香港も、日本も、本当の民主主義がありますように

 夜10時22分ごろ、山形県沖を震源とするM6.8の地震があり、新潟県村上市震度6強を、山形県鶴岡市震度6弱が観測された。在京各局とも(テレ東以外は)特報態勢で津波への警戒を呼び掛けた。
 ちょうど1年前のきょうは、登校途中の小学生と80歳のお年寄りが倒れたブロック塀の下敷きになって亡くなった大阪北部地震(M6.1)が起きた日だ。
今回の方がマグニチュードは大きく、被害状況が心配だ。

 一昨日16日が、1964年の新潟地震からまる55年で、ウエザーニュースには日本海地震が活発化しているとの記事が出たばかりだった。以下は抜粋。
 《プレートがひしめき合っている太平洋側に比べて日本海側の地震活動はあまり活発ではありません。しかし、20世紀中ごろからは20~30年に1度の割合で大地震が発生していて、主な地震としては、1940年神威岬地震(M7.5)、1964年新潟地震(M7.5)、1983年日本海中部地震(M7.7)、1993年北海道南西沖地震(M7.8)などがあり、いずれも多数の死者を含む大きな被害が出ました。
 北日本日本海側沖には、「日本海東縁変動帯」と呼ばれるプレートの境目が存在します。同変動帯は将来的には太平洋側のようにプレート同士が衝突するようになると考えられていますが、単なる境目であっても岩盤にひずみエネルギーは蓄積され、時には大きな地震を引き起こします。
 近年、同変動帯の活動が活発化しているとの説もあり、上記の通りいくつもの地震が発生しています。特に秋田県沖などには最近大きな地震が発生していない地震空白域が存在しているとされており、再び大地震が発生する可能性が十分にあります。》https://weathernews.jp/s/topics/201906/160145/
 日本はまさに地震国、列島のどこでも大地震が起きる可能性がある。つねに防災を忘れないようにしなくては。
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 16日の香港史上最大のデモで、中国=香港政府はさらなる譲歩を余儀なくされた。それでも運動は収まる様子がないという。すごい展開になってきた。
 《林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官は18日、記者会見を開き、刑事事件の容疑者を香港から中国本土に引き渡すことを可能にする「逃亡犯条例」の改正案について、事実上、廃案になるとの見通しを示し、政府としてそれを受け入れる考えを明らかにした。ただ、改正案の即時撤回に踏み込まず、自身の辞任も否定したことに民主派は反発しており、香港の混乱が収束するかは見通しにくい情勢だ。》(朝日)

 今回の香港の運動には応援したくなる好もしい点がいくつもある。
 まず、強力な指導組織なしにこれほど大規模な人々が動いていること。ここが雨傘革命の時との一つの違いだという。中国の影響力が及ぶマスコはあてにできないから、これに対抗するように、参加者がSNSでメッセージを広げていった。指導されずに自発的に運動が担われているのはすばらしい。
 大学生から中高生まで、若い参加者がたくさん参加していること。雨傘運動を彷彿とさせる黒い服で揃えたり、自分たちで工夫したポスターを作ってきたり、見ていて楽しい。
 新聞の見出しに「進化 香港デモ新世代」「雨傘運動の教訓『道路の占拠やめようよ』」(朝日新聞18日夕刊)とある。「警察に抑え込まれて挫折した『雨傘運動』の教訓を生かそうという若者たちの意識が随所に見られる」というのだ。200万人デモから一夜明けた17日、政府本部前の幹線道路を封鎖して座り込みをしていた若者たちが緊急集会を開いて議論。雨傘運動当時、数ヶ月にわたってこの道路を占拠し、市民の不満を招いたことを教訓に、「違法な道路の占拠は市民の支持を得られない」と近くの公園に移動したという。運動への支持を広げ、香港の世論をまとめ上げようという賢い対応に感心した。

