最近、KADOKAWA、アサヒビール、アスクルなど日本の企業が大規模なサイバー攻撃で深刻な被害を受けている。そのサイバー攻撃が、北朝鮮の軍事的脅威を支えてもいるという。
北朝鮮の朝鮮中央通信が先月23日、「(きのう)ミサイル総局が重要兵器システムの実験に成功」し、感興北道の目標地点に着弾したと発表。これは「極超音速滑空体」(HGV:Hypersonic Glide Vehicle)と見られる。

これは弾頭部分にあたる滑空体(HGV)が途中でロケットから分離され、ロケットエンジンなどの推進力を使わずグライダー飛行するというシステム。極超音速(マッハ5以上)で大気圏内を低空で上下左右に複雑に機動しながら目標に向かう。
従来の弾道ミサイルでは、高い高度で弾頭がブースターと切り離されて慣性で落下、放物線を描いて落ちる。極超音速滑空体はこれと違って、低空で接近するのでレーダーの探知が遅れるのに加え、軌道予測が難しく迎撃は極めて困難とされる。
北朝鮮の核・ミサイル技術が、急速な進歩を遂げていることは間違いない。この核・ミサイル開発を支えているのがサイバー攻撃だという。
暗号資産ビットコインをハッキングで大量に獲得し、いまや北朝鮮は世界第3位の保有国になっていると報じられている。

暗号資産の大手取引所でハッキング事件が発生し、北朝鮮の保有量が急増したという。かつては、私も取材した偽ドル札「スーパーノート」が知られていたが(拙著『スーパーKを追え』旬報社)、北朝鮮の不法な資金稼ぎも様変わりしているようだ。
また北朝鮮はサイバー攻撃によって、資金だけでなく、韓国の防衛産業関連の情報や中国のドローン技術まで盗み取っていたという。
日米韓など11カ国が設立した北朝鮮の制裁逃れを監視するMSMTチームは、先月22日、報告書The DPRK’s Violation and Evasion of UN Sanctions through Cyber and Information Technology Worker Activities(「朝鮮民主主義人民共和国のサイバーおよび情報技術労働者の活動を通じた国連制裁違反と回避」)を発表。
北朝鮮がサイバー攻撃で去年1月から今年9月までに、世界中の企業から約4200億円相当の暗号資産を盗んだと推定した。
報告書の第5章「DPRK(北朝鮮)の悪意あるサイバー活動と防衛産業基盤(DIB)への標的化」の冒頭には以下のように記されている。

「北朝鮮は、国連安保理決議1718、1874、2087、2270、および2321が北朝鮮による核技術およびデュアルユース(軍民両用)技術へのアクセスを広く禁止しているにもかかわらず、米国、英国、韓国、その他のMSMT(注)参加国および国連加盟国から、原子力発電所、施設、資材、軍用ドローン、潜水艦、造船に関する情報を入手しようと試みている。北朝鮮朝鮮は、韓国と英国から、半導体、ウラン処理、防空システム、ミサイル、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)に関する設計を盗み出し、その後、これらの技術を導入している。2023年に北朝鮮が打ち上げた偵察衛星からは、盗まれた韓国製の光学機器と打ち上げ機技術が確認された。北朝鮮は、盗んだ韓国のコールド・ローンチ技術を用いることで、潜水艦発射弾道ミサイルの開発期間を短縮した」
https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/100922718.pdf
(注)MSMT =Multilateral Sanctions Monitoring Team (多国間制裁監視チーム)とは、安保理決議に基づく対北朝鮮制裁の履行状況を監視し、報告する役割を担っていた安保理北朝鮮制裁委員会(1718委員会)の専門家パネルが、ロシアの拒否権行使により活動を停止したことを受け、日本、米国、韓国など有志国11か国によって、その監視機能の空白を埋めるために立ち上げられた代替メカニズム
MSMTの監視国は、国連安保理に対し、再び専門家パネルを設置するよう求めている。
国際的監視が緩んだ北朝鮮は、不法なサイバー攻撃を大規模に行うことで核・ミサイル技術を急速に進歩させている。この現象をもたらした大きな要因がロシアによるウクライナへの全面侵攻であることをあらためて確認したい。