小池百合子学歴詐称疑惑によせて⑤

都知事選が始まった(テレ朝ニュース)

 東京都知事選挙の真っ最中で、小池百合子都知事が「AIゆりこ」をバージョンアップしたとのニュース。この人、つねに話題を提供し続けるのはすごいな。

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 小池氏は少子化対策として、保育料無償化の拡大や無痛分娩の助成制度の創設、大学給付型奨学金の創設などを公約に挙げた。これらはけっこうアピール度が高いと思う。選挙民の関心のツボを押さえている。

 2020年に再選を目指した都知事でも、小池氏は耳に心地よいいくつもの公約を掲げたが、それはどうなったのか。その一つだったドクターヘリDH事業に『週刊文春』(6月13日号)が切り込んだ。

週刊文春6月13日号

 DHは医師や看護師を乗せて傷病者のもとへ向かう救急医療用ヘリコプター。

 DH事業は「東京大改革2.0」のなかで、街づくりの一環として小池氏肝いりの政策だった。杏林大学医学部付属病院が医師・看護師を派遣する「基地病院」となり、入札の結果、DHの運航は学校法人ヒラタ学園に委託された。

 しかし、DH就航から2年、「異常なキャンセル率の高さ」「安全意識の欠如」という大きな問題が浮かび上がった。

 都のDHの運行回数は1360回。うち患者を運んだのはわずか306回で、患者を運ばずに戻ってきたキャンセルが1054回だった。キャンセル率は77,5%、約8割になる。東京都をのぞいた全国平均のキャンセル率は18%で、東京の異常さが分かる。

 ヒラタ学園の落札の経緯も不透明。DH事業の入札は、都から委任されて杏林大医学部付属病院が2021年に公募、入札に参加した3事業者のうち、ヒラタ学園が1億9520万円という破格に低い金額で落札した

 ところが実際にヒラタ学園に支払われたのは2億6504万円。ヒラタ学園に支払われる金額は、年間飛行時間を基準に算出されており、飛べば飛ぶほどもうかる仕組みになっている。本来、入札時に想定した金額よりも高くなれば「契約内容の変更の合意」が必要だが、それを行っていないという。

 ヒラタ学園電気店経営から身を起した平田勇理事長が一代で築きあげ、パイロット養成などの専門学校を運営、2003年に和歌山県で初めてDH事業をスタートさせ、その後、事業を急拡大させてきた。そのヒラタ学園のヘリは事故が多いと問題になっているという。

 09年沖縄でエンジン停止による不時着、17年には兵庫県で衝突事故を起こしかけ、同年、神戸空港でヘリ横転事故を起こした。DHに登場経験のある元パイロットは、ヒラタ学園を「航空業界のビッグモーター」と呼ぶ。

 5月28日、国交省大阪航空局は、ヒラタ学園に「事業改善命令」と「警告書」を出した。耐空証明の有効期限が切れた機体からの部品の流用、不具合を解消しない状態での運航など30項目におよぶ不正を指摘。その上でDHなどの公益性が高い事業を実施するために十分な予備品が配備されていないと非難している。

 この事業改善命令から3日後、ヒラタ学園の小型プロペラ機が神戸空港で訓練中に胴体着陸し、滑走路が5時間にわたって閉鎖、34便が欠航した。国交省運輸安全委員会による調査や兵庫県警の捜査が始まる異常事態となっている」週刊文春P21)

 ずさん極まりない管理体制のヒラタ学園に、命を守るDH事業を任せていいのか。

 記事は血税2.7億円を投じた肝煎り事業。小池知事のワイズスペンディング(賢い支出)の掛け声がむなしく響く」と結んでいる。

 小池都政カネがらみの疑惑が多い。
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(前回のつづき)
 小池百合子東京都知事学歴詐称疑惑が再燃したきっかけは、元側近の小島敏郎が、月刊『文藝春秋』5月に寄稿した手記『「私は学歴詐称工作に加担してしまった」小池百合子都知事 元側近の爆弾告発 緊急特集 都知事の「ウラの顔」』だった

文春5月号

 側近だった小島氏が小池氏と決別するのは、経歴詐称を乗り切るための自分のアドバイスがみごとに功を奏して再選、その結果、小池氏が変節していったのを見たからだった。

再選を果たした小池さんはその後、目に見えて変わりました。(略)改革路線から、自民党公明党、都庁官僚と手を組む都政運営に完全にシフトしたのです。(略)

