きのう聖火がソウルを走った。中国人留学生が1万人も集ったそうで、テレビでは沿道に赤い旗があふれていた。しかし、数では圧倒されたものの、脱北者支援団体が集会を開いて抗議した。リレーの列を妨害しに飛び出して逮捕されたのも脱北者だった。韓国人の立場からすれば、中国の人権問題といえばまずは脱北者弾圧である。
ドイツ人の人権活動家、フォラツェン氏の姿が画面に映った。以前書いたように、この人はいつも体をはって行動していて感心させられる。http://d.hatena.ne.jp/takase22/20071006
中国が北京五輪を「政治利用」していると言われるが、それはなぜか。日本在住のチベット人としてメディアにもよく登場するペマ・ギャルポさんがこう解説する。
《中国は北京オリンピックをきわめて政治的に利用しようともくろんでいます。聖火リレーでは神聖なヒマラヤの山河を踏みにじり、五輪マスコット5匹のうち2匹にチベットのものを用いるなどして、チベットが「中華人民共和国」の一部であると世界に示そうとしています》http://pemagyal.cocolog-nifty.com/blog/2008/03/post_b127.html
わざわざ聖火ランナーをヒマラヤに登らせるのも、五輪のマスコットにパンダとチベットカモシカを使うのもチベット支配の正当化だという。
写真は五輪マスコットだが、中央の聖火の両側にパンダとチベットカモシカが配されている。日本人はパンダは中国のものと思っているが、本来はチベットの動物なのだ。
ペマ氏は、ダライ・ラマ法王アジア・太平洋地区担当初代代表をしていたこともあり、法王を心から慕っている人だ。ダライ・ラマ法王が、北京オリンピックを支持していることは報道で知られているが、法王は《一貫して中国が責任ある大国としての行動をすることに期待をかけ、チベット問題も平和的解決を提唱しつづけてきた》
法王は決して反中国ではなく逆に非常に寛容だ。ペマ氏は《少年時代に法王のお言葉を信じて、毎朝毎晩、中国が「国連に加盟しますように、加盟できますように」と真剣に祈り続けた》ほどだったという。
しかし、さすがにここまで来ると、ペマ氏でさえ今の中国で「平和的解決」が可能なのかを疑問視している。
《中国が真の法治国家になり、国際社会の常識が通用する普通の国に変わるまで、法王が希望するような正義、誠意に基づく解決はありえない》
《しかし、法王とチベットの民には希望を抱き続ける以外に選択肢はないのだ。やまない雨はなく、明けぬ夜はない、という人類が長い歴史の中で培ってきた希望の原理だけを頼りに、精一杯に民族アイデンティティを保つことに徹している》(月刊日本4月号の論文より)
希望が実現する日は来るのか。