「最後まで誇りをもって戦う」ウクライナ国民

 昨夜の福島県沖の地震は、東京もかなり揺れた。うちでも小物が棚から落下し、久しぶりに「これはひょっとしたら大震災か・・」と恐怖を感じた。

 宮城、福島両県では震度6強を観測し、今朝8時時点で、地震関連とみられる死者は4人、負傷者97人と岸田首相が発表した。

 被災した地方の方々にお見舞い申し上げます。

 昨夜の地震マグニチュード7.4だという。2016年4月の熊本地震が7.3だったから、今回のエネルギーはそれ以上だったことになる。

 「首都直下地震が、今後30年間に70%の確率で起きるらしいから気をつけないと」と娘にいうと、「でも、うちは災害の備えを何にもしてないね」との指摘が耳に痛い。
 何かやらないと・・。
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 一昨日のNHK「クロ現」で、新田義貴さんがウクライナの首都キエフからリポートしていた。この時期の日本人ジャーナリストのキエフ取材は貴重だ。

 新田さんはNHKを辞めたあとフリーの映像作家となり、以前私の会社「ジン・ネット」で、NHKの海外ドキュメンタリーやTBS「報道特集」の中東特集などの制作をお願いしたご縁がある。今回、遠藤正雄さんと一緒にウクライナで取材を続けている。

(余計な情報だが、名前で分かるとおり、新田義貞がご先祖だそうだ)

 新田さんのリポートを聞いて、外国通信社や現地の住民の映像とはまったく違うリアルさを感じると同時に、日本人が取材することの意味を再認識させられた。

 

スタジオ:
「ではまず中継です。ロシア軍が包囲しつつあるキエフに今朝入った日本人ジャーナリスト新田義貴さんに聞きます。新田さんはいますぐに地下シェルターに避難できる場所にいらっしゃるということです。新田さん、今のキエフ市内ですとか、市民のみなさんの様子はいかがでしょうか。」

 

新田:
 先週もキエフに行って取材してきたんですが、きょうは先週に比べてはるかに緊張が高まっていると感じます。

 街にはいたるところに市街戦に備えた土嚢(どのう)やバリケードが設置されていて、さながら街全体が要塞化していると感じます。

 また今朝4時ごろ、地下鉄の駅のそばで爆撃があり、先ほど現場に行ってきました。現在のところ、犠牲者は確認されていませんが、向かいにある工場が破壊され、爆風で吹き飛ばされたガラスの破片などが散乱していました。この地下鉄の駅は、当面使用ができなくなったということです。

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爆撃の現場。新田さんが取材したばかりの映像(クロ現より)

スタジオ:
「新田さん、キエフ市民のみなさんの戦い方ですとか、覚悟というのは、どのように感じますか?」

 

新田:
 今朝、キエフに来る途中、ヒッチハイクの女性を車に乗せました。

 彼女は看護師で、これから軍の病院で負傷した兵士の治療にボランティアで携わるとのことでした。

 なぜ避難しないのかと尋ねると、ここは自分が生まれ育った愛する土地なのだから、最後まで誇りをもって戦いたい、と語りました。

 このように、多くの人々が強い意志をもって団結していることに驚きを感じます。

 日本人にはなかなか理解しづらい感情なのですが、彼らの心のうちをもっと知りたいと思うとともに、彼らが被害にあうことのないよう、戦争の一刻もはやい終結を願っています。

 以上、キエフからでした。

 

 新田さんのリポートに登場する看護師の女性の決意に、私はとても高貴なものを感じる。

 しかし、「命より大事なものはない」し、ロシアにかなうわけがないのだから、ウクライナははやく降参した方がいいのに、と思う日本人は少なくない。この考え方からすれば、彼女は「無駄な抵抗」をしていることになるのだろうか。

 また、世界各地で、命がけで圧政や人権弾圧と闘う人々がいるが、これは命を粗末にする無意味な行為なのか。

 もし、ウクライナの人々が抵抗せずにあっさりとロシアに屈したとすれば、「力こそ正義」というメッセージになり、「次の侵略者」の野望を刺激するだろう。

 非常に不謹慎な言い方になるかもしれないが、ウクライナが頑張って抵抗すればそれだけ、自由を求める人々を抑えることはできないこと、他国を侵略すれば痛い目にあうことを世界に示すことになる。そして将来の侵略行為を抑止するだろう。

 こう考えれば、ウクライナの人々の戦いは、ウクライナだけのためではなく、世界のすべての人々のためなのだ。つまり、私たちのために戦ってくれているのだ。

 これが、私たちがウクライナの人々と連帯する思想的な基礎である。

 従って、私たちは、ウクライナの人々に「戦いをやめて」というのではなく、あらゆる手段でロシア軍との戦いを支援する必要があると思う。NO WAR!はあくまでロシアに対してのスローガンである。

 日本人のいう「命より大事なものはない」には、これからどういう日本をつくっていくかにかかわるきわめて大きな問題をはらんでいると思う。

 このテーマについては引き続き考えていきたい。