停戦のボールはずっとロシア側にある

 ロシアによる全面侵攻3年で、2月からウクライナ関連のドキュメンタリー番組が続いた。その一つ「市民が見たウクライナ侵攻 3年」(2月27日)を観た。

 番宣「ロシアによるウクライナ侵攻から3年。東部ハルキウの地下鉄構内には学校が作られ1千人の子どもたちが通っている。子どもたちや先生の自撮り映像から戦争のリアルを描く。

 ロシアによるウクライナ侵攻から3年。いまだ東部の国境地帯を中心に、ロシア軍の越境攻撃が住民を恐怖に陥れている。ウクライナ第2の都市・ハルキウの地下鉄構内には、5つの学校が作られた。戦火を逃れながら地下鉄学校に通う1千人の子どもたち。空襲の度にストレスを感じながら、先生や子どもたちはどんな日常を過ごしているのか。国境地帯に生きる人々の自撮り映像で、ニュースではうかがい知れない日常をリアルに描く。」

キーウに住んでいた3人家族。夫が戦場へ。すると2歳の息子ミーシャに情緒障害があらわれ、夜中に泣きさけんだり乱暴にモノを投げつけるなどするように。妻のオルハさん(27)は夫の派遣地ヘルソンに引っ越してたまの休暇に夫と過ごすことに。しかし、息子の言語の発達に遅れが見られ、神経に異常があると診断される。

自撮りしながら、兵士の家族はつらいと泣くオルハさん。夫は軍役について2年たち、息子のミーシャは4歳になった。

 こういうテーマでは、自撮り動画で番組を制作する手法はとても効果的だ。自撮りしながら涙にくれる市民の姿に強い共感と同情を覚えた。銃後の暮しには、家族との葛藤、病気、家計といった普通の市民生活の悩みが増幅してあらわれる。戦争が一気に身近に感じられる。

 映像作品が私たちの戦争に対するイメージに深い影響を与えることを再認識する。メディアに関わるものの役割をあらためて考えさせられた。

 

 11日、ウクライナと米国両政府は、ロシアのウクライナ侵略を巡り米国が提案した30日間の即時停戦案にウクライナが同意したと発表、共同声明が出された。

 米国は一時停止中のウクライナへの軍事支援などを再開する。また、ウクライナの鉱物資源に関する包括協定をできる限り早く締結することで合意した。

 ウクライナ側は「空と海での沈黙」(ウクライナ側が長距離射程兵器でロシア側を攻撃しない、黒海周辺で攻撃をしないという意味)という提案に、米国は地上における停戦も求めた。陸の停戦は、ロシア側に負傷兵の治療や北朝鮮からの派兵、戦争再開への時間的余裕を与えるだけとして反対してきたが、米国への妥協を強いられた。

ウクライナにとって絶対に避けたいのは、東部や南部の現在の被占領地を含め、1991年の独立時に国際的に認められた領土をロシアに譲渡することと、米国から確たる「安全の保証」が与えられる可能性をゼロにしてしまうことだった》(朝日新聞13日)

共同声明では、「安全の保証」については間接的な言及がなされた。

《共同声明では 両代表団は交渉チームを指名し、ウクライナに長期的な安全保障を提供する永続的な平和に向け、交渉を直ちに開始することで合意した。米国は、これらの具体的な提案について露側と協議すると約束した。ウクライナ代表団は、欧州の友好国が和平プロセスに関与することを強調した。》(読売新聞による要旨)

 以下、朝日新聞藤原学思記者のX投稿から。

ウクライナ人の感情を示す世論調査。戦争終結の前提条件としての領土譲歩同意+NATO加盟断念は「まったくもって受け入れられない」が47.1%。

 「容易に受け入れられる」は8.2%。戦争は終わってほしい。ただ、将来に脅威を残すわけにはいかない、という決意がうかがえる結果。》

米ウ共同声明はウクライナにとって、現状で考えられうるなかでは、ほぼ最善のものになりました

 まず、ウクライナは崖っぷちに追い込まれていました。この1カ月、コートから大きく外れた場所にボールを投げられ、「打ち返せ!」と言われているようなものでした。

 記事でも書いたように、ウクライナには選択肢がほぼなかった。

「どうすれば、世代を超えてより多くの命を救えるか」を考えれば、米国との完全決別はありえない。欧州に100%依存するわけにもいかない》

《「独裁者」は言いがかりのようなものですが、「カードがない」というトランプ氏の発言は現実でもありました。そして、米国の支援なしでは、ウクライナの国家としての存続が危ぶまれることもまた、事実です。

 ウクライナの価値観や自由は、国家あってこそなのです。》

《ただ、「ロシアがやめればいつでも終わる」わけで、ボールは本来、ずっとロシア側にあるべきなんですよね。》

 プーチン大統領は—「敵対行為を終わらせる提案には同意する…長期の平和をもたらし、根本的な危機の原因を除去するものでなければならない」と発言。

《ノーとは言わない。けど、条件をつけて、事実上戦争を続ける意向を示すやり方。

 プーチン氏の事実上停戦拒否にゼレンスキー氏が反応。多くが思っていること。

 「プーチンがよくやるものだ。直接『ノー』とは言わずに、実質的に全てを遅らせ、通常の解決を不可能にするやり方だ。すべては、ロシアの新たな操作にすぎないと、我々は確信している」》

 ニュースでは、「ロシアが合意するかどうか」が焦点だとされているが、そうではないと、ウクライナ在住のジャーナリスト、平野高志さん(Xより)。

Xにいる皆さんに、対露外交を考える点で絶対覚えておいてもらいたいポイントは、ロシアに関しては、同国が合意するかどうかではなく、同国が合意を遵守するかどうか/遵守させられるかどうか、の方が1億兆倍重要だという点です。