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 道路が埋まった大群衆に救急車やバスが近づくと、人波がきれいに分かれて運行を助けるさまをテレビが放送している。マナーや倫理でもデモを乱暴に弾圧する当局側を凌いでいる。デモが繰り返されるなかで、香港市民の一体感、団結が強まっているのを見ると感動するし、ますます応援したくなる。

 デモのあとはきちんとゴミの分別も。大群衆の通ったあと、道路がきれいになっていたのには驚かされた。(フジTV  めざましテレビより)

過去最大 香港200万人デモ 救急車に道ゆずる“親切動画”が拡散 - FNN.jpプライムオンライン

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 識者の中には、運動の側の問題点や弱点を指摘するむきもあるが、私はいまは素直にがんばれ!加油!と激励したい。

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 周庭(アグネス・チョウ)さんが日本記者クラブでの会見の最後に手書きしたメッセージは「香港も、日本も、本当の民主主義がありますように」だった。香港を応援してくださいではなく、一緒に進みましょうというのだ。意味深い言葉だと思う。香港の若い人たちはたしかに「進歩」をとげている。

香港デモ こんどは4人に1人が街頭へ

 アスファルトの隙間にたくましく咲く黄色い花。

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 調べると、アラゲハンゴンソウ「荒毛反魂草」というごつい名前(別名キヌガサギク)の雑草だ。すさまじい繁殖力らしい。
 空き地に群生していると華やかで園芸品種のようだ。それもそのはずで、日本へは大正時代に観賞用として渡来し、その後野生化したという。要するに人が栽培しなくなると雑草とされるわけだ。人の都合である。
 きょうは満月。いい月だ。6月の満月をストローベリームーンというのがここ1、2年で流行りだした。アメリカ先住民は各月の満月に季節の名前をつけたそうで、6月がいちごの収穫時期であったことから、この名前がついたという。
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 香港では16日、なんと200万人が参加するデモがあった。香港人の4人に1人。

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 《香港の民主派団体は16日、「逃亡犯条例」改正案の完全撤回や林鄭月娥行政長官の辞任を求める大規模デモを実施した。主催者は200万人近くが参加したと発表した。前回9日の103万人を大幅に上回り、1997年の中国への返還以降で最大のデモとなった。林鄭氏は15日に改正を延期すると表明したものの撤回には応じず、市民の反発が強まった。林鄭氏は市民に陳謝したが、事態が収束するかは見通せない。(略)
 条例改正に反対するデモは4回目。中心部の道路が数時間にわたって大勢の人で埋め尽くされた。前回9日は主催者発表で103万人(警察発表は24万人)が参加し、政府は条例の改正延期に追い込まれた。今回、市民は完全撤回を求めて反発を強め、前週を上回る規模のデモとなった。計算上、香港市民の4人に1人以上が参加したことになる。警察発表では33万8000人だった。》(日経)
 「逃亡犯条例」改正案で香港の人が連想したのが、2015年の「銅鑼湾書店」の事件だったという。中国当局に批判的な本を並べた香港の書店の創設者や店主など関係者5人が次々に行方不明になった。いずれも中国で身柄を拘束されて尋問を受けていたことが後にわかる。1国2制度を露骨に否定する、怖い事件だった。
 中国当局に対する不信、恐怖が蓄積していたところに火がついた。民衆は9日のデモで条例改正の無期延期という譲歩を政府から勝ち取った。自分たちの力で政治を変えたという自信が、「延期」ではなく「撤回」をとさらに踏み込んだ目標に駆り立てたのだろう。この一連の運動は、参加した民衆の心に深く刻まれて、今後の運動に生きていくのではないか。
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 香港の事態は、若者の政治参加について考えさせるが、『東洋経済』に載った「ドイツの小学生が『デモの手順』を学ぶ理由」(高松平藏=ドイツ在住ジャーナリスト)という記事を紹介しよう。ドイツでは、子どものうちから政治に参加する意識を育成しているという。https://toyokeizai.net/articles/-/193857?page=3


