北朝鮮は「やったもの勝ち」

takase222017-08-16

 夜、虫の音が聞こえるなと思っていたら、もう立秋だった。ここから暑さは残暑ということになる。
 8月7日からの初候は「涼風至」(すずかぜ、いたる)。次候は12日からで「寒蝉鳴」(ひぐらし、なく)。末候は「蒙霧升降」(ふかききり、まとう)で18日から。
 秋の語源は「収穫が飽き(あき)満ちる」、「空が清明(あきらか)」、「草木が紅く(あかく)なる」などと言われているそうだ。まわりの気配の変化を楽しむ余裕をもちたいものだ。
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 北朝鮮がグアム近くに4発のミサイルを撃ち込むと宣言し、トランプがこれにヤクザ同然の脅し文句で応じたことから、連日ニュースは米朝の軍事衝突の危機を報じている。
 今の状況をどう見ればよいのか。山田文明さん(北朝鮮帰国者の生命と人権を守る会代表)の見解を紹介しよう。北朝鮮にかかわる実践活動をしている人こそ、本質を見ているものだから。
 
 《北朝鮮の核開発を阻止する努力は、成功か失敗かの結論を出すときに来たのだ。
 これまでの経過を評価するなら、全体として、北朝鮮の核・ミサイル開発を阻止するための世界の対応は失敗し、金正恩は彼らの長年の念願であった核攻撃力を獲得するところまで到達した。
 北朝鮮の現状をこのまま放置すれば、核不拡散条約の有効性を崩し、東アジアの安全保障条件を大きく変えるところに差し掛かった。過去の延長線上の対北朝鮮政策が継続され、事実上北朝鮮を核保有国として認めることへ進むのか、それとも何らかの仕方で北朝鮮の核開発を阻む手段をとるのか、重大な分岐点に立つことになった。
 北朝鮮は一貫して核・ミサイル開発を継続すると表明している。事実これまでの外交交渉や国連決議・制裁にもかかわらず、開発を続けてきた。あと2・3年で米本土に届くICBMに核爆弾を搭載して実戦配備し、潜水艦発射ミサイルにも核を搭載し、目標としてきた核攻撃力を完成すると予想される。米国はICBMの開発と核の小型化をレッドラインだと述べてきた。
 米国が言う「レッドライン」後の意味するものが「何か」は明確ではない。米国が進む道は大きく二つ考えられる。
 一つは、米国本土への核攻撃力を完成させると判断すべき実験を行ったとき、北朝鮮のミサイル施設を攻撃して破壊する軍事行動の道だ。
 もう一つは、米国が北朝鮮政策を抜本的に転換し、ロシアや中国との全面対決を避けてきたように、核攻撃力をもった北朝鮮とも全面対決を回避し、核保有を容認する道だ。
 この場合、極東における米国の核の傘は後退し、日本と韓国はロシア、中国、北朝鮮核の傘に入ることになる。なぜなら、通常兵器を使った日韓への局地的な軍事攻撃など万一の事態が発生したとき、米国民の安全に第一の責任を負う大統領が自国への核攻撃を覚悟して日韓の安全保障のために北朝鮮に対する軍事行動を起こすことは考えられないからである。
 北朝鮮を軍事攻撃して核を破壊するか、それとも核保有国となった北朝鮮を受け入れるのか、私たちは今その分岐点にきている。2・3年の間に答えが出ているだろう。》(機関誌『かるめぎ』114号)

 この見方に賛成する。現実としては、北朝鮮は「やったもの勝ち」となっており、アメリカ(を含むいわゆる国際社会)は負けたのである。
 この段階にいたってみると、アメリカの北朝鮮への軍事攻撃はあまりにリスクが大きく、肝心の米軍中枢も強く抑制するだろう。また、中国によるお付き合い程度の制裁では北朝鮮を翻意させることはできない。となると、北朝鮮を阻止する手段を持たないアメリカは、北朝鮮を核保有国として認める可能性が高いのではないか。
 ああ、戦争にならなくてよかった、とほとんどの人は思うだろうが、北朝鮮を核保有国として認めることは、これはこれで大変な問題なのだ。それについてはおいおい書こう。