金大中氏の葬儀によせて

takase222009-08-23

家のそばでイモムシを見た。パセリの葉についていた。あまりに色鮮やかで美しいので写真を撮る。後で調べたら「キアゲハ」の幼虫らしい。これが蝶々になるというのは理屈では分かっていても不思議である。同じ蝶でも種類によって幼虫の好みが違うというのも面白い。「キアゲハ」の幼虫は、パセリやニンジン、三つ葉などせり科の葉しか食べないという。
きょうは金大中元韓国大統領の国葬だった。
葬儀では黄色い風船と蝶を空に飛ばせたという。黄色は金大中氏のシンボルカラー。《何千人もが元大統領を偲んで黄色い風船を空に上げた。蝶を放つものもあり、蝶は風船を追って飛んでいった》(ハンギョレ新聞=英文より)まさに「キアゲハ」のイメージである。
北朝鮮帰国者の生命と人権を守る会の会長、三浦小太郎さんが会のサイトに載せていた文章を紹介しよう。
《各紙は、民主化運動の闘士としての金大中氏を評価する声と、また大統領就任後、北朝鮮独裁政権に対し融和的だった外交政策を、民主主義や人権思想とはかけ離れたものだったと批判する声の双方が見られます。私は後者の立場ですが、それ以上に今再検討すべきなのは、ここ日本における金大中氏を、また韓国民主化運動を支持した歴史の再検討ではないでしょうか。
私たち守る会にも、また北朝鮮問題に取り組む各人権団体の中にも、かって金大中氏や韓国民主化運動を支持した方は多くいらっしゃいます。そして、同じように民主主義を重んじ、国境を超えた人権活動の意義を信じるからこそ、この方々は今は北朝鮮の人権改善に取り組んでいるのです。
このような人たちは首尾一貫しているともうせましょう。しかし、かってここ日本で、韓国民主化運動を支援した知識人たち、政治家達が、北朝鮮の人権運動や脱北者救援運動に積極的に参加しているかといえば、むしろ、金正日独裁政権との妥協や国交正常化を、「平和と安定」の為に主張している傾向はないでしょうか。
失礼ながら具体的な名前を挙げさせていただければ、故小田実氏、和田春樹氏、本多勝一氏、大江健三郎氏、故宇都宮徳馬氏、鶴見俊輔氏、故安江良介氏(雑誌「世界」編集長)私の記憶が正しければ、彼らは皆金大中氏や韓国民主化運動の支持者であったと思います。この人たちも北朝鮮の体制をよいとは思っていないでしょう。しかし、北朝鮮人権改善運動に対し、当時も今も韓国民主化運動同様熱心かといえば、とてもそうとは思えません。多くの政治家の名前がここに続くのですが、選挙前でもあり、特定の名前を今挙げるのは自粛します。
韓国民主化運動はかって輝かしい運動であり、金大中氏は悲劇のヒーローでした。その全てを否定するつもりはありませんが、鎖国状態で情報が伝わらなかった以上やむをえない面があったとはいえ、韓国民主化運動への連帯が叫ばれた60年代〜80年代の北朝鮮の人権抑圧に対し、日本国内では、抗議し人権改善を求める声は殆ど無かったこともまた事実です。朴大統領は当時、軍事独裁ファシスト呼ばわりすらされていましたが、今の時代から振り返れば、少なくとも韓国経済を復興させ、近代化を成し遂げた政権でもあった事は一定評価すべきでしょう。
そして、ここ日本で金大中氏を支持した勢力は、北朝鮮独裁政権を支持する朝鮮総連と人脈的に繋がっていた人も皆無ではありませんでした。総連を通じた当時の北朝鮮政府の工作活動が、文世光事件(在日による朴大統領暗殺未遂事件、大統領夫人の死)を招いたことも歴史的事実です。その後、良心的政治囚として宣伝された徐勝の正体が、実は北朝鮮の工作活動に関与していたことも、今はほぼ明らかになっています。
韓国民主化運動、そして戦後の日韓関係史は、今こそ歴史的に様々な角度から分析されなければならない筈です。日韓の連携は、なによりもまず金正日全体主義体制との戦いを軸にしなければならない事は「民主主義」を政治的信念とする日韓両国民の第一の原則です》
http://hrnk.trycomp.net/news.php?eid=00131
人権・人道の問題を政治的立場から「二重基準」にしてはならない。かつて金大中氏を英雄視した私にとって忘れてはならない教訓である。