 《若者による政治参加が活発な国として挙げられるのがドイツだ。言論の自由をおびやかすようなことがあると集会などがすぐに起こり、デモクラシー(民主主義)の健全性に敏感なお国柄である。日本との差は何によって生まれているのか。その1つに幼少期から受けている政治教育がある。》
 《政治に限らず、ドイツの教育はとにかく「喋る」ことに小学校から重点をおく。発言の有無が成績にもつながるため、堂々と意見を表明することが「ごく普通」に身に付いている。喋る中身は玉石混交だが、何でも発言できること、そしてそれが排除されないことが徹底されている。デモクラシーの基本は他者との自由な議論だが、その土壌が小学校から作られる。
 また、小学校で「抗議から社会運動までの手順」を学ぶ機会もある。たとえばマンホールから異臭がするという問題があれば、「まず市役所に言う。それで解決しない場合は地元紙の『読者の手紙』へ投稿する。それでもだめなら、社会運動を行う」といった内容だ。
 子供向けチャンネルのテレビ番組でも、町の公園に問題があると、子供たちが市長や行政の担当部署に掛け合うというようなことをドキュメンタリー番組で放送している。番組では最終的に改善される場合も、できない場合も紹介される。
 さらに、日本でいう中学校・高校にあたるギムナジウムでも政治教育は行われている。(略)ギムナジウムで学ぶ倫理やドイツ語、歴史、経済、社会といった科目は、現在世界で起こっていることと関連付けて学ぶカリキュラムとなっている。
 そのため、中学生に相当する学年の授業でも、教員が各政党の政策をコンパクトにまとめた雑誌の記事のコピーを前もって配布し、それを参考にしながらどの政党を選ぶか考える授業もある。これは歴史の教科での話だ。
 また、各自治体で大々的に行われているのが投票権を持たない18歳未満の「子供・若者選挙」だ。「18歳未満の子供と若者の選挙イニシアティブ」が行うもので、若者や子供の市民教育と政治参加の促進のために1996年から始まった。各自治体が同組織に登録して、各自の学校やスポーツクラブ、図書館などで投票を行う。9月の連邦議会選挙では21万人の「18歳未満の市民」が投票した。(略)
 若者が政治を身近なものと感じるきっかけとして、広場や歩行者ゾーンも重要な役割を果たしている。たとえば選挙期間中の週末には、各政党が市街地の歩行者天国になった道路や広場で情報ブースを設置し、党員や候補者が道行く人に政策を直接紹介し、対話を行っている。そこには過剰な握手やアピールはなく極めて自然体で、一見すると世間話をしているような雰囲気だ。また、選挙期間かどうかは別に、デモや集会もよく見かける光景だ。
 いうなれば公共空間が政治的な言論空間になっているのだ。日本では公共空間での政治活動といえば、選挙カーや右翼の街宣カー、昔の学生運動の過激な映像を想像するのか、拒否感をおぼえる人も少なくない。しかし、ドイツでのそれは拡声器でがなりたてるようなことはほとんどないし、暴動のような様相にもならない。》

 以上は抜粋だが、小さいころから政治教育に力が注がれている背景には、ナチス時代の反省が大きいという。わが国も戦後、言論の自由を奪ったうえで「お上」に従わせる以前の世の中を反省したはずである。ドイツの実践の一部でも、日本の教育の現場で採り入れられないものだろうか。

アグネス・チョウ(周庭)が語る日本への期待

 香港が心配だ。犯罪容疑者の中国本土への引き渡しを認める「逃亡犯条例」の改正案に反対する若者たちが、きのう12日、立法会(議会)周辺でデモを行った。警官隊が催涙弾を発射しデモ隊の一部と衝突、流血の事態となった。きょう、香港当局は、立法会の審議を行わないと発表した。審議をストップすることには成功したが、これに対し、当局がさらに大がかりな弾圧に出て、「第二の天安門事件」にならなければよいが。

