渡辺京二が語る人生の目的 2

takase222012-07-14

去年の朝日新聞記事に、大震災と水俣病を重ね合わせる石牟礼道子氏についての記事が出た。
そこに渡辺京二氏との出会いも出てくる。石牟礼氏を渡辺氏が「発掘」したさいのエピソードである。実は、私も大震災のあと、『苦海浄土』を読み直し、今の状況が水俣に通じるものがあるなと感じた。
《65年、雑誌に原稿を発表していた石牟礼の自宅を渡辺京二(80)が訪れた。
 渡辺は「熊本風土記」という雑誌の創刊を準備していた。石牟礼の原稿を一読した渡辺は驚き、知り合いの作家上野英信(故人)が出版社にかけあった。原稿は69年に「苦海(くがい)浄土」という題で出版され、反響を呼んだ。
 だが、水俣市チッソ企業城下町。企業の影響力が大きく、患者は孤立していた。
 「水俣病はふつうの事故ではなく、緩慢なる毒殺です」
 何とかしなければと思った石牟礼は「もっと多くの人に知らせたい」と訴えた。
 「石牟礼さんの頼みなら」と、渡辺はガリ版刷りの新聞「告発」を出した。以後、石牟礼と共に動き、原稿の清書や資料の整理を今も続ける。
 渡辺自身、石牟礼の作品から示唆を受け、近代を問う作品や論評を書いてきた。
 「何でも一緒にやってきたんだから。こうなったらとことん手伝うしかない」
 石牟礼は水俣病患者と震災の犠牲者の姿を重ねる。
 「亡くなった人たちの魂が伝えようとしている遺言に向き合わなければ、日本は滅びると思います。でも、受けとめて立ち上がった時、今までとは異なる文明が出来上がるのではないでしょうか」
 医療、認定、賠償。水俣病を通して突きつけられた問題に向き合ってきた人々をたずねながら、被害者となった国民、企業、国の関係を見つめ直す旅に出た。(稲野慎)》
(2011年6月17日)http://www.asahi.com/jinmyakuki/TKY201106170317.html

さて、前回の続き。
渡辺京二氏は女子大生を相手に、人は何のために生きるかというテーマを提示した。そこで渡辺氏はこう語っている。
この宇宙、この自然があなた方に生きなさいと命じているんです。わかるかな。
 リルケという詩人がいますが、彼は人間は何のために存在しているんだろうと考えたのね。人間は一番罪深い存在だと見方も当然一面ではありますが、ごく自然に言って、人間はあらゆる意味で、進化の頂点に立っている。人間は神様が作ったものじゃない。ビッグバンから始まった宇宙の進化が創り出したのが人間という存在である。ではなんのために、この全宇宙は、この世界という全存在は、人間というものを生み出したのであろうか。
 その時に彼は世界が美しいからじゃないかと考えたんです。空を見てごらん。山を見てごらん。木を見てごらん。花を見てごらん。こんなに美しいじゃないか。ものが言えない木や石や花やそういったものは、自分の美しさを認めてほしい。誰かに見てほしい、そのために人間を作った、そうリルケは考えたのね。宇宙は、自然という存在は、自分の美しさを誰かに見てもらいたいために人間を作ったんだというふうに考えたんだねえ
(つづく)