きょうは宇宙の日

takase222009-09-12

きょうは「宇宙の日」だ。92年に毛利衛さんがスペースシャトルで飛んだ日で、日本だけの記念日だが。
これに合わせたわけではないが、このところ、日本のロケットH2Bの発射成功や、次の宇宙飛行士候補に決まった金井宣茂さんが海上自衛隊を退職したニュースが続いた。
また、修理や電池交換などを経て解像度が10倍アップしたハッブル宇宙望遠鏡の画像をNASAが公開した。
写真は地球から3800光年離れた「バタフライ星雲」(NGC6302)の画像。消滅する恒星がチョウのようにガスを発しているという。美しい。
太陽系がある、つまり我々がいる「天の川銀河」は、直径10万光年。その中に太陽以上の大きさの恒星が1000億個はあるという。そして、こういう銀河が宇宙全体に1000億個以上あるとされる。もうイメージできる範囲を超えている。
宇宙を思うとき、私たちの心に詩が生まれ、大きな癒しの感情につつまれる。
宇宙といえば、私は谷川俊太郎の「20億光年の孤独」を連想する。大きなものの前に人の思いは日常を超えていく。この詩では、くしゃみをするのだが、井上靖は沈黙してしまう。

「人生」     井上靖
M博士の「地球の生成」という書物の頁を開きながら、私は子供に解りよく説明してやる。
―物理学者は地熱から算定して地球の歴史は二千万年から四千万年の間だと断定した。しかるに後年、地質学者は 海水の塩分から計算して八千七百万年、水成岩の生成の原理よりして三億三千万年の数字を出した。ところが更に 輓近(ばんきん)の科学は放射能の学説から、地球上の最古の岩石の年齢を十四億年乃至(ないし)十六億年であると 発表している。原子力時代の今日、地球の年齢の秘密はさらに驚異的数字をもって暴露されるかもしれない。しかるに人間生活の歴史は僅か五千年、日本民族の歴史は三千年に足らず、人生は五十年という。父は生れて四十年、 そしておまえは十三年にみたぬと。
−私は突如語るべき言葉を喪失して口を噤(つぐ)んだ。人生への愛情が曾(かつ)てない純粋無比の清冽さで襲ってきたからだ。

これが書かれたのは戦後まもなくで、この頃は地球の年齢についての学説もよくわかっていない。ビッグバン仮説が出たのが1947年。今は宇宙の歴史が137億年(±2億年)、地球の歴史が46億年とほぼ確定している。宇宙についての知見がすごい速さで進んでいる。私たちはこんな時代に生まれ合わせて実にラッキーだった。
大岡信氏が監修する「宇宙連詩」というプロジェクトがある。谷川俊太郎氏や宇宙飛行士の若田光一氏も書いている。公募から選ばれたのもある。http://iss.jaxa.jp/utiliz/renshi/main_poem.html
14歳の中学2年生、酒井汐美さんの詩が目にとまった。

   邪馬台国メソポタミア
   知識としてしか知らない世界
   教科書に載ってることってホントにあったの?
   過去 は見られない
   見ているのは そら だけ

宇宙だけが知っているというイメージだろうか。でも、酒井さんも宇宙なんだよね。
ついでに、もう一つ。草野心平の弟の草野天平の詩だ。


「宇宙の中の一つの点」

  人は死んでゆく
  また生まれ
  また働いて
  死んでゆく
  やがて自分も死ぬだらう
  何も悲しむことはない
  力むこともない
  ただ此処に
  ぽつんとゐればいいのだ