 12日、「香港衆志(デモシスト)」の中心メンバー、アグネス・チョウ(周庭)さんが日本記者クラブで会見した。かつては政治に無関心だった香港の若者がなぜいま立ち上がっているのか。彼らの危機感がよくわかる。以下をご覧いただきたい。
https://www.youtube.com/watch?v=U8qpLjbKjEg&feature=youtu.be

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 このアグネス・チョウさんは5日のブログで紹介したが、アニメ好きが高じて独学で日本語を勉強したそうだ。https://takase.hatenablog.jp/entry/2019/06/05

 昨夜のTBS系「ニュース23」はアグネス・チョウさんをスタジオに招き、香港に村瀬キャスターを送って長い特集を組んだ。https://note.mu/news23/n/n002a50b6a574

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小川(MC):雨傘運動の仲間たちもデモに加わっているんですよね?
周(チョウ):警察は(催涙弾やゴム弾を撃つ)銃を向けました。人の足ではなく、頭に直接向けていたので、デモの参加者は殺されるかもという恐怖感がありました。血だらけのひとも出ています。
 香港人が見ると第二の天安門事件が起こるのではと、不安というより恐怖感がすごくありました。

(香港から村瀬キャスターが催涙ガスをもろに浴びながらリポート)

小川:気をつけて取材を続けて下さい。村瀬キャスターから「顔をマスクで隠してデモに参加している」という報告がありましたが?
:逃亡犯条例の改正案がもし可決されたら、デモの参加者は、顔を認識されると、国家安全法などの中国政府が作り上げた罪で、中国に引き渡されるかも知れないという危機感があると思います。
小川:その恐怖の中で、6月9日のデモは主催者発表で100万人以上が参加したと。香港の7人に1人が参加したことになるが、はじめて参加した人も多かったんですね?
:3~4割は人生で初めてデモに参加した人です。なぜこういうひとがいっぱい出てきたかというと、改正案が可決されると、もともと裁判が公平で自由な社会である香港の良さが全部なくなります。中国の一都市になるかもしれないと感じてしまいます。
 今回の改正案が影響するのは香港人だけではありません。香港に来る外国人(観光客、記者、ビジネスマンなど)も中国に引き渡されてしまうかもしれません。中国は自分の好きじゃないひとを色々弾圧します。
 だから今回はもう、人権や自由だけの問題ではなく、身の安全に関わる問題です。みんな今回のデモを最後の参加のチャンスだという「覚悟」を持ってデモに参加しています。
小川:ここを逃したら戻ることができない?
周:戻ることができないというか、香港はもう香港じゃなくなる可能性が非常に高いです。
小川:香港議会の審議は延期されましたが、星さん、いつ議会が開くか全く見通しが立たない状況ですよね?
星アンカー:力で押さえ込む動きがどんどん広まるでしょうけど、国際世論が香港の市民を応援していく必要があると思いますね。
国際社会の注目が私たちにとって非常に重要だと思います。イギリス・カナダ・アメリカ・EUも声明や懸念や反対の声をあげました。私が今回東京に来たのも、日本は香港と強い経済的パートナーですから、日本政府も自分の意見をハッキリ言っていただきたいという強い気持ちをもっています。
小川:今を逃したらあとがないという周さんの強い危機感が伝わりました。香港にいる皆さんも同じだと思います。周さんありがとうございました。

 

 NHKニュースはうって変わって、

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だったそうだ

 この大変な時期に緊急に来日して訴えるチョウさんたち。香港の若者は日本に大きな期待をしているのだが、政府は中国がらみの人権問題ではいつも腰砕けだ。与野党の政治家、文化人、財界人など世論をリードする人々が声を上げてほしい。
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 実は私は昨日夜のTVニュースを観ていない。高田馬場で、なつかしい「兄弟」に会っていた。