 それにしても小池さんは、何故こんなに変わったのか。改革をやめ、自民党に気を遣うようになったのは何故なのか。いずれも再選を機にした変化です。》(P100-101)

 すべての答えは、学歴詐称疑惑の追及で窮地に立たされたことにあった。その「秘密」を守り、追及を封じるために変身したのである。

 ここから小池氏は権力の亡者になっていったと小島氏は見る。

都知事の座を去り権力を失えば、自分の秘密を守ることも難しくなる。それゆえ、小池さんは、都議会多数派と足並みをそろえ、都庁官僚の支持を得て、権力を持ち続けること自体が最優先になっています

 たとえば、と小島氏が挙げるのは、明治神宮外苑の再開発問題

 坂本龍一が亡くなる直前に見直しを求める手紙を小池氏に送った。しかし小池氏は事業を施行認可する立場であるにもかかわらず、小池氏は会見で、都は何もできないので「事業者の明治神宮にも手紙を送られた方がいい」と門前払いにした。

 築地市場の跡地の再開発をめぐっては、「5万人収容の多機能施設」や「アニメ・ゲームなどに特化したエンタメ施設」などが報じられているが、実際どのような施設になるのか、議会や都民に一切説明をせず、知事周辺だけで決めようとしている。

 東京五輪の開催では、国内スポンサーからの収入は3761億円に上り、うちIOCJOC電通の取り分は総額1077億円だった。それらは適正な金額だったのか、どこにいくら入ったのか。東京都は五輪組織委員会に監事を送り込んでいたが、言を左右にして説明していない。

 異論を許さない強権的な体質は、都民ファも同じ。22年度、都立高校の入試で英語のスピーキングテストが導入された時、ベネッセコーポレーションが運営に携わり、採点はフィリピンの子会社が請け負うなど、採点の不透明さが問題視され、さらに受験生によって不平等なシステムであることも指摘されて、3人の都民ファの議員が反対した。すると3人は除名処分にされた。テストはトラブルが多発して、わずか2年でベネッセは撤退を決めた。

 都議会では、小池氏は野党の質問には答えず都民ファ議員はヤジを飛ばすだけ。都庁幹部も小池流の紋切り型の答弁を繰り返すだけで、議会は熱議、討議の場ではなくなっている。

《小池さんは一時、国政への復帰が噂され、さらには次の総理候補としても取りざたされていました。意を決して、私が手記を発表しようと思い立ったのは、このままでは、日本の政治が危うくなると感じたからです。民主主義を守りたい、そのために力を尽くしたい、と。》(5月号P107-108)

 小島氏は小池氏が「ものすごい勢いで都の金をばらまいて」いること憂慮する。

選挙対策であり、単に自分がスポットライトを浴びたいからでもあります。23年1月4日の都庁職員を前にした挨拶では突然、「子ども手当をひとり一律5千円支給する」と宣言しました。その日の午後に岸田文雄総理が行うスピーチで「異次元の少子化対策」について語るとの情報を掴んだからです。「総理よりも目立ちたい」という欲望から、何の熟慮もなく、思いつきで言ったのです。

 東京は国より財源が、ずっと豊かです。小池さんはそのことに都知事になって気づき、ある時、私に嬉しそうに言いました。

「予算の単位が違うのよね、桁が」

 国は百万単位で物事を決めるけれど、東京都だと千万単位、億単位だというのです。》(P108)

 小池都政は、都庁舎に映像を投影するプロジェクションマッピングに2年間で48億5千万円の税金をつぎ込む。その事業者は、五輪談合で指名停止中の電通」が100%出資する「電通ライブ」で、入札の経緯も議会に明らかにされていないという。神宮外苑再開発ふくめ大企業優遇の都政は、広告主に忖度してマスコミが批判しにくいという声も聞く。

2月に始まった都庁の壁面を使ったプロジェクションマッピング。きょう24日から、10作目となる新たな作品「Synergyシナジー)」の上映を開始した。(日テレニュースより)

 今回の都知事選挙にあたり、都民そしてメディアは、真実と民主主義のために立ち上がった小島敏郎北原百代氏ら告発者の勇気に応えることができるだろうか。

(おわり)