対人地雷の被害に苦しむウクライナ 

 節季は清明。「清浄名潔」という言葉を訳した晩春を表わす季語だという。

 空気が澄み、花が咲き乱れる美しい季節。沖縄では「清明祭」(シーミー)が行われ先祖の墓の前で歌い踊って楽しく過ごす。

 5日から初候「玄鳥至(つばめ、いたる)」次候「鴻雁北(こうがん、かえる)」は10日から、末候「虹始見(にじ、はじめてあらわる)」は15日から。

 南国からツバメが海を渡ってきて、ガンはシベリアへ帰っていく。空気が潤ってきれいな虹も見られるようになる。
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 畑が黄色に染まっている。アブラナ科の仲間が花をつけたからだ。

 私が見た範囲では、小松菜、芥子菜、のらぼう菜(江戸東京野菜)、水菜、大根、蕪、ブロッコリー、チンゲン菜が咲いていた。これらはみな「菜の花」だ。

蕪の花が意外にゴージャス

小松菜がいちばんきれいだった

 花が咲いたらもう硬くなって野菜としては終りなので、根っこから抜く作業をした。小松菜が一番きれいだったので何本か持ち帰り、花瓶にさして楽しんでいる。
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 ウクライナへの侵攻を続けるロシア軍は11日、ウクライナ各地にミサイルや無人機による大規模な攻撃を行い、キーウ州で最大の火力発電所が破壊された。

 また東部ハルキウ州では、エネルギーのインフラ施設が被害を受け、20万戸以上で停電が起きているという。

 ロシアは、侵攻が始まってから最大規模のインフラ攻撃を行っていて、ここ数週間で火力発電所の8割、水力発電所の5割以上が攻撃を受けたという。

 問題は、ウクライナの防空システムが弱体化して、ロシアのミサイルやドローンを迎撃するのが困難になっていることだ。とくに地対空ミサイル「パトリオット」が枯渇した恐れがある。

 最大の軍事支援をしているアメリカの議会がいまだにウクライナ支援を盛り込んだ予算案を通さず、昨年末に資金が尽きている。予算案の議会通過を妨害している元凶はトランプで、共和党全体がトランプ党化しているという。

 ガザの事態を見ても、アメリカが世界の秩序形成をリードする時代が終わったことがはっきりした。今、世界史の画期に生きていることを感じる。

 

 侵攻が長期化するなか、前線では、ロシア軍が仕掛けた大量の地雷による被害があとを絶たない。被害を拡大させているのは、対人地雷PFM-1だ。対人地雷は、国際条約で使用・製造が全面禁止されており、ウクライナを含む160以上の国と地域が加盟しているのだが、ロシアは非加盟だ。

対人地雷がまかれた面積はウクライナ全土およそ60万3600平方キロの4分の1以上になる。ドイツ、イタリアの国土の半分にあたるという(国際報道10日)

 このPFM-1地雷は「花びら地雷」または「バタフライ地雷」とも呼ばれ、12センチほどと小さく、緑や茶のプラスチックで覆われている。空からばらまくと草原や畑、森のなかでは保護色で気づきにくく被害を大きくする。ロケット弾一発に300個以上搭載でき、一度に5千個を150ヘクタールにまくことができるという。

兵士がこの「花びら地雷」で手足を失うケースが激増しているという(国際報道)

地面に埋めるのではなく、上からばらまくので草や葉にまぎれてしまう(国際報道)

戦場で「花びら地雷」を踏んで足を切断した元兵士。義足を合わせるために6回手術をしたという。各人の状態に合わせた義肢をつけるのは簡単ではない。

 ソ連が80年代からアフガン使いはじめたもので、いったんまかれればほぼ永久に爆発の可能性が残る。昨年6月にはじまったウクライナの反転攻勢をはばんだ要因の一つがロシアがまいた大量の対人地雷だったといわれる。

 昨年、私はウクライナドネツク州で、このPFM-1地雷の除去作業を取材している。当時の取材メモより―

 「これは人命を奪わない程度の、例えば足首や足指がもげる程度の怪我を負わせる。すると、怪我を治療する人員や医療資源が社会に負担となってのしかかる。さらに、障害を負った本人と周りの人々の戦意を削ぐ。殺害するよりも敵に物理的、心理的に大きなダメージを与えることを目的に考案された、悪意に満ちた地雷である。

 春には緑、秋には茶色と季節により違う着色をして空からばらまく。すると地面に落ちた地雷は保護色で見分けにくくなる。かつてソ連軍が侵攻したアフガニスタンでは、好奇心でさわった子どもたちが多数大けがを負った。ウクライナでもすでに住民に被害が出ているという。

 処理班の一人が「お国からいただいたものです」と指し示したのは、金属探知機だった。日の丸とJICA(国際協力機構)の字が記されている。ウクライナで初めて見る日本からの支援品に少しほっとさせられた。

 自宅近くに地雷があっては安心して暮らせない。しかし現在はダムなどの生活インフラの地雷除去が優先され、農地や森、住宅地はほとんど手つかずだという。処理が終わるのはいつになるかと地雷処理隊のリーダーに尋ねると、つらそうな表情で「誰にも分からない。まずは戦争を終わらせないと」と答えた。」

私たちがウクライナで見たPFM-1。現地ではバタフライ地雷と呼んでいた(筆者撮影)

日本から贈られた探知機を持つ遠藤さん(筆者撮影)

 まかれた数の多さと広さがとてつもなく、特に一時戦場になったりロシア軍に占領された地域では、ロシア軍を追い出したあとも畑や森に安心して入れない状態が続いている。

 これは戦争後、何十年もつづく問題で、あらためてロシアの蛮行に怒りが湧いてくる。

 ウクライナ政府は地雷除去に国際的支援を訴えている。日本の得意な分野でもあり今後積極的に支援したい。