自転車で走っていたら何やら赤い一画が目に飛び込んできた。
たくさんの大輪の花。石楠花(シャクナゲ)だ。思わず自転車を停めて見入った。花木の女王と呼ばれるだけあって、妖艶にしてゴージャスである。
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コロナ感染拡大の影響で、3次救急を担う救命救急センターの機能が制限されはじめた。
救急には3段階あって、1次救急は比較的軽症の人に、2次救急は入院や手術が必要な人にそして3次救急は生命の危険がある人に対応する。
3次救急を担う救命救急センターは全国に300か所あり、心筋梗塞や脳卒中、交通事故での大きなけがなどに24時間対応している。ここが受け入れを制限すると、2次、1次の病院など他の医療機関に負担がいくことになる。
実際、救急車で運ばれながら受け入れ先が見つからず、心肺停止など本来3次救急が対応する患者が2次救急に運ばれる事例が増えているという。玉突きで他の医療機関に影響を及ぼす事態になっており、本来なら助かる命が助からないことになりかねない。
ウイルス対策では医療崩壊を防ぐことを優先してほしい。
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世界が未曽有の事態に直面しているが、この時代にほかならぬ自分が生きていることをどうとらえればよいのだろうか。自分の運命を嘆くべきか。
私は、こういう激動の時代に生まれ合わせたのは大きな幸運だったと思う。恐竜はじめ地上の生物種の半数が死に絶えた白亜紀大絶滅が、哺乳類の大繁栄とその後の類人猿への進化の道を開いたように、俯瞰して見れば、「最悪の事態」は次の新たなものの創発を準備するはずなのである。
問題は、そこに一人ひとりの「不幸」が伴うことなのだが、私はこの事態が人類にとって最小の犠牲で済むことを祈りつつ、次に何がやってくるかをわくわくした気持ちで待ち構えている。
周りからは「いまそれを言うのは不謹慎だろ」、「根っからの記録者なんだな」などと冷たい目で見られているが、すでに「ポスト・コロナ」がさかんに論じられはじめた。
NHKは、「コロナ後の世界」につき、3人の「知の巨人」をインタビューしてそれぞれ特番でやるようだ。BS1「国際報道」が今週3人のダイジェストを流したので、紹介したい。
まず、フランスの思想家、ジャック・アタリ氏。
《人類は、ポジティブに、経済を全く新しい方向に設定し直す必要がある。
爆弾や武器ではなく、医療機器や病院、住宅、水、良質な食料などの生産を長期的に行うべきだ。
そのためには、多くの産業で、大規模な転換が求められるだろう。
長期の最悪のシナリオは、世界的な恐慌、失業、インフレ、ポピュリストによる政府の誕生だ。
また、新テクノロジーで国民の管理を強める独裁主義の増加も最悪なシナリオの一つだ。
自分たちの安全のために最善を尽くし、世界規模で経済を変革させていくことができれば、私が「ポジティブ経済」と呼ぶものに向かう良いチャンスだと思う。
「ポジティブ経済」とは、長期的な視野に立ち、私が”命の産業”と呼ぶものに重点をおく経済です。
生きるために必要な、食料、医療、教育、文化、情報、研究、イノベーション、デジタルなどの産業です。生きるのに本当に必要なものに集中することです。
多くの産業で大規模な転換が求められます。はたして私たちにできるかわかりません。
よき方向に向かうためには、今の状況をうまく生かすしかありません。
次世代の利益となるよう行動を取ることができれば、それが希望となるでしょう。》
次に、『サピエンス全史』著者でイスラエルの歴史学者、ユヴァル・ノア・ハラリ氏。
《いま歴史の変化が加速する時代に突入しようとしている。2~3ヵ月の間に、私たちは世界を根底から変える壮大な社会的・政治的実験を行うことになる。
「感染者が何人だった」とか「何台の人工呼吸器がある」といった話は重要だが、政治状況にも焦点をあてるべきだ。私たちのことを決めるのはウイルスではない。政治家や政治家を監視する市民の仕事だ。
