横田めぐみさん写真展での奇怪な出来事2


 「娘に会いたい」と題する横田早紀江さんと有本明弘さんの座談会は、「めぐみちゃんと家族のメッセージ」展初日の8月2日(水)の午前11時30分から、日本橋髙島屋8階ホールで行われた。

早紀江さんと明弘さん(8月2日)写真展は主催=あさがおの会、共催=朝日新聞社、後援=東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県、東京都中央区川崎市、東京都中央区教育委員会

座談会会場(産経新聞より)

 座談会からお二人の話を少し紹介しよう。これまでの記者会見などではあまり聞かれない興味深い話が満載だった。

 はじめ、「どんな娘さんでしたか」と私がお二人に聞いた。(以下、一部言葉を補った)

 

有本明弘さん子どもは6人おりました。きょうだい喧嘩するでしょう。すると恵子は逃げて親の膝にひょっと乗るような子やった。

 (外語大学に行って)外国の子(ペンフレンド)と手紙のやりとりするようなこと覚えて、やりおったな。

 (恵子さんが英国に留学させてくれと言った時には)家のもんは全部反対した。すると、2階への階段の3段目くらいに座って、メソメソ泣くばっかりや。ところが、(英国の語学学校に)もう金を払い込んでた。払い込んでから「行く」というから、親は怒るがや。(決めたら反対されてもやってしまうというのは)根性が強い。有本家は根性あるねん。親に負けとらん。

横田早紀江さんめぐみはほんとに明るい子で、植物とか動物、虫、自然のもの、そういったものが大好きで、いっつも外にいました。

 今もNHKのドラマ(牧野富太郎をモデルにした朝ドラの『らんまん』)でやっておりますね。あそこまではいきませんけど、ほんとにこまかく、いろんなものをもってきては机の上において。虫の卵がかえって机の上を歩いていたとか、それでこちらが悲鳴上げるような。「いいかげんにしなさいよ」と言ってましたけど。

 とても明るくて、よく笑って、お友だちも、たくさん(うちに)いらっしゃったし。元気いっぱいで、病気もほとんどしたことがない、元気な子供でした。

 

 お二人が、遠い日の娘の面影を追いながら語る。いつも胸の中にとってある、大事な、そして哀しい思い出である。みなが心をひとつにして耳をすます、不思議な一体感が会場にかもしだされた。お二人の話の続きはまた次回に。

 さて、後半に入り、私はファシリテーターとして問題提起をし、お二人に質問をふってみることにした。思い出話と娘を思う親心の吐露だけに終わらせたくなかったのである。
 いよいよ、一部の人の「逆鱗に触れる」パートである。(一部言葉を補った)

高世小泉訪朝の後、進展がない状況が続いています。ここからは、(拉致問題を)どうしていけばいいのかについて、問題提起させてもらいます。この問題が解決しない一番の問題はもちろん北朝鮮にあるのですが、日本の政府のやり方もどうなのかな、と思うときがあるんです。

 その一つは、2014年に、北朝鮮が突然、「実は二人の拉致被害者生きてるよ」と通報してきたんです、日本に。調査報告書というのを用意して。ところが日本政府は、「それは聞かなかったことにする」として調査報告書を受け取っていないんです。

 このことは、政府に「忖度」してかどうか分かりませんけれど、日本のテレビや新聞がほとんど報じていないので紹介させてもらいます。

 二人と言うのは、まず政府認定の拉致被害者の田中実さん。政府認定の方です。有本さんと同じ神戸の方です。田中さんはご家庭の事情で児童養護施設で育っているんです。だから家族会にだれもいません。もう一人は金田龍光(たつみつ)さん。この人も、児童養護施設の人です。この二人が北朝鮮で生きていて、結婚もしている、と。田中さんの場合は、奥さんも日本人で、お子さんもいると北朝鮮が伝えてきてるんです。もう9年も前の話なんです。ところが日本政府は、これを知らなかったことにすると言って報告書を受け取らなかったんです。受け取らないことを決めたの安倍元首相ですが、なんで(受け取らないのか)?と思うんですよね。

 北朝鮮が「(拉致被害者は)いない」と言ってたのを「実はいるよ」と認めたのは、小泉訪朝のとき(が初めて)で、そのあとは(2014年の)この時だけなんですよ。この二人は(それから)9年間ずっとほっぽりだされてるんですね。