 竹本信弘さん、ペンネーム滝田修といえば「過激派の教祖」として還暦過ぎの人なら誰もが知っているだろう。
 指名手配(本人は今も無実を主張している)され、10年間の逃亡生活ののち1982年に逮捕となった。逃亡中、土本典昭(映画監督)、丸木位里(画家)、中村正義(画家)はじめ著名人を含む多くの人に匿われていたという。
 刑期をつとめあげて出てきたあと、竹本さんは初めての海外旅行でタイに来た。もう25年以上まえのことだ。そのときバンコクの私の家に1ヶ月ばかり滞在した。いかに自分が世の中を知らなかったかに気付いたと毎日楽しそうに過ごしていた覚えがある。連日つるんで遊ぶうち、私は彼に「兄弟」と呼ばれるようになっていた。素顔の竹本さんはとても素直で気持ちのやさしいひとである。https://takase.hatenablog.jp/entry/20181021
 去年、現上皇をたたえる『今上天皇の祈りに学ぶ』(明月堂書店)を出版。極左だった人がなぜ?と驚いたことはブログに書いた。
 きのうの新右翼団体「一水会」の講演会講師として招かれたのを『レコンキスタ』(一水会機関紙)で知って、お顔を見たいなと思いたったのだった。
 遅れて会場に着き、外で講演が終わるのをまっていた。すると、閉じたドアの向こうから大きなアジテーションのような声が聞こえてくる。もう79歳で、大病を患ったと聞いて心配していたが、元気な様子で安心した。

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 講演後、声をかけるととても驚き、喜んでくれた。二次会では、「このままでは日本は滅びる、どうしたら魂の震えるような世直しができるかを真剣に考えている」とテーブルを叩いて熱く語り、健在ぶりを見せていた。機会があれば、思想的な転回についてもじっくり聞いてみたい。

情熱大陸「ラフティング日本代表 阿部雅代」

 きょうは番組宣伝で失礼します。
 6月16日(日)よる11時、ラフティング日本代表の阿部雅代さんを主人公にした「情熱大陸」(MBS)がTBS系全国ネットで放送される。
 先月、オーストラリアに行ってきたのは、この取材が目的だった。

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 ラフティングはラフト(ゴムボート)で川を下るレジャースポーツで、私も子どもが小さい時、長瀞渓谷(埼玉県)で一緒にやったことがあるが、スリル満点でとてもおもしろかった。一方、競技としてのレースラフティングもあり、世界大会が開かれている。今年、オーストラリアでのワールド・ラフティング・チャンピオンシップスには19カ国から49チームが参加。日本の女性チームRiver Faceは、世界でも指折りの実力者で、オーストラリアの雄大な自然のなかで強豪たちと連日好試合を繰り広げた。
 ぜひご覧下さい。

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阿部雅代さん

《ジン・ネット便り》
情熱大陸」ラフティング日本代表/阿部雅代
ラフティングに恋した40歳。大自然の中、激流に挑む女たちの闘いに密着!

 渦巻く激流、急流を「ラフト」と呼ばれるボートに乗った4人ないし6人が一丸となってコントロールし、タイムと技術を競うスポーツ「レース・ラフティング」。日本女子代表としてこれまでに世界選手権に11回出場し、2度の優勝を勝ち取った日本が誇る“女王”が阿部雅代(あべ・まさよ)だ。
 阿部が所属するのは日本一の激流と言われる徳島県吉野川に拠点を置くラフティング女子チーム「THE RIVER FACE」で、メンバー全員がアマチュアなため普段はツアーガイドや病院職員などそれぞれの仕事を持ちながら練習を続けている。
 チーム最古参でキャプテンの阿部はメンバーからは「昭和のお父さん」「沈黙の阿部」とあだ名されるほど寡黙な女性だ。目立つことを好まず、ひたむきにラフティングに全生活を傾けている。
 地元の支援者はいるものの、道具の購入や維持、遠征費用もほぼ自腹。優勝したからといって1円の賞金が出るわけでもなく得られるのは「名誉」という勲章だけだ。
 番組では今回、世界19カ国からトップアスリートが集結しオーストラリアで開かれた世界選手権で2連覇に挑む阿部に密着した。女6人、呼吸を合わせて激流に挑むが、果たしてその結末は?
 大自然を五感で存分に味わうことができる天然のジェットコースターとも言われるラフティングの知られざる魅力と、ラフティングに恋した40歳の‟最後の戦い”を追う。

