内モンゴルで新カリキュラムに抗議広がる

 米国がトランプ大統領のせいで激しく分断されている。マスクをした人がトランプ支持派から「民主党!」と罵られるほどに。あらゆる判断が「立場」の問題に矮小化されていく危険な社会状況だ。

 日本も安穏としていられないと思ったのは、きょう、在日韓国人のグループと食事をしたときだ。ある人が、最近、議論していると、「あんたは在日だから反日なんだよ」などと言われる機会が増えたと言った。考えてみると、たしかに、10年前、20年前は「反日」か「親日」かということを今ほど耳にしなかったと思う。

 安倍長期政権の評価はいろいろあろうが、米国と同様、社会の分断が進んだ点は大きな負の遺産として残ったと思う。トップリーダーが、自分にとって敵なのか味方なのかを最重要にした政治を行うとこうなるという悪い見本である。

 「お友達」ならどんな悪事をやっても罰せられず、逆に出世する。街頭演説で「安倍やめろ!」とヤジをとばすなり大人げなく「こんな人たちに負けるわけにはいきません」と指さし、以来、ヤジを飛ばせば警察に「保護」されるという時代錯誤がまかり通るようになる。官僚にもどうやったら官邸の気に入られるかと忖度する風潮が広がる。

 「親安倍」、「反安倍」の分断はメディアにもおよんだ。公文書を捏造することはどうなのかと考える前に、「親安倍」か「反安倍」かの立場が先に立つ。これでは政治の世界でも、是々非々の判断はできなくなる。

 これが一つの時代の傾向にまでなってきた以上、この後始末は相当な「仕事」になるはずだ。これからの政治家が試されるポイントにもなるだろう。
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 中国が、チベットウイグル(新疆)につづき、内モンゴルでも民族文化の解体に乗り出したようだ。突然9月から小中学校でモンゴル語ではなく漢語で授業をすることが命じられたのだ。

 《【9月2日 AFP】中国北部の内モンゴル自治区で、少数民族文化の抹消につながるとの懸念が上がっている学校の新カリキュラムに抗議する異例のデモと授業ボイコットが行われ、数万人が参加した。地元住民らが1日、明らかにした。
 内モンゴル自治区では突然の政策変更により、少数民族系の学校すべてに主要科目をモンゴル語ではなく標準中国語で教えることが義務付けられた。同様の措置はチベット新疆ウイグル自治区でも実施されており、各地域の少数民族を多数派の漢民族に同化させる狙いがある。》

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モンゴルのウランバートルの外務省前で隣接する中国の内モンゴル自治区の教育方針変更に抗議する人々(8月31日AFP)


 現地の学校の前で抗議する生徒たちの動画がある。

 

 東京の中国大使館前でも抗議活動があったと、友人がFBに挙げていた。

www.facebook.com

 先日お伝えしたように、香港でも9月からの教科書を急に変更したが、中国当局は同化・統合を一気に強化しようとしているのだろうか。

 きのう、たまたま再放送されたNHKの「シルクロード」を観ていた。
 「第6集 流砂の道~西域南道2000キロ」で、ローランの西南の崑崙山脈に近いチェルチェン・オアシスにウイグル民族が登場した。
 チェルチェンは人口6万5千で8割がウイグル人だと紹介され、「歌と踊りが好きな陽気な民族」のナレーション。

 取材班はチェルチェン第一小学校で「熱烈歓迎」される。

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取材班を歓迎して踊りを披露するウイグル人児童(第一小学校)

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ウイグル人は遊牧の民である

 この「第一小学校」はウイグル人専用でウイグル語で授業が行われ、中国語が教えられるのは4年生からだと説明される。漢族はこことは別の「第二小学校」に通うという。ちゃんと民族語での教育がやられていたのだ。

 この取材は1980年か81年だが、今とははっきり違っていたことが画面からわかる。
 カメラに向かって笑顔を見せていた子どもたちは、いまどうしているだろうか。