 なぜかというと、この二人だけの情報では「国民に納得を得られない」と政府は言ってます。どういうことかというと、この二人だけの(生存しているという)情報は新しいけれども、例えばめぐみさんとか恵子さんのほうは、北朝鮮が前からずっと言ってきたように「亡くなってる」のまんまだから。この二人の情報だけだったら受け取らないというんです。つまり日本側から見た100%の回答でなければ、日本政府は反応しないよっていうんです。これでいいのかと私は思うんですね。

 ご自身のこととして考えれていただければ、たとえば、めぐみさん、あるいは恵子さんの新しい情報、例えば「生きてる」とか、が(北朝鮮から)来た時に、でも他の人の新しい情報がないから、それ(生存情報)は無いことにすると(政府に)されたら、どうお考えになるかと思うんですよ。

 この二人は親御さんはいらっしゃらないけれども、お友達はいて、去年の12月には、神戸で、「田中さん、金田さんを見捨てないで」という集会をやっているんですよ、お友達が。この方たち、9年間見過ごされてるんですよ。

 こういうやり方で解決に近づけるんだろうかと思うんですが、どうでしょう、もし御本人がそういうことされたら。

 早紀江さんどうでしょう。

 

 ここで飛んだ「誘導尋問してるんじゃねえよ!」のヤジ。私の質問の本質をよく理解している警察出身の人物が、絶妙のタイミングで発している。歌舞伎の見得切りでかかる掛け声のようだ。

 もしも早紀江さんが、「田中さん、金田さんのために政府はすぐに動いてください」などと答えようものなら、今の政府の拉致問題「解決」路線が、ガラガラと崩壊しかねない

 さすが、今年3月まで9年間(つまり田中さんたちの生存情報を政府が握りつぶした年からずっと)、政府の拉致問題対策本部の事務局長をつとめてきた石川正一郎氏。私の質問の「危険性」を一瞬にして感じ取り、口をついて出たヤジだった。

 この石川正一郎氏とはどういう人物か。安直ですが、wikipediaによれば―

1958年3月生れ。警視監
東京大学法学部卒業。1981年、警察庁入庁。神奈川県警本部長。
2014年4月1日から内閣官房拉致問題対策本部事務局長。
今は拉致問題担当の内閣官房参与である。
2011年3月22日 - 警視庁公安部長
2013年4月5日 - 神奈川県警察本部長
2014年4月1日 - 内閣官房副長官補付内閣審議官(内閣官房拉致問題対策本部事務局長)
2023年3月31日 - 退官、内閣官房参与

 

「《罪深きはこの官僚》石川正一郎(神奈川県警察本部長)~被疑者逃亡事件の責任取らぬ「公安エース」」(選択 2014年2月号)という記事の人物評によれば;

『選択』2014年2月号。拉致対に行く直前の記事。

www.sentaku.co.jp


 「警察内部、特にノンキャリア組からの評判が悪い。傲慢な石川の姿勢は部下への「パワハラ」という形で表れる」そうだ。

 「公安のエース」とあるが、記事は「長年、警備公安が牛耳ってきた警察内で、石川は残された数少ないエースらしいエースとされる人物だ」と記す。へえ、すごいですね・・・。

 ちょっと補足しておくと—

 石川氏は、1995年に警察庁警備局警備企画課理事官に就任した。警備企画課というのは公安警察の「総本山」と言われる部署らしい。

 二人の理事官がいて「オモテ」と「ウラ」を担当する。

 「ウラ」というのは「チヨダ」、「サクラ」と呼ばれた秘匿部門を統括する。この「ウラ」を担当したのが石川氏だった。そして、石川氏と同時期に「オモテ」を務めたのが北村滋理事官。のちに2011年12月から19年9月まで内閣情報官、19年9月から21年7月まで国家安全保障局長と内閣特別顧問を務めた、安倍元首相の「懐刀」と呼ばれた人物である。

 (北村氏は、元TBS記者にして安倍元首相御用達記者と言われた山口敬之氏による伊藤詩織さんへの性暴力事件もみ消し疑惑への関与でも知られた人物。安倍政権は多士済々だったなあ・・)


 前置きが長くなったが、次回から、あられもなく「誘導尋問してるんじゃねえよ!」と叫ばざるをえない、政府の無内容な拉致問題「解決」路線を見ていこう。

 なお、いろいろ入り組んだ話になるので、理解を助けるために、拉致問題に関係する人々の中でも、田中実さん、金田龍光さん問題で大きく方針が違っていることや、「救う会」「家族会」と政府の関係などについて、とりあえず以下のブログ記事を参考にしてください。

takase.hatenablog.jp

 

takase.hatenablog.jp


(つづく)