遅れるウクライナへの軍事支援

 畑ではエンドウがかわいい花を咲かせていた

エンドウの花。白いのもある

 ノビルがたくさん生えていた。畑をやってる仲間のみなさん「そんな雑草いらない」というので、私が摘んでもち帰る。味噌とマヨネーズをつけて極上の酒のつまみになった。

誰も要らないというので、私が一人占め

 春は畑が楽しい。

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 ウクライナの防空能力が危機に瀕している。

 先日、キーウ州最大の火力発電所はじめ多くの電力インフラがロシア軍の空襲で破壊されたことでわかるように、ウクライナは飛んでくるミサイルを迎撃できなくなっている。地対空ミサイル「パトリオット」はほぼ枯渇しているとみられる

 17日にはウクライナ北部のチェルニヒウで3発のミサイルによって市内の20棟以上の集合住宅が被害を受け、少なくとも17人が死亡、78人が病院に運ばれた

チェルニヒウで集合住宅にミサイル攻撃。ミサイルの破壊力はすさまじい。(テレ朝ニュースより)

 私が昨年の取材で知り合ったウクライナの人々のことを思うと、焦燥感がつのる。

 17日夜に臨時で開かれたEU首脳会議にゼレンスキー大統領がオンラインで出席。イランのドローンとミサイルによる攻撃をイスラエルだけでなくアメリカなど同盟国も加わってほぼ防いだことに触れ、「ウクライナの空、我々の隣国の空も(イスラエルと)同じように安全であるべきだ」と協力を呼びかけた。

PBSのインタビューで、キーウの発電所が破壊された際に迎撃が困難だったと述べるゼレンスキー大統領。

 15日に公開された米公共放送PBSのインタビューで、ゼレンスキー大統領は防空ミサイルが枯渇していたためキーウ州最大の火力発電所への攻撃を防げなかったと認めている。

11発のミサイルが向かってきた。最初の7発は撃墜したが、4発が発電所を破壊した。

 なぜ?われわれが持っていたミサイルはゼロだったからだ。ミサイルは残っていなかった。

 そして、こうまで言った。

率直に言って(アメリカの)支援がなければ、ウクライナが勝利する可能性はない」。

 ロシアは住民の暮らしを支える施設を狙って攻撃しており、このまま重要なインフラが破壊され続けていけば、国力を消耗させて戦闘を効果的に遂行できなくなる。最近のゼレンスキー大統領の表情、コメントに危機感、悲壮感が強く表れており、痛々しい。

 EUは首脳会議でウクライナに防空システムを緊急で供与することを決定。ミシェル首脳会議常任議長は「数日か数週間のうちに供与する」と記者団に述べた。今後は加盟国に対し、防空システムの生産スピードを上げるよう求め、在庫で使えるものは先に供与していく考えだという。

 それにしても、欧米のウクライナに対する軍事支援はずっと遅れ遅れになっている。

 昨年6月に開始されたウクライナの反転攻勢は「不成功」に終わったが、その大きな理由は欧米の軍事支援の遅れにあったとされる。

 ゼレンスキー大統領は昨年11月30日、反転攻勢で「望んだ結果が得られなかったことは事実だ」と認め、「我々は人員を失っている。要望した兵器のすべてを得られなかった」とも述べて米欧諸国による武器供与の遅れにいらだちを示した。陸上での攻防に不可欠の戦車については、ドイツの「レオパルト2」と英国の「チャレンジャー」がウクライナに供与されたのがロシア侵攻からほぼ1年たってからだった。

 ウクライナ国民の中に、「欧米はウクライナを勝たせようとは思っていない」という声が聞かれるのも故無しとしない。

 軍事支援の質と量、その時期が適切だったら戦況は大きく変わっていただろう。ウクライナ軍の攻撃にロシア軍が総崩れになって広大な占領地を解放した一昨年秋の勢いをかって、早めに反転攻勢を始めていればと多くの兵士が嘆いていた。しかし、十分な兵器と弾薬がなく、攻勢開始の時期が遅れたため、ロシア軍に二重三重の強固な防衛ラインを準備する余裕を与えてしまった。

 小泉悠東京大学先端科学技術研究センター准教授と高橋杉雄・防衛政策研究室長という、日本を代表する軍事評論家二人が、昨年夏の対談でこう指摘する。

「高橋:今年(2023年)の一月に西側からの戦車供与が決まったわけじゃないですか。待てば待つほどロシア軍の守りは固くなるので、ウクライナ軍としてはなるべく早めに反攻を仕掛けたかった。ただ、訓練の期間を考えると、出来るだけ時間はとったほうがいい。その結果、ベストな選択として導き出されたのが、六月上旬の反転攻勢だったのだと思います。

 これは逆に言えば、西側がもっと早く供与を決定していれば、戦車の数も訓練状態も最高の形で今年の春を迎えられていたかもしれない。判断の遅れが致命的だったと言わざるを得ません。

小泉:同感です。例えばですが、「レオパルト2」が2022年の秋に入ってきていれば、今年の春になって地面が固まってきたところで、バーンと電撃反攻を仕掛けられましたよね。そのタイミングであれば、ロシア軍の陣地もここまでガチガチに要塞化されていなかったはずで、完全に時期を逃してしまった感があります。」

 高橋氏が、ウクライナ軍の課題として「航空阻止」(戦闘爆撃機や長距離ミサイルを使って敵の後方を攻撃し、第二梯団が前線まで出てくるのを防ぐこと)ができていないことを挙げると—

「小泉:(航空阻止のためには)ある程度まとまった数のF16戦闘機を手に入れなければなりませんが、肝心のアメリカの腰が重い。(略)

 2022年の秋に西側諸国が戦車供与の決断をしていれば、今ここまで酷い戦況にはなってなかったわけですよね。逆に言うと、この夏の間にちゃんとF16の供与を始められれば、来年の春や夏にはもう少しマシな戦いが出来る可能性があるわけです。

高橋:そうそう。今年八月にF16の訓練がシステマティックに始まるとすれば、来年の春には六十~八十機程度の戦力が投入できる。半年以上あるわけだから、それなりに高度な作戦もこなせるようになるはずです。ウクライナ軍が来年、有意義な戦いができるかどうかは、本当にバイデン次第ですね。

(小泉悠『終わらない戦争~ウクライナかた見える世界の未来』文春文庫2023より)

 この対談で登場するF16は遅まきながら昨年の広島サミットでバイデン大統領が供与を宣言した。しかし、そのF16戦闘機がいまだに実戦配備されていない。

takase.hatenablog.jp


 不思議に思っていたが、『ニューヨークタイムズ』紙の軍事・外交のベテラン記者の記事が詳しくこの間の事情を報じていた。
(つづく)