きょうまででガザの犠牲者が3万6586人になったとの発表。
ガレキの下に埋まり、重機もなくそのままにされた人が1万人以上いると推定されるから、実際の犠牲者は5万人に近いだろう。けが人はその数倍になるはずだ。視力や聴力を失い、四肢に障害を負い、心を病んだ膨大な人が治療を必要としているのに、イスラエル軍は医療サービスを破壊するという非道。だが、ガザだけではない。
同じパレスチナのヨルダン川西岸地区で、ユダヤ人入植者とイスラエル軍による人権侵害、土地の収奪、殺害が激増しているという。ガザに世界の目が集中している今を狙った火事場泥棒のような乱暴狼藉の前に人々はなすすべもなく暴力にさらされている。
ヒューマンライツウォッチのサリ・バシさんはユダヤ人の弁護士で、パレスチナ人の保護、支援に20年近く奔走してきた。
日本ができる支援はあるのか?彼女はこう言った。
「国際法は一貫性をもって適用しなければならない」とアメリカに伝えることです。
岸田首相、あなたの出番です。バイデン大統領との共同記者会見で「今こそ日米両国がグローバルなパートナーとして真価を発揮すべきときである、人間の尊厳が守られる世界を作る責任を共に果たそう、日本は常に米国と共にある」などと見得を切ったのだから、ここは「国際法のダブルスタンダードはやめなさい」とビシッと言うべきだ。
長崎は夏の平和祈念式典にイスラエルを呼ばないことにしたが、広島市の松井市長はロシアとベラルーシは呼ばないがイスラエルは招待するという。ここにもダブルスタンダードが。
広島にイスラエルを来させないことも日本ができるガザ支援だ。広島市役所に声を届けよう。広島市民はがんばって!
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横田めぐみさんの父・滋さんが亡くなってから5日で4年が経つ。
4日、母の早紀江さん(88)が報道各社の取材に応じた。
《北朝鮮が再調査を約束した「ストックホルム合意」から今年で10年。「何の前進もなく、本当にむなしい」と語り、拉致被害者全員の即時帰国を改めて求めた。(略)
早紀江さんは合意当時の心境について「2、3年すればまた何人か帰ってくる、という淡い期待をもっていた」と明かし、「肝心な拉致被害者の状況がわからない。なんでこんなのんきなんだろうという思いが一番大きいです」と胸の内を語った。
拉致問題に進展がない中で被害者家族の高齢化が進み、20年には滋さんが87歳で亡くなった。
「当初はがんばらなくちゃという気持ちが強かったが、ちっとも動かない。むなしい思いと、お父さんも帰ってこないという思いが交錯して、寂寥感が強くなっています」
めぐみさんは今年10月に60歳になる。「めぐみちゃんの姿が見えないことが横田家にとっては悔しい。きちんと話し合いができる状況をつくってほしい」と日朝の対話を訴えた。》(朝日新聞5日朝刊)
早紀江さんの心情を聞くと、いたたまれない気持ちになる。
「拉致被害者全員の即時帰国を改めて求めた」とあるが、これは「救う会」の方針だからそう言わざるを得ないのだろう。ただ、ストックホルム合意のとき、「2、3年すればまた何人か帰ってくる」のではと期待したと語る。何人か、また何人か、というふうに、もどかしくても苦しくても、一歩一歩相手の妥協を引き出していく外交交渉をやっていくことが結局は早道だと思うのだが。
北朝鮮に対して「全拉致被害者の即時一括帰国」をいわば「入口」に置いて、さあ、これを吞むのか吞まないのか、これ以外は日本は受け付けないぞ、とやるのは、もう外交交渉ではない。実際、「救う会」、「家族会」はそもそも北朝鮮と外交交渉をする必要がないと言っていたのである。残念だが、これでは拉致問題が進まないのは当たり前である。
成果を上げられずに10年がたったストックホルム合意だが、あの当時の状況までもう一度戻すことはできないのか。そして北朝鮮の「報告」を受け取り、日本政府が田中実さん、金田龍光さんにすぐに面会して・・と失われた10年を取り返すことはできないのか。
その可能性を探るため、ストックホルム合意に至る過程をもう一度振り返ると、横田滋さん、早紀江さん夫妻が大きな役割を果たしていたことが見えてくる。
そしてそこにはある仕掛け人がいた。
(つづく)