弾圧と発展-中国の二つの顔

 先週末から奈良を旅してきた。

 特別展「聖徳太子法隆寺」を奈良国立博物館で6月20日までやっていると聞き、これは必見!と前売り券を購入した。

www.narahaku.go.jp

 今年は太子が亡くなって1400年にあたる。これを記念して、太子と太子が建立したとされる法隆寺ゆかりの至宝(国宝36件!重文75件!をふくむ)を公開するという豪華企画だ。

 日本の国柄を理解するには古代における仏教のあり方を知らなくては、と勉強を続けていて、その主要な対象の一つが聖徳太子だ。私にとっては「不要不急」のお出かけではない。
 ただ、あとでポスターをよく見たら、わざわざ奈良まで行かなくても、7月には東京の国立博物館でもやることになっていた。でも、チケットも買ったことだし、この機会に法隆寺などを実地に観るのもいいなとでかけた。

 交通費節約のため、行きも帰りも深夜バスにしたのだが、「高齢者なのに無理するのはやめなさい」と娘に叱られた。たしかに乗客は若い人たちばかりで、車中は三密。それにやはり疲れる。ちょっとヤバイ。こんどから長距離バスは控えよう。

 奈良は緊急事態宣言にはなっておらず、レストランでも酒を出していたが、あるお店に、「宣言発令中の地域から来られた方の入店をお断りします」との注意書きが貼ってあった。ちょっと肩身の狭い旅である。

f:id:takase22:20210615114918j:plain

観光客がおらずどこに行ってもガラガラ。法隆寺ひとり占め・・信じられない。

 いろんなところを回り、聖徳太子もこのあたりを歩いたのだな、などと思いながらのいい旅だった。おいおい報告したい。
・・・・・・・・
 ほとんど毎回観るテレビ番組にNHKの「国際報道」がある。BS1の番組なのだが、この春からNHK総合でも放送している。
 番組の中身もいいのだが、進行を仕切るMCの酒井美帆さんがまたすばらしい。コメントの内容もタイミングも実に的確で、勉強ぶり、勘の良さを感じさせる。また細かい気配りも。きっと人柄もいいんだろうな。

f:id:takase22:20210618082529j:plain

国際報道MCの酒井美帆さん

 美人だがどこか視聴者の感情にひっかかるアナウンサーもいるなか、まったくいやみを感じさせないさわやかさは出色だ。そのさわやかな話ぶりや表情が努力の末に身についたのではなく、天性のもののように思われる。朝の番組でも重宝されそうだな。
 彼女はNHK職員ではない。オーディションで抜擢されたのだろうか、よくこんな逸材を見つけてきたものだ、などと酒井さんの出自にまで関心をもってしまう。

 ところできのうの「国際報道」は中国に関するニュースが二つ。

 一つは、17日朝、香港で政府に批判的な新聞『リンゴ日報』の編集・経営部門の幹部5人が逮捕されたニュース。

f:id:takase22:20210618075332j:plain

国際報道より

 逮捕されたのは、同紙を発行するメディアグループ「壱伝媒(ネクストデジタル)」行政総裁の張剣虹氏や同紙編集長の羅偉光氏らで、容疑は「香港国家安全維持法」(国安法)の外国勢力などと結託し国家の安全に危害を加えた疑い。香港警察によれば、19年以降、30回にわたって、記事などを通じて外国の組織などに中国や香港の政府に制裁を科すよう呼びかけたという。

 創業者の黎智英(れいちえい、ジミー・ライ)氏はすでに同罪で公判中で、他にも複数の抗議活動に関連して無許可の集会に参加した罪で実刑判決を受け、刑務所に収容されている。https://takase.hatenablog.jp/entry/20210417

 『リンゴ日報』によれば、「捜索で記者たちのパソコン38台が押収され、その中には取材の資料が大量に含まれている」、「香港で保障されている言論の自由が危ぶまれる事態だ」という。

 取材源が共産党にダダ洩れになるとすれば、取材される人は危なくてメディアに本心を言えない。結果、「愛国的」でない言論は表に出なくなる。メディアが黙らされることは、市民の思想信条、言論の自由が消滅することにつながる。

f:id:takase22:20210618075511j:plain

リンゴ日報は、あくまで闘う姿勢を示すが・・

 

 中国共産党は、個々の人物だけでなく、メディアそのものをターゲットにして自由な言論をつぶしにかかっている。香港基本法違反であり、「二制度」を完全に無視する行為だ。

 12日、去年12月禁錮10か月の実刑判決を受けて刑務所に収容されていた周庭(アグネス・チョウ)さんが刑期を短縮されて出所した。

f:id:takase22:20210617210359j:plain

出所した周庭さん

 痩せて憔悴した感じだが、はやく体力・気力を回復してほしい。しかし、弾圧がより過酷になっているので、今後の活動は封じられそうだ。

 民主化運動は冬の時代、さらに厳冬期に入ったような気配だ。

 もう一つの中国関連ニュース。
 17日、中国が有人宇宙船「神舟12号」を打ち上げ、独自に建設中の宇宙ステーションにドッキングを成功させた

f:id:takase22:20210618075619j:plain

国際報道より

f:id:takase22:20210618075631j:plain


 搭乗していた飛行士3人は、宇宙ステーションの中核部分に乗り移った。4月には基幹となる施設「天和」」を打ち上げており、来年の完成を目指している。3人は、今後3か月ステーションに滞在し、建設作業や実験などに従事。ステーションの外にも出て作業をするという。

 中国の宇宙進出のスピードには驚かされる。技術的な進歩が著しい。

 この背景には、米中対立があり、アメリカの法律でNASAと中国の協力が禁止され、国際宇宙ステーションを中国が利用できなくなったことがあり、現在ロシアとの協力を進めつつ、宇宙進出にまい進している。
 ちなみに、ロシアとは「国際月科学ステーション」プロジェクトを進めており、今年から5年間両国が探査機を月に送り調査、26年以降は月に施設を建設する予定だ。

 以上二つのニュースは、中国の人権弾圧の強化と先端技術での躍進という二つの面を象徴するように思われた。

 コロナ禍からの回復では独り勝ちの中国。これから、いっそう抜きんでた経済の伸びが予想される。

 “お上にたてつかなければ、暮らしはどんどん良くしてやるよ”
 中国共産党のこのささやきは、さらに説得力を増しそうだ。