ロシアのネットを使った情報戦に気をつけろ

 きのうは各地で夏日になったという。東京もぽかぽか暖かかった。

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白梅と紅梅と。春爛漫

  暦を見れば、節季はもう啓蟄(けいちつ)も後半だ。冬ごもりしていた虫たちや生き物が穴を啓いて地上へ這い出して来るころ。ウドが旬だ。

 5日から初候「蟄虫啓戸(すごもりのむし、とをひらく)」。冬眠から覚めて出てくる。

 10日から次候「桃始笑(もも、はじめてさく)」。笑うを「さく」と読むのがいい。

 15日からが末候「菜虫化蝶(なむし、ちょうとなる)。さなぎになった青虫が羽化して蝶となる。
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 プーチンはメディア統制を強める一方で、真っ赤なウソの情報を流し続けている。ロシア発の偽情報がこれから増えてくるだろう。

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トーマスグリーンフィールド米国連大使は11日、ロシアが国連安全保障理事会の会合を利用して侵攻したウクライナでの戦闘行為について偽情報を広めているほか、3週目に入った戦争でロシアが化学・生物兵器使用を計画している恐れがあると警告した。

 以前からロシアは、インターネットを使った情報戦をさかんに仕掛け、世界を混乱させてきた。

 連日テレビに出ずっぱりの小泉悠氏(軍事アナリスト)が、ネットでの情報戦について語っていた記事を興味深く読んだ。日本も他人事ではない。

《(前略)最近の安全保障では、外国の勢力が世論(人々の認識)を操る情報戦(認知領域戦)が重要性を増しています。

 プロパガンダ(宣伝戦略)自体は昔からありますが、その手段としてインターネットが使われるようになり、圧倒的な力をもちました。SNSでは、あらゆる人があらゆる人に向けて、世界中に瞬時に情報発信できる。偽情報も含まれる。ロシアのプーチン大統領が言うようにSNSは「兵器」なのです。

 私が関心を持ったのは、2014年のクリミア併合の時のロシアの動きがきっかけでした。ウクライナクリミア半島が不安定化すると、ロシア系住民に向けて「暫定政権はロシア系住民を迫害している」などとロシア語のSNSで情報作戦部隊が匿名で発信し、ロシア軍を迎え入れる世論をつくりました。

 トランプ氏が当選した16年の米大統領選でも、ロシアはSNSで偽情報を流し、米国の内政をかき回しました。ロシア系組織が元記者らを高給で抱え、SNSで9割は日常のことをつぶやかせ、時々、憎悪をかきたてるようなことを潜り込ませる。米国が世界で展開してきた情報工作へのしっぺ返しかもしれませんが、非常に手軽に、遠隔で米国を混乱に陥れました。

 軍事だけでなく、政治や経済、外交、プロパガンダなどの情報戦を組み合わせるのがハイブリッド戦争と呼ばれる新しい戦争です。これには、相手に因縁をつけるだけの歴史的な経緯と、民族的、言語的なつながりがあった方がやりやすい。例えば中国にとって、台湾は仕掛けやすい条件が整っています。

 世界には、世論操作をビジネスにしている人がいます。意見が近い人に接近したり、反対者を悪く見せたり。個人は冷静でも、組織的な働きかけがあると、ネット上の世論は暴走しがちです。

 かつて戦争は敵の軍事力が標的でしたが、情報戦の標的はふつうの人々です。大衆が情報戦の戦闘員でもあり、ターゲットでもある。日常生活が「戦場」となっています。どうやって対立を緩和するかは、一人ひとりが世界をどう見て、どう振る舞うかに関わっている。まず、その自覚を持つことが大切です。

 AI(人工知能)の発達で日本語の壁がなくなり、映像すら信用できない時代に入ります。確かな情報を流すメディアの責任は一段と重くなる。サイバー戦での情報流出だけでなく、情報戦への対応も不十分です。13年に策定された国家安全保障戦略を改定するなら、「情報安全保障」に焦点をあて、盛り込まねばならないと思います。(聞き手・小村田義之)(朝日新聞21年11月27日朝刊より)