香港で大デモ 7人に1人が街頭へ

 香港がすごいことになっている。
 先日の天安門事件30年のデモが過去最高の盛り上がりを見せたのに続いて、きのうは103万人(警察発表24万人)の巨大デモがあった。香港始まって以来、おそらく今世紀アジアでは最大の規模のデモだ。香港居住者は750万人だから、割合からいうといかに多くの住民が参加したかが分かる。

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 スローガンは「反送中(中国に身柄を送るな)」と「林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官は辞任せよ」。12日から立法院で審議が始まる予定の、中国本土への容疑者引き渡しを可能にする「逃亡犯条例」改正案に反対し、中国政府の操り人形である行政長官の辞任を求めている。容疑者を中国に送ることが可能になると、恣意的な法律の運用で、当局に政治的に睨まれた人が本土に移送されかねず、言論の自由も奪われると危惧されている。香港在住の外国人もその対象になる。
 香港の民主活動家のリーダー、ネイサン・ロー(羅冠聡)氏のツイッターの動画を観ていただきたい。とても数万という規模ではないことがよくわかる。この動画、深夜24時までにすでに135万回以上再生されている。ぜひご覧ください。
https://twitter.com/nathanlawkc/status/1137739247874478081
 ロー氏がProud to be HongKonger!(中国人ではなく)香港人としての誇りを!と訴えている。中国が香港に「中国化」の圧力をかけ、香港の行政トップを親中派で固めてきたが、それが強い反発を受け、香港人としてのアイデンティティが強まっている。ちなみにHongKongerは「ホンコンジャー」と発音するらしい。
 こういうデモを見ると、私などは「民主的だな」と思うのだが、日本の若い人のなかには、デモや集会というのは「やってはいけないもの」だと思っている人が少なくないようだ。
 香港はこれからひと波乱ありそうだから、要注目。
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 大デモといえば、先週ロンドンでもあった。
 イギリスを訪問したトランプ大統領に反対するデモである。以下、TBSニュースから。
 《国賓としてイギリスを訪問中のアメリカのトランプ大統領がメイ首相と会談し、EU離脱後のイギリスとの貿易に期待感を示しました。一方、市内では大規模な反トランプデモが行われました。
 4日、メイ首相と会談したトランプ大統領は会見で、EU離脱はイギリスにとって良いことだと強調し、EU離脱後に2国間で締結する貿易協定で、貿易の規模が2倍から3倍になるとの期待感を示しました。
 「こちらは温暖化対策を求めるプラカードですが、さまざまな主張の人たちが反トランプの声をあげています」(記者)
 一方、ロンドンでは大規模な反トランプデモが行われ、トラファルガー広場が参加者で埋め尽くされました。
 「この国が積極的に受け入れてきた移民やLGBTなどの少数派に彼は反対している」(デモ参加者)
 議会前には、トランプ大統領をおむつをつけた赤ちゃんに見立てた巨大風船も登場しましたが、当の本人は・・・
 「デモなんてどこでやっている?ここに来るとき見たが、ほんのわずかだった。大規模デモなんてフェイクニュースだ」(トランプ大統領
 トランプ大統領はデモに参加した最大野党・労働党のコービン党首からの面会要請を断り、EU離脱党のファラージ党首と会談しました。》(TBSニュース)https://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye3691598.html

 日本ではトランプ大統領をゴルフから大相撲見物までの「おもてなし」で迎えた。
 そして安倍内閣の支持率は高水準なので、参議院選挙単独でも勝てると、衆参同日選は見送りになる見込みだそうだ。
 みんなが声を上げなくなったら、民主主義はおしまいになる。大規模デモが起こる国がうらやましい。

