きょうは「原爆の図丸木美術館」(埼玉県東松山市)へ。沖縄の写真家、石川真生(まお)さんの「大琉球絵巻」のオープニングトークを聞きに行った。
http://www.aya.or.jp/~marukimsn/kikaku/2018/mao.html
帰ろうとして、書籍コーナーで『みなまた海のこえ』という絵本が目に留まった。表紙の絵が美しい。「石牟礼道子 ぶん/丸木俊・伊里 え」とあり、石牟礼さん文の絵本なら読んでみたいと買い求めた。
帰宅して夕刊を開くと、社会面トップの「石牟礼道子さん死去」の見出しに驚く。90歳。とうとう亡くなったか。死因はパーキンソン病による急性増悪だという。ごくろうさまでした。
他に比較できる人が思い浮かばない突出した人である。
《六九年、水俣病患者らへの聞き書きによる記録文学「苦海浄土−わが水俣病」を刊行。方言による幻想的で美しい語りを通して、被害者らの苦しみを浮かび上がらせた。この作品が、多くの人々が水俣病に目を向けるきっかけの一つとなった。同作品で第一回大宅壮一ノンフィクション賞に選ばれたが、受賞を辞退した。
「苦海浄土」は未完となっていたが、二〇〇四年に完成させた。作家の池沢夏樹さんが「世界文学全集」を編集した際には、世界で読まれるべき日本文学として唯一、この作品が選ばれた。》(東京新聞)
また、天皇・皇后両陛下に水俣訪問を働きかけ、実現にいたったことも石牟礼さんの偉大な功績だ。http://d.hatena.ne.jp/takase22/20160824
尊敬している人で、とても残念だ。いま当たり前に通用している「近代」的価値観の根本からの問い直しを迫った。『苦界浄土 全三部』を一昨年買ったのにまだツンドクのままで、今年こそちゃんと読まなくちゃと思っていたところだった。
石牟礼道子の異才を見抜いた評論家の渡辺京二さんは彼女の死をどう受け止めるのか、追悼文を読みたい。
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石川真生さん。去年2月に、がんの手術をして今もベストの体調ではないそうだが、「これからもやりたいことをやっていきます」と意気軒高だった。
いま、石川さんは基地問題を中心に撮影している。トークショーでは「アベさん、米軍基地は本土がいやがってるので沖縄にするしかないと言ったね。正直だね」とヤマトが沖縄を踏みつけにしている現実に怒っていた。
これは、阿部知子議員(立憲民主党)の質問に安倍首相が答えたもので、たしかにとても「正直」かもしれない。
《安倍晋三首相は2日の衆院予算委員会で、沖縄の基地負担軽減について「日米間の調整が難航したり、移設先となる本土の理解が得られないなど、さまざまな事情で目に見える成果が出なかったのが事実だ」との認識を示した。安倍首相が米軍普天間飛行場など在沖縄基地の県内移設の理由に「本土の理解が得られない」ことを挙げたのは初めて。
政府による沖縄の基地負担軽減策のほとんどが基地の県内移設を伴う。防衛省などはこれまで県内移設は沖縄の地理的位置など軍事上の理由としてきたが、安倍首相は本土の抵抗による受け入れ困難性を挙げたことになる。》
安倍首相を我々は批判できるだろうか。本土の日本人の多くが、めんどうな米軍基地は(遠い)沖縄に行ってもらったほうがいいと本音では思っているのではないだろうか。
石川真生さんはきょう、「沖縄は日本なのか、沖縄人は日本人なのか」と問いかけたが、これにどう答えていいものか。
(つづく)