一以下になり、町は高齢化と過疎化にあえぐ。本書は、町財政の悪化、大気や水質の汚染、森林の荒廃、災害の多発などを起こし共同体を持続不可能にしたのは、グローバリゼーションだとこの本は喝破する。
これに対抗して「持続可能な地域社会」を実現するには、産業、環境、福祉など多分野での解決を一体として進めなければならないと言う。そして、それは必ず上勝町だけでなく、県、国、そして世界の制度・仕組みの改革を必要とする。笠松さんは本書で、《筵旗(むしろばた)を掲げろ!》と檄を飛ばしている。
ここ数年、上勝町の町づくりは注目を浴びている。昨年度は、海外21カ国を含め国内外から町の人口の倍以上、4500人もの視察者が訪れたほどだ。この町は日本と世界の未来を切り開く可能性を秘めている。
本書を読み終えると、世界で最も早く「持続可能な地域社会」を実現するという、小さな町の大きな目標が実現可能に思えてくる。
日本と世界の進むべき方向はこれしかない。