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トランプはNG(ノーグッド)のスローガンを掲げる子ども。小さいうちから政治参加を教えるのだそうだ。

 

「男らしさ」と犯罪

 森は友海は父母なり初夏の風  (新宮市 中西 洋)
 新緑や神のパレットゆ滴るか  (前橋市 木部敬一)
 朝日俳壇より。初夏の自然との楽しいふれあい。ともに大きなスケールの句で気持ちがいい。1句目は、命の源がみなつながっていることを感じさせる。2句目、「ゆ」は「から」の意で、緑の美しさが恩寵のように思われるのをうまく表現していると思う。
 でも歳のせいか、「老」につながる俳句にうなずくことが多い。
 見るだけの山となりけり登山帽  (横須賀市 佐藤博一)
 歌壇では、
 座る椅子ひとつになれど母はまだ四つの椅子を並べて暮らす (丸亀市 金倉かおる)
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 元農水事務次官の熊澤英昭氏(76)が息子を殺した事件。息子の英一郎氏(44)は引きこもりで両親への暴力行為もあり、英昭氏は、引きこもりだった岩崎隆一容疑者(51)が起こした川崎20人殺傷事件が「頭をよぎって」殺害したと報じられている。殺人事件としては、英一郎氏はあくまで被害者で、英昭氏は殺人者だということは分かっているが、どちらも大きな苦しみの中にあったと想像する。逮捕された英昭氏のすべてを観念したような表情をみて余計に痛ましさがつのった。

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 中高年引きこもりが注目され、引きこもりを支援する行政の窓口やNPOには相談が殺到しているという。引きこもりを危険視する傾向に対し、女優の東ちづるツイッターで警告した。

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 東ちづるは好きな女優でフォローしているがこれは正論である。
 
 引きこもりは英字新聞でも”hikikomori”と記され、extreme recluseと訳されている。Recluse は「隠遁者」「世捨て人」の意味で、それに「極端な」という意味の形容詞extremeがつく。日本で問題になる背景に社会の同調圧力を指摘する記事もある。
 《他の国々でも引きこもりは見られるが、一番はっきり表れているのは日本で、それは、みんな同じということを強調する文化が、適応できない人を引きこもりに追いやってしまうからだと専門家はいう》(NY Times June 6)
 While there are extreme recluses in other countries, experts say the condition may be most pronounced in Japan, where a culture that emphasizes conformity prompts those who do not fit in to hide away.
https://www.nytimes.com/2019/06/06/world/asia/japan-hikikomori-recluses.html
 日本社会の病理が個々人を傷つけた結果が引きこもりであって、本人や家族が「責任」を問われるものではないと思う。

 また、川崎事件の後とあって、メディアでは18年前の6月8日に起きた池田小事件を振り返る企画も見られた。(11年前の同じ6月8日には秋葉原通り魔事件も起きている)
 池田小事件の犯人、宅間守が精神病院に入院歴があったことから精神障害者が犯罪を犯しやすいとの偏見が広がり、精神障害者と家族を苦しめた。これについて作家の森田ゆり氏が、精神障害者の犯罪率は低く、犯罪率が高い属性は「男性」だと論じている。

 《精神障害者が犯罪を起こす率は低いのです。検挙された一般刑法犯に占める精神障害者の比率は1・5%です。収入や学歴が低いと犯罪を起こしやすいかと言えば、そんなことはありません。外国人の犯罪率が高いというのも誤解です。犯罪者プロファイルを特定することは統計的にも困難なのです。
 犯罪者のプロファイルの唯一の特徴的なことは、それが男性だということです。犯罪者は男性が圧倒的に多いことを、人は半ば当然のことのように知っています。新聞やテレビで報道される殺人、強盗、詐欺、窃盗の多くの容疑者は男性です。統計を見ると、その事実はいっそう明らかになります。刑法犯検挙人員の女性の割合は、1975(昭和50)年以降は、ずっと全体の2割前後となっています。》 
「池田小事件・宅間守の女性蔑視と大量殺人を生んだ「男らしさ」の呪縛」
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/65074


