北京五輪―宴の後に何が?

登山家で、エベレストの清掃登山などで知られる野口健氏が、雑誌『諸君』に「宴のあとに待つ『チベット人への報復』を許すな」という文章を載せている。
彼は、登山で付き合いのあるチベット人ガイドなどから、中国のチベット弾圧について知り、心を痛めてきた。だが中国への批判をすれば、彼が計画していたエベレストの入山許可が出なくなる。ためらっていたが、ついにブログで批判に踏み切った。(2008年03月22日チベット動乱〜北京五輪出場への条件〜 http://blog.livedoor.jp/fuji8776/archives/51052593.html
野口氏はオリンピックに出る第一線のアスリートに対して、中国に抗議せよと要求するのは酷だという。しかし、例えば帰国後に選手がメッセージを発したり、閉幕式でFree TibetのTシャツを着るくらいのことはやったらどうかと提起している。だが、その期待に反して、実に平穏な閉幕式だったらしい。
オリンピックは中国に人権の改善をもたらすどころか、状況はいっそう酷くなっていると国際人権団体は見ている。
《国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチ(本部・米ニューヨーク)は22日、北京五輪閉幕を前に「中国の人権状況は、五輪開催によって悪化した」と総括する声明を発表した。
 同団体は「五輪開催が、中国政府による相次ぐ政府批判者の拘束や言論抑圧などにつながった」と指摘。中国政府が五輪誘致の際に掲げた「人権状況を改善する」との国際的な約束は守られなかったと指弾した。
 また、国際オリンピック委員会(IOC)についても、中国政府に対し、人権状況改善の働きかけを怠ったと批判した。
 中国政府は五輪期間中、北京市内3か所の公園に限り事前申請を条件にデモを認めるとしたが、実際には「公共の秩序を乱した」などとして申請者を労働教育処分にするなど、政府批判を封殺する従来の姿勢を崩していない。》(2008年8月23日読売新聞)
ヒューマンライツウォッチのサイトはhttp://hrw.org/english/docs/2008/08/22/china19664.htm
また、日経の記事にはこうある。
《訪仏中のチベット仏教最高指導者、ダライ・ラマ14世は22日付のルモンド紙のインタビューに応じ、中国軍が五輪開催中の18日にチベット東部で群衆に向けて発砲し、140人が死亡したと語った。また、3月のチベット騒乱以来、自治区のラサだけで400人が中国軍により殺害され、1万人が拘束されたと述べた。
 ルモンド紙は1面トップで記事を掲載し、その中でダライ・ラマは18日の発砲についてチベット東部のカム地方で起きたと説明。死者数は「確認が必要だ」としつつも、「中国軍はいまなお群衆への発砲を続けている」と述べ、中国を強く批判した。「中国の言う欺瞞(ぎまん)の自治」でなく、真の自治のために非暴力運動を続ける考えを強調した。》
後にルモンド紙は、ダライラマが140人という数字を述べたのではないと訂正したが、以前より北京五輪の成功を祈るとの立場を取ってきた法王がこうした発言をするからには、何か異常事態が起きている可能性がある。
宴の後の中国の人権状況をよく見守っていきたい。