全体主義的な体制が台頭する危険がある。ハンガリーがよい例だ。形式的にはハンガリーはまだ民主国家だが、オルバン政権は独裁的とも言える権力を握った。それも無制限の独裁的権力だ。緊急事態がいつ終わるかはオルバン首相が決める。
独裁者は効率がよい、迅速に行動できる、誰とも相談する必要がないからだ。しかし、間違いを犯しても決して認めない。間違いを隠ぺいする。
独裁国家は監視が一方通行だ。政府が国民を監視して、政府の決定は国民から隠す。
政府から国民に伝わる情報はない。それはとても危険なことだ。
もし自国優先の孤立主義や独裁者を選び、科学を信じず陰謀論を信じるようになったら、その結果は歴史的な大惨事になるだろう。多数の人が亡くなり、経済は危機に瀕し、政治は大混乱に陥るだろう。
一方で、グローバルな連帯や民主的で責任ある態度、科学を信じる道を選択すれば、たとえ死者や苦しむ人が出たとしても、人類にとって悪くない時期だったと思えるはずだ。
感染拡大のインパクトが何をもたらすのか、その結末は、私たちの選択にかかっている。》
《今回のパンデミックは「Gゼロ世界」で我々が経験する最初の危機だ。その結果、この危機に各国がバラバラに対応していて協調性が欠けている。G7の協調行動もG20の協調もない。中国は単独で対応。アメリカはリーダーシップを発揮していない。国際社会によけるアメリカの対応はゼロだ。「アメリカ第一」ということ。
各国がバラバラに危機を克服しようとしている状況だ。将来、重大な影響を及ぼすだろう。
日本や欧米などの豊かな国は、国内経済の危機に対応する資金力がある。アメリカは経済対策にGDPの10%を投入、発展途上国も同様の支援が必要だができない。その結果、ただでさえ混乱状態の新興国・貧困国は深刻な影響を受ける。
日本やアメリカではソーシャル・ディスタンシングを取ることが可能。豊かな国はスペースがある。しかし、インドでソーシャル・ディスタンシングを取るのは困難。国民の衛生状態は劣悪だ。半年も雇用がない状態となれば、国民の生命維持のための財政ももたない。
国際社会はいま重大な問題に直面している。
コロナ後の世界は、格差が拡大していく。新興国が危機対応を誤り、それに対する支援もないだろう。
アメリカはもともと格差社会だが、今後さらに広がる。ヨーロッパも、持つ者と持たざる者の差が大きくなる。ハイテク企業の力が大きくなり、実店舗型企業が倒産する。
我々は本当に大きな格差を目の当たりにすることになる。
欧米のように強く豊かな国は持ちこたえられるが、貧しい国々は大打撃を受けるだろう。》
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情報を二つ。
一つは香港での対策で、個人に対してだけでなく企業へも細かく補償を行っているという。
《業界別でも細かく補償するのだが、例えば、飲食業界では、店舗の面積に応じ25万~220万香港ドル(約350万~3000万円)を支給し、カラオケ、バーには5万香港ドル(約70万円)、ゲームセンターなど閉鎖した業種には10万香港ドル(約140万円)を支給。航空業界は大型機1機当たり100万香港ドル(約1400万円)などを助成する。》など。https://wedge.ismedia.jp/articles/-/19394(「日本と同じ緩いロックダウンでコロナ感染抑える香港」)
もう一つは、市販の不織布マスクを殺菌して再利用する方法について。
長いお付き合いの電子情報工学研究者、村岡輝雄さんが、使用した不織布マスクを水で湿らせて電子レンジでチンする方法を提唱している。
洗ったりすると繊維が崩れて効果が薄れるが、電子レンジ方式は効果が保てるという。熱殺菌すればウイルスは死滅するので、合理的だと思う。この方式を普及すればマスク不足に対応できるのではないか。
詳細は以下、「村岡ワールド」を参照されたい。