 問われるべきは、今の社会のジェンダー規範だという主張には虚を突かれた。自分たちの中にある意識せざる価値観や規範、それを形成した社会に意識を向けるとき、犯罪というものが違った形に見えてくる。

 

シリアで勝利しつつある「殺戮の主犯格」

 東京都心では昼からどしゃぶりの雨。きょうから関東甲信越で梅雨入りだそうだ。

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 何だ、このサツキは?穴あきブロックから必死に表に出て咲いている。ちょっと笑える風景。
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 今週、印象に残ったツイートから。
 軍事ジャーナリスト、黒井文太郎さん。

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 アサド政権は支配を取り戻した町や村に避難民の帰還を呼びかけているが、人々はなかなか故郷に戻らない。戻ると捕まって拷問され、そのまま刑務所に入れられるケースも多いからだ。
 シリアではアサド政権軍が多くの地域で反政府武装勢力を駆逐し、軍事的にはほぼ決着がついたように見える。この情勢を前に、内戦を終わらせるためにはアサド政権でいいではないかという意見がある。しかし、そもそもシリア問題とはアサド政権の非道をどう終わらせるかなのだった。
 黒井さんは「どっちもどっち」論に陥らないよういつも警告を発している。シリア情勢では、彼の見方が説得的だ。

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 国境なき医師団の白川優子さん。
 彼女は自らの著書『紛争地の看護師』で、医療施設がアサド政権軍とロシア軍から爆撃された体験を書いている。そして、それは誤爆ではなく、明らかに病院を狙った爆撃だった。https://takase.hatenablog.jp/entry/20180913

 いま、反政府勢力が押し込められているイドリブ県ではすさまじい無差別殺戮が進行中だ。

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 シリアでアサド政権の非道を目撃してきたジャーナリストの桜木武史さん。
 アサド政権を「殺戮の主犯格」と呼ぶ。去年出版した『シリア戦場からの声』、お薦めです。

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 安田純平さんはきのう6日、帰国して旅券を申請したが5カ月間発給されていないと公表した。

 ジャーナリストの常岡浩介さんへの旅券返納命令では、30人の有志によるアピールに私も名を連ね「海外渡航の自由が著しく制約され、取材の自由や、市民の知る権利も奪われかねない深刻な状況だ」と国側の行為を強く批判した。
 とくにフリーランスの行動をしばろうという意図が目につく。このままでは報道環境が非常に閉塞したものになっていき、国がおかしくなる。狙われているのはフリーランスだが、メディア企業の報道人が声を上げないのが残念だ。

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 9日(日)のNスペで「天安門事件 運命を決めた50日」が放送される。

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 《中国政府の発表で「反革命動乱で319人が死亡した」とされている天安門事件
 30年たった今も、中国では事件に触れることはタブー視されていて、民主化を求める丸腰の市民を、なぜ、どのように武力で鎮圧したのか、詳細はわからないままだ。
 今回、NHKはその真相に迫ろうと、中国や世界各地に当事者を訪ね、新たな史料を探し出した。そこから見えてきたのは、事件の前から周到に配置されていた軍の姿や、政権内部の権力闘争の一端だった。さらに、西側各国の外交文書からは、欧米の指導者が改革開放を進める中国との経済関係を重視し、表向きは非難しながら、水面下で緊張関係の回避を図ろうとしていた実態も浮かび上がってきた。
 天安門事件による民主化の挫折は、中国の人々に深い傷を残し、その後共産党が強権的な一党支配を進める素地を作ったと言われる。
 番組では、大国・中国の運命を決めた50日間を再検証し、天安門事件めぐる数々の謎に迫る。》
 ぜひ観なくては。